魔王さま#20

 勇者が拘束されるのと、主人公が元の世界に戻るまでの話。それぞれの勢力にエクスキューズを付与する狙いでもあるのかもしれんが、正直話を複雑にしたところで面白い展開になるとも思えないって感じかなぁ。やれ天使がどうだの世界観がどうだのといったところで、フィクションに複雑な世界観を持たせたところで、現実とのリンクが薄ければ「俺の考えた最強の…」にしかならないんで、ついていくのがしんどいというか…。ただ、昔のラノベはそういうのセカイ系の流行で不可欠だと考えられてた時期もあったので、その辺古い作品と割り切るしかないかも。

聖者無双#9

 教会地下のダンジョン攻略の続き。うーん、次回あたりいかにもコメディ系のオチが用意されてるような気がしないでもないが、ダンジョン攻略が主人公にしか成し得ないという状況なら、なんか彼に対する周囲の扱いがイマイチ低いなぁという感じ。女騎士隊が激つよの設定なら、ダンジョン攻略は集団戦として彼女たちが成功していたってオカシくないし、やっぱりこれも「俺の考えた最強の」みたいな印象。
 っつーか、女騎士隊士が強いという設定というか、女の扱いがいまいちよくわからん。男も女も身体的能力に差がない世界ってワケでもなさそうだし、ならばもうちょっと男の戦士がなんらかの強い存在としているはずなので…。というか、今までずっと思っていたことなんだけど、この作品も魔法の発動や原動力にに神の存在とか大きく寄与してる風なんだけど、他の作品同様宗教に関する描写が薄いんだよな。現実と違って本当に魔法が発動するんだから、その源泉となるような神なり宗教上の仕組みがあってもよさそうなもんだけど、文明レベルの低い人間には科学が魔法に見えたり、魔法が何らかの権力のメタファーとして描かれることもあるので、そのへんはツッコまないのがお約束なのかもねぇとは思うけど…。
 なんか今更になってこの作品がいろいろ中途半端なものに思えてきた。新人が無双するって状況も、昔のようにリテラシーのないおじさんが職場の中核で、プログラミング能力を身につけた若者が重宝されるって時代ではなく、もうそろそろIT技術スペシャリストが職場の中核になってきてる頃なので、リアリティ自体が薄くなってきてる時期なんじゃないかとも思うし。

スパイ教室#20

 新任務のために合衆国に到着するところまで。1期メイン任務の中心が変装ちゃんだったけど、今回のメインはお色気ちゃんらしい。いちおうこれでアニメシリーズが一つの〆を迎えそうだということからすると、その御色気ちゃんの青臭い理想が最大のテーマっぽい感じはする。
 ボスを生徒たちが追い詰めたけど、それで潔く負けを認めないのが正直よくわからんかった。いちおう彼女たちの成長を認めたものの、まだまだ一人前ではないという暫定的な段階というのはわかるが、それで次、まかり間違えばだれか死んでしまうような難しい任務(いちおう今までより強大な敵っぽい雰囲気なので)に連れて行くのもよくわからんし、ただ、OJTとしては絶好の機会でもあるんだよな。あと、警察を呼んだぐらいでボスが「自分は蒔けてない」と主張するのがよくわからんところ。ただ、これもボスが完全に負けた形にすると、生徒たちの成長余地が無くなってしまうから、これも微妙なバランス。
 あと、いろいろツッコみたいところは多々あるんだけど、自分も散々この作品には裏をかかれてるので、自分が疑問に思ったそれぞれのことがそれなりの仕込みだとか伏線ということも考えていろいろ保留にしたい。

ななつま#9

 秘密基地というか、仲良しクラブ正式設立の巻。主人公の親族が維持してる秘密基地や、主人公クランの悲願と比べると、子供っぽいというか幾分幼稚というか、まぁそのへんはわざとで、両者を対比させているんだと思うけど、ダークなシリアスパートが面白いので仲良しごっこを見るにつけどうにも物足りない感があるというかコレジャナイ感があるというか。

デキ猫#8

 ネコの内助の功や近所づきあい、子育てとヒロインの過去話。
 ぼんやり眺めていたらなんて事のない話なんだけど、酔っぱらったヒロインを解放してる際、彼女の健康に気を遣い翌日の仕事に支障をきたさないよういろいろ準備をしてるのは、かつてよく見られた専業主婦の有り方なんだけど、ヒロインの美容にまで手を入れてるのは、さすがに酔っぱらった夫にマッサージをする専業主婦というのはそうそういなかったハズ。なので現代の女の考える理想の専業主夫像というのは、かつての専業主婦に求められていたよりレベルが高い。ネコの日常を見てると大抵なにかイエの仕事やなんらかの関係性に絡めとられていて、今回でも暇なときはローラーで絶えず家をきれいにしてたので、暇さえあれば家事のために時間を費やして、自分がのんびりするための時間はほとんどないことがわかる。これはなんか空恐ろしいというか、共働きでも男も家事子育てを手伝えなんて言ってるけど、内心ではすべてのコストを負担白ってことなんだろーなという。
 ボランティアの話でも、アレ、専業主婦が一般的な時代だと井戸端会議をしてる描写になるんだろうけど、今の時代、ほとんどの女にも労働力であることを社会(というか自民盗を頂点とする政官財搾取トライアングル)に求められているので、井戸端会議にリアリティがないということだという提示のハズ。で、ネコが老人会の都合に付き合わされているわけで、井戸端会議というのは大抵ヒエラルキーの高いメス猿のマウンティングに他の主婦たちは付き合わされるものではあるが、ともすれば家電の普及で家事労働が簡略化された専業主婦は帰宅したところでそんなに家事の作業が積み重なってるわけでもなく、自分の暇つぶしとしても機能してたハズ。それが老人の介護にも似た付き合いを今回の猫はさせられているわけで、そこになんらかの自分に対するメリットがあるとは思われない。
 主人公は転職組で、この会社に来た当初はダメ人間だったが、ネコの存在でキャリアウーマンになったという過去話。自分てっきり学生時代までにそれなりに仕事ができるだけの知能だとかそういう素地があり、セルフネグレクトは彼女の側面でしかなかったと今まで勘違いしてたわけだが、最初は徹底的にダメ人間だったらしい。で、これもよく考えてみたら落語によくある、ぐうたらな男が所帯を持ったらしっかりするようになった…の変形版なわけだが、落語の与太郎はアレ、結婚を境に自分が大黒柱でないといけないという自覚ができてのことなので、では今回の話、ヒロインがネコに家庭のことは面倒見てもらって彼女がネコを支えるために気持ちを入れ替えたか?と考えると、むしろ主人公に優しくしてもらって心を入れ替えたというか彼女を支える決心をしたのは前回のネコの過去話なのであって、これもなんだかなぁといった感じ。
 そういうことで、なんだろうな?、女は他者から優遇されるとそれまで持ってなかった特殊能力が発動して自分は社会で輝ける!って感じの妄想の類で、こういう構造が見えてしまうと、おとこのこむけ萌えアニメよりはるかに気持ち悪いというか、本性を覗き見してしまったらなんかえげつないなぁというのが正直な感想。

かのかり#31

 試写会前にヒロインの祖母もともに内見したのだが…の巻。試写会当日に招待で構わないのに何でこのタイミングで…と思ったら、いちおう衝撃の展開。なるほど。一安心したら一気に張り詰めた精神力が…みたいな話なのかね。
 というわけで、ストーリー自体はそれほど目新しいものはないんだけど、ここで気を衒っても仕方がないので、いちおう昔からあるフォーマットに、レンタル彼女やクラファンなどの現代的な要素を詰め込んでバランスよく組み立てた…ってことならそこそこうまく仕上がってるなという印象。
 まぁここまで来たら結末がくっつくでもわかれるでも個人的には全然構わないんだけど、昔話の嫁取り物語を読者は期待してると思うんで、突飛な結末にしてギャラリーにケンカするというのも考えにくい。ヒロインは人気女優の道を進むために主人公と結ばれるのは保留はともかく、使い捨てにするという展開は悪手そのものだからなぁ。ただ、いくら演技力があったとしてもコネを跳ね飛ばしてまで芸能界でのポジションを得るということがなかったのだから、あんまりここから飛躍するという展開はリアリティがイマイチなさそうな気はする。…のだけども、祖母が大女優ならなんでそのコネが今まで生きなかったの?という疑問もあるのでそのへんはまぁ。映画界というのはなんのかんのいって、スターや監督、プロデューサーなどのヒト由来のタレントで稼ぐのであって、業界人はいわばその稼ぎにみんなぶら下がって生きているようなものだから、よっぽどの嫌われ者でない限り、功あった人に敬意は払うだろうし、その一族ならなんらかのアドバンテージが与えられるのもまたそれなりに筋のあるものなので…。