チート薬師#2

 傭兵団のお話。ポーションヒロポンあたりを指してるのかと思っていたのだが、フツーに栄養ドリンクっぽい。常習性というか中毒性があって、飲めば怪しいほど元気になるのだから、てっきりそっちかと。ただ、ヒロポンの主成分であるメタンフェタミンは、麻黄からとれるエフェドリンの還元反応で得られ*1、麻黄は栽培が容易だが、タウリンはタコなどから抽出して得られるらしいので、山の上に薬局があるからにはちょっと海産物から抽出しているとは思われず、ならばやはりなかなかどちらとは断定できかねる感じではある。
 前回はどうにもブラックジョークというかアイロニーという要素が強いかな、もしくはほんわかしてるけどある種のディストピアなのかと思っていたのだが、今回視聴してみた限り、前回のような不穏な空気感はほとんど意識されないほどになっていた。あと、名前はもじってあるがそれなりに実際の薬効とか薬の合成抽出あたりにもリアリティらしきものが感じられた。ポーションが麻黄から抽出したエフェドリンを配合してるのならそれは手作り程度で可能だし、今回の唐辛子のカプサイシンをアルコール度数の高い酒で抽出もそうだし、洗剤も、おそらく石鹸液程度のものだと思うが、これも入手容易なもので製造が可能。オトギリソウも民間で薬草として使われていたしで、まぁ高校程度の学力にちょっとした専門知識があれば十分できることなんで、前回創薬はないんじゃないか?と思ったのも早合点かも。
 ギャグのテンポはどうにもせわしないというか落ち着かないんだが、浮ついているというほどでもないのでこれがこの作品のカラーなのかなといったところ。ギャグのテンポ感は昨今のアニメでも重視されてきてることなんで、もうちょっと慣れて判断しないと何とも言えない感じ。ただ、視聴して楽しいとは思うけど面白いという域まで達しているかというとちょっとそこまでは…みたいな感じ。

ナイトヘッド#1

 同名のドラマのアニメでのリメイク。最初タイトルだけ見てどっかで聞いたことがあるなと思い、公式サイトに行ってみたら昔人気だったタイトルのリメイクだと知って興味が湧いた。そういやと記憶の糸を手繰ってみると武田真治豊川悦司などの名前が蘇ってきて、でも原作者の名前は当時も気にしてなかったな…という。確かに超能力が取り扱われてたような気もしたのだが、実際に番組自体はチェックしてなかったので改めてチェックするつもりだったのだが、イントロ読んでみたら、取り締まり側の兄弟は新キャラらしい。
 まだよく整理できないことが多いんだけど、ちょっと精神エネルギーの扱いと、この世界では否定されているらしい宗教の扱いに引っかかった。第三次世界大戦後の世界らしいが、その大戦で日本人は宗教というか精神主義とやらをいたく反省したらしい。で物理現象だけを根拠にするというお触れが出ているらしいのだが、この精神エネルギーがこうも毛嫌いされるのがよくわからん。今回の話でも精神エネルギーなるもので人が吹っ飛ばされていたわけなのだが、実際にそういう現象が起きている以上、では人を吹っ飛ばす原因となるものは何か、それとの因果関係はどうなのか?を観察によって解き明かそうとする態度こそが科学なのであって、精神エネルギー自体を否定する態度こそがカルトなのではなかろうかと思うのである。まぁなかなか因果関係はつかみにくいのだと思うが、仮説を立てそれが正しいかどうか実験や観察を繰り返して辻褄合わせをして、それでこう考えるしかないという理論が新たな発見として打ち立てられていくのであって、その辺の違和感がどうにも拭えなかった。とはいえ、本当に規制側が精神エネルギーなるものの扱いを科学的に実証するとか、そういう態度をそもそも持っているのかもよくわからんところで、それが科学的に実証されるものだとしても、政府によってコントロールできない危険な力だから、政府の管理下に置くか、それともそういう都合の悪いものは見つけ次第排除すべきものだと考えているかもしれず、表に出している主張と、その裏に潜む思惑は全く別ということもありうる。で、精神エネルギーというのは現実でのなんらかの異能だとか思想だとかそういうもののメタファーであるかもしれず、そのへんこの作品での扱いがどうなるのかはまだまだ未知数だとしか言えない。
 

 さて、ここで整理しておきたいことなのだが、WWⅡにおいて、精神主義とやらが日本を滅亡戦争に突き進ませたし、実際の戦争の場面でも敵を倒す信念があれば竹槍でもB29を落とせるなどの、物量軽視で所々の戦闘に及んだとされている。が、いろいろ話を聞いてみたのだが、例えばWWⅠでは日本は中国は青島の、ドイツ租借地あたりを攻略してるのだが、これが近代戦に必要な物量を投じていることがわかっている。攻略対象に対して十分な砲撃を行い、あらかた反撃力を奪ってから兵士が突入するわけだが、その兵士もWWⅡ時のように貧相な装備ではなく、ちゃんと敵を制圧するために必要な装備を揃えて攻略してたとある。
 で、これが重要なのだが、その際の戦費の莫大さに当時の軍部は大層驚いたらしい。そして出した結論が「日本は近代戦に耐えられるだけの経済力を持っていない」というか、近代戦に必要な装備を揃えることが困難と判断したらしい。なので、揃えられない装備を補うものとして「精神力」というものが持ち上げられたというワケ。まぁ貧乏国の悲哀だわな。WWⅠが終わって戦争特需が消えると昭和恐慌になり、飢饉も連続して農村はもうこれ以上はないというほど窮乏してしまうワケだが、地方の窮状を見かねて起こったのが二二六事件なのはご存じの通り。で、アレが、まぁ皇道派と統制派の対立があって、財界と政界が結託してカネ持ちだけが肥え太るそういう世相を憂いて皇道派が反乱を起こしたのもご存じの通り。
 ここで大切なのはWWⅠでの戦訓である、日本は近代戦にとても耐えられないという認識は皇道派も統制派もあったと思われるのだが、皇道派は対ソ戦略を重視して軍の拡大を訴えていたし、統制派は国内の格差が拡大しようとも軍備を拡張することを重視していたわけで、ただ、皇道派のほうは精神論を重視していたから、その根底にはやはり日本が貧乏だったから精神に頼るしかなかったという理屈だったんだろうなというのは想像できる。
 でも皇道派は二二六事件で一気に表舞台から放逐されるわけで、WWⅡという滅亡戦争を引き起こしたのは精神論を重視する皇道派だったのか?と言われたら、全然そんなことはなかったわけだ。財界と密接に結びついていた統制派が、例えば戦車あたりを見ても、中国軍相手には十分機能しているかもしれないが、ノモンハンではソ連軍にコテンパンにされているのを知っていながら、国力で全く歯が立たない米軍に喧嘩を売っているわけで、ちゃんちゃらおかしいというものである。
 なので、太平洋戦争というのは決して精神論が直接引き起こしたもの…では全くなくて、青島攻略戦で近代戦には物量が必要だと分っていて、日本は近代戦にとても耐えられる経済力ではないと分っていて、例えば東条英機関東軍参謀だったのだからノモンハンの情報も当然耳に入っていて、強国に戦争を吹っかけても鼻であしらわれることを分かっていて、そこまで日本は戦争できるだけの状態にないことを分かっていながら、でもその東条英機がよりによって率先して日本を滅亡戦争に突入させる側に立っていたのだから、もうアホかというしかない。
 まぁ長くなったが、やはり精神論が滅亡戦争を引き起こしたわけでは全然なくって、正確な情報を持っている立場の人間が、やれば負けると分っているのに、そして当時の陸士海兵といえば貧乏人が入ることのできる最高の教育機関であって、判断力がないわけでもないのに、それでも一足す一はの誰でも間違えようのない問題に対して、素っ頓狂な結論を下してしまうワケで。宗教も何も一切関係ないということになる。それでも東条は、敗戦濃厚になるとやたら英霊がといって宗教を持ち出したし、弾がなくても抵抗しろだと精神論を持ち出したわけなのだが、別に彼がそれで勝てると思っているわけでもないし、しかもその主張は嘗て対立してた皇道派のもので真逆のことだし、はっきり言って国民を騙くらかすために積極的に用いた詐欺の手法なのであって、精神論や宗教の本質に触れたものでは一切ない。
 で、この作品を振り返ると、2041年の15年前に追われてる二人が拉致され、その間に第三次世界大戦が起こったらしいが、なんでこういう設定かというと、やはり昨今の状況が開戦前の状況によく似ているからというのを取り入れてるんじゃなかろうか。他にやるべきことがあるのに、大して必要もないイベントを開催決定し、状況が変わってそんなことをやってる場合でもないのに強行に及ぶというこの状況。さすがに集団自衛権あたりで日本が実際に戦争に巻き込まれる可能性はそう大きくもなさそうだが、今の状況だとまた同じ過ちを繰り返すことになるよという設定をしたうえで、で、日本人のメンタリティは何が起こっても変わりませんよという近未来SFに仕立てているのかなと思わなくもないなと、これまた長々とおそらくあんまり当たってるとも思われないことを考えてみたというか。

*1:別にメタンフェタミンのように邪悪度が高いものを売らなくても、エフェドリンのように覚醒剤としての効能が弱いものを売った方が合成の手間もかからず若干安全性は高い