真の仲間#5

 ヒロインに冒険者をやめられると困る人たちが、主人公カップルに圧力をかけてくるの巻。今回は割とクリティカルなイシューが込められており、個人的な経験からすると胸が痛いというか結構キツく感じるものもあってなかなか見どころがあった。
 一つはおそらく言及しなくてもわかると思うが、貨幣価値とその他の価値との交換関係。主人公はカネを積まれてもヒロインを売らず、ヒロインは身分について脅しをかけられても主人公を売らずというところ。資本主義経済だとすべての価値が貨幣価値に換算されるので、今回の話をそれに即して仕立てるとすると、結局主人公がヒロインを売るのは金額をどれだけ積むのかという問題になってしまうし、ヒロインにしても、もう身分制度すらカネに換算して比較検討するということになってしまう。なので、主人公とヒロインを、敢えて信頼関係と呼んでおくが、その信頼関係は他の価値観とは独立しているという話になる。とはいえ、前近代が本当に貨幣価値以外の価値観をそんなに尊重してたかといわれると、やはり程度問題ではあるので、例えばヒロインが主人公の気持ちに寄り添わず、自分の都合だけを押し付ける勝手な女だったら、よろこんで大金で説得されるという話になってもオカシクはない。そしてそれも程度問題ではあるので、どっちにしろ、二人が強い信頼関係で結ばれている(のかも)という描写は、現実に即しているかいないかという次元ではなく、まぁこの作品においての強い主張と考えるべきだろう。
 もうひとつがハイエルフの告白。なんかハイエルフのあのセリフでヒロインは、では自分が頑張らなくちゃという流れになっていたのだが、アレ、よーーーーく聞くと、ハイエルフの本心は主人公が好きでたまらないとしか読めない。彼女の言葉によると、かつて人間の男と連れ添ったことがあり、おそらく死別してる。で、ハイエルフがなぜ主人公を喰っちゃわないのかというと、それはおそらくハイエルフ同士が結婚しても、死ぬまで一緒に連れ添うという形での一夫一妻制であって、彼女自身がその価値観であるためと考えるしかない。別に人間の世界でも一夫一妻制の国で、相手が死んで離別しても再婚して別に問題はないのだから、ハイエルフだって相手の寿命が短いことを承知の上で結婚し、相手の人間が死んでしまったら気持ちを切り替えてどんどん再婚しちゃっても問題はない。今回のハイエルフだって、語られてないから自分が勝手に想像しているだけではあるのだけども、かつて結婚した人間の男が寿命が短いにもかかわらず、どうしようもないロクデナシ男であって、その時の経験がトラウマ級の酷い体験であって、それが寿命の長いエルフのその後の長ーい人生に深い傷跡を残したからもう人間の男を好きにならないと決心した…ということなのかもしれないが、まぁフツーに考えて、二人がこの上もなく愛し合っていたからこそ、もうその愛する相手を失う辛さを二度と味わいたくなかったという線が濃厚。でも、どっちにしろそういう考え方はあんまり一夫多妻だとか一妻多夫もしくは乱婚制とはそぐわないし、Aパートとの整合性が取れない。乱暴な言い方をすれば、一夫一妻制を尊重するとすれば、もう一回結婚して権利を行使しちゃったから、ここでもう一度人間の男と結婚したら、人間側の女から男を余分に奪う結果になるので、そこは弁えて最初っから辞退するようにしてるという形になる。
 なので、これを現代の風潮に当てはめて言えば、別に相手と死別したわけでもなく性格の不一致だとか相性が悪かったからと言って離婚したのにもう一度再婚するというのは本来ならタブーである、しかも勝手に離婚して子供を育てるのが大変だからと言ってやれ社会で育てるべきというのはもう托卵親なのであって、近代だから自己決定権を行使したのならそれによって損害を被ってもその尻拭いは自分たちですべきで、他人に丸投げは良くない。
 あと、やはり巧妙なのが、ヒロインがお姫様であって下方婚をしているように見えること。現代だとカネのない層は男女とも相手を選ぶイニシアチブは持たせてもらえないが、カネのある男は女の経済状況を問わないけれども、カネのある女は下方婚しないので、どうしてもカネのない男だけがあぶれることになる。つまり、カネのない女は努力次第で選ばれる可能性は全くないわけではないが、それに比べてカネのない男は選ばれる可能性がほとんどないということになる。とはいえ、別にウェーイなカネのない男でも結婚はしてると思うので話はそう単純なものでもない。だが、そういう個々の事例でそういうこともあるという話ではなく、マクロで見たときにそういう構造になっているから統計上生涯未婚率は圧倒的に男の方が高いのであって、これ、昨今の通り魔的犯罪の容疑者…というより裁判で判決が下されなくても犯行の様子はもう画像や本人の供述で明らかだからもう犯罪者と呼びならわしてもよさそうなもんだが…に男が多いのもなんだかわかる気がする。コミュ的に問題のない女は表に出て目につきやすいし、弱者女性は昔は家事手伝い、いまだとひきこもりになっているだろうから、可視化されにくい。そういう中でフェミがネットで「もっと女を優遇しろ」と喚き、それが叩かれても論点逸らしや華麗にスルーして何度も男女関係なく弱者であれば叩いて見せてやはり「女を優遇しろ」とセットで弱者男性を狙い撃ちで弱い者イジメしてる様子が目に入る。そりゃ弱者男性が追いつめられるのもわかる。しかも年齢層低めなのがポイント。歳をとれば諦めもつくが、若いうちから将来がないということをわからせられてしまうのだから、絶望だけが膨れ上がる。
 さて、ではヒロインが下方婚とは言ったのだが、では主人公が貧困層か?と言われたら、これもまた微妙な話で、仮に生まれが貧困層だとしても、妹が勇者であり、その兄が先導役として勇者パーティーの有力メンバーだったのだから、これはあの世界でも、搾取をしてないというだけで十分上級国民の、それも上層にあたる。でも、この搾取をしてないというところがポイントで、結局主人公は会社に解雇されたサラリーマンのメタファーにしてる。いちおう薬屋だし、あの世界では非差別階級専用の仕事みたいなものが描写されてないから、あれは下層民というか、一般人のやる職業といったところで、いちおう庶民にあたる。庶民が一番下限の階級社会なんだよという描き方だと思う。なので、いちおう外形上、庶民にまで「落ちぶれた」主人公に、特権階級に籍のあるお姫様が下方婚したというものになってるわけだ。今や日本の労働人口の半分が非正規雇用なので、このサラリーマンのメタファーは別に正社員だけじゃなくてももはや成り立ってしまう時代になっているかなりつつある。そういう意味で、なるほどこの作品、男のドリーム全開だとは言ってもそれなりに巧妙にいろいろ考えられているんだなと感心した次第。
 というか、今回主人公がヒロインに渡したプレゼント、今でいうエンゲージリングのようなものだよね。そしてあの際に聞いた宝石云々はおそらくマリッジリング。いちおう形にはしてきてるんだ…。

暗殺貴族#5

 試練を突破し、次から別に用意していた戸籍になりすましの修行に行くという話。OP映像に出てた黒髪ロングが出てくるのだろうと思っていたからちょっと肩透かし。次は商人に成りすますらしいから出会の機会はあると考えていいのかな。
 うーん、実は原作がなろうということでちょっと飛んで行って各話タイトルだけざっと流してみたんだけど、おそらく勇者を倒すところまでは行かないらしい。またかよって感じなのだが、正直回復術士ともども物語としては平凡とは思っているからしょうがないのかなという感じ。まぁアニメオリジナル展開で残り話数で一気に話が進む可能性が…さすがにないかな。
 ただ、今回のお話でも、社会人になるまでのモラトリアム期間、つまり成人前に何を身に着けておかなくてはならないかということで統一されているので、やはり教育がここ数話あたりのテーマだったんだろう。まぁある意味現代教育批判だよな。今ドキの、噛んで含めるように納得するまで理解の手順を懇切丁寧に教えるってんじゃなくて、最初は最低限の説明はするがあとは慣れろ、自分で考えろ、自主性を持てなので、述べられてる要素はむしろ昔風のもの。暗殺者用の教育だから非人道性が強いと思っていたら大間違いだと思うよ…。

平家物語#8

 前回で清盛が死に、主人公が平家側から放逐されたのだが、どうやら源氏に移り、寄宿先は義経というか、ヒキでは静御前だった。で、今回のメインは木曽義仲との倶利伽羅峠の合戦と平家の都落ち
 しかしまぁ元ネタからの抜粋なのに、抜き出し方がよいのか、ちゃんと余韻を残しつつダイジェスト風味を回避しながらよーできとるわという感じ。自分はあまり平家物語を読み込んではないのだけども、友人に言わせればポイントをよく押さえてるらしい。話を聞くと、平家物語は史実との差が結構あって、清盛は人でなしという描かれ方をされているが実像はそうではなかったらしい。あとその史実との差異はありながらも元ネタから史実に寄せるようなアレンジも見受けられる。頼朝の挙兵は、よく彼が積極的だったという描かれ方が多いらしいが、むしろ頼朝にとってはとばっちりを避けるために仕方なく挙兵したという側面が強いらしい。それがこのアニメでいろいろ疑問を呈したり気乗りしない態度に表現されてる。
 これから滅亡に向かっていくわけだが、別に平家のすべてが滅亡したわけではなく、頼朝と良好な関係を保っていた平家は都落ちなどしなかったし、その後も滅亡したりはしなかったのだが、そのへんの都落ちで平家同士袂を分かつエピソードは示されなかったなという。
 主人公の狂言回しの視点がこれから変化するわけだが、平家物語はあくまで平家に焦点を当てているわけで、大きな命題の一つがあれだけ栄えた平家がなぜ滅びたのか、猛きものもついには滅びぬ…なので、平家をつぶさに観察するために視点を平家に今までおいていたのだと思われる。で、その猛きものの描写はたしかにあるんだけど、重盛一門に関してはかなり同情的で、いわゆる単純な悪役という描き方はされてない。前回資盛に追い出されるわけだが、あれは言葉のキツさとは対照的におそらく思惑としてはこのまま平家にとどまっていては危ないから、心を鬼にして追い出したという形に見える。
 まぁ義仲にしてみても、やはり猛きものもついには滅びぬなのであっていわばプチ平家なのであって、やはり平家物語最大の命題が繰り返されるというか入れ込構造になるところを示して終わるみたいな感じかな。次回から終盤だろうし、これからそんなに多くのエピソードは入らないとみてよいのかも。

斗神姬#4

 月基地に到着。そこで補給してる最中敵の幼体に侵入されるがなんとか撃退する話。うーん、面白いかどうかは結構個人差があるように感じるが、割と詰め込まれてる要素はいろいろ考えられてるんかなといった感じ。とってつけたような設定だがSF要素をそれなりに詰め込んでいて、それらが次々と提示されて発生するトラブルを解決していくようになっているから、なんらかの理屈付けを律義に行っている模様。ただ、トラブル発生から解決は、こう方法を悩んだり思いついたり試行錯誤をしたりの展開にあまり緩急がつけられておらず、淡々と連続していく感じなのがいかにもあちらっぽい感じがする。このへんいくらSF要素にこだわっても所詮ファンタジー性が強いから、あまり詳細に説明することに意味はないと割り切って、説明不足気味になったとしても要所しか残さず、ドラマ部分に注力する日本のシナリオ作りのほうが洗練されてるかも。
 あと、キャラの国際性かな。主人公はあちら版だと中国人だが、その他のキャラは物語上登場するロボットがどこで発掘されたかで決められている風で、赤髪キャラはラテン系のネーミングでヨーロッパ系かと思えば、ロボットはメキシコにある遺跡だからおそらく中米だろうし、褐色隊長はやはりネーミングからヨーロッパ系かと思っていたら、前にシタールらしきものを弾いており、ロボットの発掘元はやはりインドだった。被り物のマジシャンはどう考えてもイスラム系で、なんと主人公と一緒に入隊試験を受け、今オペレーターをやってるキャラはあちら版でも日本人という設定らしい。せっかく中国人と日本人が元からの友人であるという設定なのだから、主人公を日本人に変更せず踏ん張れよとも思うのだが、そのへんはスタッフの判断を見守るしかない。不思議少女の搭乗機はなんか空母の機関部に転用されてるらしいのだが、アレはアルジェリアの遺跡産らしくて、かといってアフリカ人というのもあまりに肌が白すぎてよくわからんところ。アフリカといっても北部なのだから、真っ黒でないといけないわけではないが、驚きの白さなのでちょっと違和感は勝る。で、こうやって概観するとわりとアジア重視で欧米排除なのだから、結構冒険してるのかなと思わなくもない。日本人の白人崇拝がちょっと異常に感じられてしまう。
 素人が戦局を打開する新兵器に登場するとか、ハロもどきとかガ〇ダムの影響が見られるんだけど、さすがにオリジナリティのほうが勝ってるとは思う。
 自分の場合ジャパニメーションとの相違点が視聴ポイントなので、今のところは興味深さでそこそこ満足してるかな。