プリマドール#3・4

 声が出なくなっていたキャラが声を取り戻したり、上官ラブ勢が愛を貫く話。なんてことのないPTSDが解消する話のように見えるんだけども、よくよく考えてみたら部隊付属の軍属が、たまたま配属された部隊から離脱してその部隊が全滅でもしたのかと思い悩んで声が出なくなるということはあまり考えにくい。例えば、特攻隊に配属された学徒あたりが、一週間か二週間後には出撃して敵艦に体当たりして散華する予定だったのに、米軍がヒロシマナガサキピカドンを落として無辜の民を惨殺してくれたおかげで終戦が早まって、敵艦に体当たりする予定がなくなり命が助かったのだとしても、政府の無能でピカドンの犠牲になった民のことを思って声が出なくなることなんてのはありえないのであって、せいぜい数奇な運命で命が助かったと思うのが関の山。
 なので、あの話は、ブラック企業で過酷な環境下、苦楽を共にしたかつての社員にちょっと示した厚情が…、自分はブラック労働に嫌気がさして先に足抜けしたけども、先が読めなくてブラック労働で過労死したその社員が遺書にてその厚情を感謝してきて感涙にむせぶとかそんな話なのであって。
 もう一つの話も、そのまま受け取ったらオカシな話なのであって、例えば機械の部品なんて壊れたら取っ替えるのが普通であり、しかも軍用装備なら、命にかかわることなんで、いざという時に故障で動かなかったら洒落にもならないから、交換部品というものは償却期間が過ぎたらたとえまだ使えそうでも問答無用で交換するのがアタリマエの世界なのであり、まぁそれでももったいないから使っちゃうのが日本だったりするんだけども、まぁまともに考えたらこれを美化するのはちょっと狂ってんじゃね?という話。
 なのだけども、やはり上記の通り、これはそのまま受け取ったらダメな話で、これは例えば慶応出の特権階級が大企業のオイシイ役職をコネで渡り歩いてサントリーの社長*1まで成り上がり「社員は全員45歳で使い捨てだ」と豪語しちゃうような社会に対するアイロニーなのであって、あの部品は現代日本で大企業にすら使い捨てにされてしまう日本の労働者のメタファー。
 まぁ別にそのまま何の深読みもせずに眺めていてもそれなりに泣ける話なのではあるんだけど、ぼんやり見てんじゃねーヨって話。擬古調に仕上げてあるけど、全然昔の話じゃねーからなという、まぁそんなところじゃないでしょうか。

*1:しかもアベの税金で有権者を買収してた桜の会の前夜祭で酒を無償提供するという賄賂ずっぽしの行動までしてたという。そのコストは商品価格に上乗せしてたんだよねという話