いつ海#8

 呉空襲の後、南西諸島方面の敵を誘引後主力の水雷戦隊で特攻をかけるという第二次坊ノ岬っぽい何か。クライマックスの夜襲は、ついぞ日本海軍がやりたくてもやれなかった水雷戦隊による敵主力への肉薄魚雷攻撃のシーンなので、いかにも艦これらしいシチュエーション。駆逐艦による夜襲自体はソロモン海戦などでやってはいるんだけど、あれらは乱戦なので、今回のように水雷戦隊が単縦陣を組んで一糸乱れぬ艦隊行動で突撃をかけるというのはまぁ仮想戦ならではといったところ。まぁアニメ化する意義って確かにここぐらいしかないかも。
 しかし途中で英米艦隊が来るのはちょっと萎えた。ゲームの方ではもう混成部隊上等になっているからそのへんはいいんだけど、こういうのやるなら最初っから共同部隊で敵と戦う構図にしてないといけなかったのでは?とも思うんだが、救援に来たと思われる英米艦隊は、日本艦隊とは別に光っていたから実は幻であるということなのかもしれず。というか開催中のイベントの友軍艦隊の編成なのではwww。
 うーん、終わってみてもメッセージ性がイマイチわからん。ネトウヨが好みがちなあの時一生懸命兵隊さんが戦ってくれたこそ今の豊かな日本がある…って形にはなっていなかったんだけど、まぁいうまでもないけど先の大戦はそもそも戦うという決断こそが間違っていたのであって、戦ったからこそ今の豊かな日本があるとは事実誤認だし、戦後レジームからの脱却を図ったアベが戦前回帰に成功して日本は豊かになったどころか衰退速度が加速していったわけで、そのへんをメッセージにするわけにもいかんよな。
 全体的な評価も微妙な感じ。実はテキスト自体はそれほど評価に値するとは思ってないんだけど、キャラクター同士のドラマを潔く切り捨てて雰囲気で語るというこういう仕立てはそれほど嫌いでもなかったという。ただ、この作品自体がゲーム連動企画だったようで、それがヘンな制約になっており、そういう制約を排除してもっと作り込めばそれなりに見られたものになっただろうにという思いもあるが、物語としての完成度を高めることがメディアミックス的展開でゲームを含めた収益につながるか?と言われるとそれも疑問なので、アニメとしては中途半端なもののように思えるけども、艦これという大きなコンテンツの集合体として見たらそう悪くもないのかもという感じはする。そうなるとアニメとゲームの連動企画の結果が気になる所だが、それをどうやって成功したかどうか判断したらよいのか困るところ。
 エピローグもよくわからんな。白露型が宗谷と何の関係があるのか…という不明なところもあれば、初霜のように自分の錨が保存されてる病院の裏路地とか、オマエそれ艦これやってそれなりに情報収集してないとわからんだろーみたいなトリビア的要素もあってなんとも。とにかく視聴を終えた今、もやもやするところもあるし、これはダメだというところもそこかしこにあるんだけども、少なくとも第1期よりはよくできていたと思うし、自分がゲームをやってるせいもあるのか、総合的にはファンサとしてそう悪くない出来だったかなぁという評価。

暗黒兵士#12

 騒動起こした息子とは仲直りし、赤毛の息子は責任を取って放逐、関係性の修復をしてから旅に出るという話。うーん、家族関係の愛憎であの処理で何とかなるもんだろうかという気はするのだが、ここでトラブルが収まらないと話が閉じないのでそのようにしたという感じを受けたかな。まぁ部下が主人公のいない現場に魅力を感じられずにどんどんやめてったし、その理由もちゃんと退職した連中は言っていたから、薄々自分が悪いと思っていた…というエクスキューズはされてたと思う。
 これは異世界転生ではないのだけども、国の重鎮であった主人公が放逐されてのんびり生活を…という作品なわけで、今期のセカンドライフ的な作品ではやっぱりのんびりというよりは、なんのかんのいってトラブルに巻き込まれてあくせく働いてたじゃないとい感じではあった。ただ、激務に追いまくられるという職場から解放されて、自分の目で見てその効果を直接実感でき、他人任せではなく自分でハンドルできる範囲の仕事を自分のペースで…といった意味では、それをのんびりといいたいのであればそれでもいいんじゃねという感じではあった。
 サラリーマン応援歌的要素でいえばこれで構わないと思うし、政府批判、社会批判要素でもこれで十分だとは思うけど、ただ物語としては物足りないかな…。

お隣の天使様#12

 男の方から言語化してEND。ラブロマンスとしてはこういう展開で全然構わないんだけど、ただ構図として、主人公がヒロインとの間にスペースを作ればすかさずヒロインが距離を詰めてくるので、押し負けた…としか言いようがない。もう状況は全部ヒロインに整えられていて、主人公は据え膳というか、もうあとは一言口にするだけの状況に追い込まれてた…という感じで、見かけとは反してヒロイン肉食系やな…。
 うーん、個人的に印象は全然悪くないんだけど、ストーリーとしては単純明快というか、前にも言った贈与の連鎖でしかないし、後半はもうそれすらほっぽりだして自分の気持ちにどう整理をつけるかという話にしかなっていなかったので、そのへんよな。自分はてっきりもう一度くらいはヒロインとヒロインの親との確執だとか、関係性にトラブルを持ってくるとかあるのかもとか考えていたんだけどそれもなし。ただ、そういう展開に抑揚をつけたところで結論が大きく変わるはずもないし、そういうのはシナリオ上もったいをつけるだけなので、一番訴えたいことを純粋に直球勝負に来ることもそこそこ意味があるとは思ってるし、本作がそういう方向性なのも納得できる。まぁ普通はこういう単純な構造は飽きるんだけども、なぜ飽きなかったのかというとセリフ同士に関連付けが多重に行われていて意味が積み重なっていたので、一つ一つの言葉が重いから読者として集中しやすいんだと思う。個人の抱えてる問題は大したことないし所詮子供の恋愛というふうに外形的にはなっているんだけど、アメリカン青春ドラマがやれ人殺しだのドラッグだのというのを題材に取り上げているのは、思春期の人格という要素よりは社会問題を大きく取り上げたいからそうなってるのであって、逆に日本のラノベは極力社会問題的要素を取り除いて純粋に恋愛要素を抽出してるからこうなってると考えるべきだろう。いうなればキャラの抱えてる問題とか年齢は交換可能ってワケ。
 なんかある意味なろうだからこそばっさりと夾雑物を削ぎ落した物語が作れたのかもね…。商業作品だったらもっと属性とか読者受けする要素とか要求されるだろうしな。

ろうきん#12

 攻めてきた帝国軍のラスボスである竜を苦戦しながらも倒して爵位を得てEND。うーん、ほんっとに最初から最後までご都合主義展開だけで突っ走ったなwwwって感じ。金貨8万枚を溜める道のりはまだまだ続く…って形で終わったけど、領地付きの貴族になったら、普通それは終身制というか世襲(と作品中でも言ってたし)なので、領地経営さえ失敗しなければ老後の心配は要らないわけで…。
 で、結局のところ老後に必要なのはカネ…というよりは信頼に根差した関係性であることは数話前のヒキのシーンで述べられてるので、この国の王家や貴族からも信頼されて、最初に拾われた村でもその態度は変わってないからこれもクリアで、話をこれ以上続ける必要もないよね…。PMCの人も異世界で荒稼ぎ…みたいな態度でもなかったし、ある意味風呂敷はキレイに畳んでる模様。
 なんか視聴対象にする段階でもあまり期待できそうにないという予感がしたし、視聴完了した今も大したことのない作品だったなという印象。サバイバル関係でちょっとしたリアリティがあってそこに感心させられることもあったんだけど、ストーリー全体でいえば上記の通りご都合主義だし、その見どころであるサバイバル関連が飛びぬけてよかったというほどでもなかったから、この作品がアニメ化されるほどそんなに商業的に売れてたの?と考えると、どこが特色だったのか今もってわからないという感じ。中盤でこの作品に深く考えさせるテーマなどなく荒唐無稽さをそのまま笑い飛ばすテキストだと割り切ったからストレスもなかったけど、正直この作品の面白さを他人に説明しろと言われても、それをどうひねり出したらよいのか困る感じ。シナリオ上の各要素をもっと抽象化してどこにどう記号化されてるのか分析したら見えてくるものもあるかもしれんが、そこまでやる気力はない。

最強陰陽師#12

 主人公が入学式総代を引き受けたり、勇者を暗殺しに来た魔族を撃退する話。魔族があまりにもあっけなく撃退されたのだけども、これ原作の長いタイトルの後半に、どうやらこの世界の魔物より主人公の操る妖怪の方が圧倒的に強いとかそういう設定があるようで、なんだかなぁという感じ。ただ、話のメインストリームからすると今回の魔族とのバトルシーンは、主人公が追い詰められるとかそういう展開にすると尺が長くなって仕方がないからわかるといえばそうなんだけど、そうなんだったら即堕ち二コマぐらいに短縮してもよいんだよな。
 なんか主人公がこの世界にそれなりに本気で関わるようなそんな態度がチラホラ見受けられるのだが、やっぱりよくわからん感じ。主人公に一番近い存在である奴隷エルフの気持ちに朴念仁だし、この世界にそんなに思い入れがあるように思えないので、勇者を身代わりにして自分は上手くやり過ごすことの意味がそもそもあるのか、前にも言った通り隠遁生活とは言わないまでもこの世界の事情には我関せずという態度で、いちおう転生先が貴族の一族だから自分の身を守る程度で空気のように徹すれば安穏とした人生が送れるハズ。でもなんのかんのいってトラブルシュートに従事するのは、前世が非業の死を遂げたからそのルサンチマンを解消するだの、人に蹴落とされなければそれなりに出世したという目論見があったから転生先でもそれなりの地位に就きたいとかそういう認知欲求でもあるのかねと思わなくもない。
 しかし魔族の話も前からちょくちょく顔見せしてほのめかしてたからアレだけど、ちょっと唐突というかタイミングが良いのか悪いのかよくわからん。魔族にとっては自分たちの存在を脅かす勇者は確かに民族の仇敵で、排除したくなるというのは当然のことなんだけど、魔族は勇者が居なければ人間側から富を奪う存在なわけで何言ってんだ?みたいな感覚ではある。とはいえ、魔族を人間とは違う異種族と考えるから読者は魔族側を紛うことなき悪と認識するんだけど、文明が違うだけの同じ人間となれば「和解」という目が見えてくるわけで、今回の話はそれにつながるんかなと。ドラゴンとは話し合って子育てに参加して和解したのだからね…。人間から富を奪い、それが叶わぬなら強制的に障害を排除して属国にして支配下に置くという魔族の有り方は、まさに合衆国と同じ有り方なんで、大半の日本人は平和ボケだから合衆国を友好国と見誤っているんだけど、まぁこの作品の魔族と何ら変わらんわな。
 というわけで、ラス前だったんだけど魔族との関係性をこのタイミングで出してきたということは続編でもやるの?って感じ。キャラ同士の絡み合いとしてのドラマはよくできているとは思うんだけど、上記の通り主人公の動機が今一はっきりしないので、冒険者編にまで至ればそれなりに噛み合いそうな気はするんだけど、学園編はあんま期待できそうにないという予感はする。