6月終了作品まとめ

アクアトープ#1

 待望の篠原監督作品。夢をあきらめた元アイドルが水族館に関わって…という話だが、まだ方向性はよくわからん。ふと思ったのが、これ何物にもなれない自分を憂う昨今の若者に向けての話なのかな。こうマスゴミを通じてキラキラした成功者を見せられて、あれが何かを成し遂げた人間なんだと憧れる。まぁ大抵の人間は30代40代にもなればそういうのが剥がれ落ちるんだけど、格差が拡大して階層としての中流がなくなった現在、下手すると昭和時代の標準家庭像である、夫婦に子供二人ぐらいの家族すら持てなくなっている層が結構可視化されてきたので、家庭すら持てないことへの恐怖みたいなものが庶民を追い詰めてるのかもな。
 元アイドルが、まぁ言いたいことはわかるんだけども、それにしてもよくわからないところがあって、センターポジションにいて、所属するアイドルユニットはバカ売れしてはないにせよ、そこそこ仕事はあるような雰囲気で、そこで後輩にどうやらポジションを譲ったとかそんな感じなのだが、どうもアイドルをつづけるのをあきらめる動機がイマイチ腑に落ちないところがある。水族館では頑張ったのにと泣いてるシーンまであるわけで、なんか続けたかったのに諦めざるを得ない状況があるようにも見え、そのへんがどうにも。ただ、そのへんの事情は現段階で隠しているとみるのが妥当だと思うので、疑問は疑問として念頭に置く程度ではある。
 方向性はわからないものの、どこに連れて行ってくれるのかは気になる作りなのはいつものことなんで、まぁぼちぼち楽しんでいくつもり。初回としてはこんなもんでしょ。

ひぐなく卒#2

 前期の業「鬼騙し編」の裏でレナはこういうことをやってたという体裁をとってた。が、よくわからんのが、業の段階では沙都子は雛見沢症候群のことについてはまだ知らないという段階のはずで、今回は積極的に沙都子がレナを雛見沢症候群にしたという話だろうから、関連はあっても別の話のはず。どうしても紙芝居ゲーの表ルート、裏ルートのように見えてしまうのだが、沙都子が自覚的にループ構造に入っているか否かの違いはあると思うので、その辺の違和感をどう評価してよいのか迷う。ただ、表ルート裏ルートとして見たときは結構出来が良いんだよね。あの時あのキャラはこういう思惑で動いていたというのがそれなりに意味を持ってくるので。
 OP映像を見た限り、もしかして梨花と沙都子の対決構造より、それ以外のキャラがループ構造に入ってくるというそういう物語になるのかなと思ってしまったのだが、今回の話運びを見る限り、沙都子メインの話から離れる様子はないようだし、どう動いていくのか未知数な感じ。ただ、ドラマ性や展開に目をくらませていて、その実言いたいことは自分が前期で感じていた、昭和期の失敗を振り返るというものであるかもしれないので、まぁいろいろな要素に気を配って視聴しないといけないのかなとは思ってる。

ピーチボーイ#1・2

 桃太郎をモチーフとしたおそらく対立と包摂の物語になりそう。それぞれに正義があるという構図を持ってきながら、環境を破壊してるのは人間とはまた大きく出たなとは思ったのだが、まぁそのへんはあまりメインではなさそう。OP映像あたりを見ると、主人公サイドもまたある種の鬼なんだろうなとは思うが、そのへん様子を見ながら視聴していきたい。

2021年6月終了アニメまとめ。

 蜘蛛が納品できなくて放映延期だったせいかちょっと遅くなったが、忘れないうちに手っ取り早くまとめてみることにする。

  • ヴィヴィ 今期での当たり作品。自分はAIを底辺労働者のメタファーだと思って視聴してたが、そのへんは視聴者それぞれで。ステージ描写とか音楽を入れ込むだとか人寄せ要素もうまく組み込んで基本ディストピアがよく表現できていたのではという感じ。
  • おさまけ 外形的には一昔前の萌えアニメなんだけど、人にはそれぞれ思惑があって特性に応じて努力してるんですよみたいな感じ?。おそらく主体性がテーマだとみればそこそこ悪くもないが、社会の荒波に揉まれたらそんなの当たり前でしょみたいに感じるとは思う。
  • 擾乱 ダークな雰囲気で個人がどう生き抜くべきかみたいなものがテーマだと感じる。日テレでアベ批判とはちょっと驚いたが、B級テイストの割にはそこそこ真剣に作られていて悪くなかった。
  • 黒ギャル 正直やおいとしか感じなかった。昨今話題になってるLGBTに対する掘り下げでもあるのかなとちょっとは期待してたのだが、あまりそういう要素は感じられなかった。
  • 戦闘員 欲もあるしかといって悪党になり切れるわけでもないいわば小市民的な主人公を中心にしたドタバタコメディ。こういうの最近少なくなったと感じていたから割と堪能した。
  • モリアニ 志は高いなと思いながら視聴してたのだが、現代の社会問題を織り交ぜながら批判要素も入れて結局史実に収束させるために手じまいしたのは個人的には肩透かし感半端ない。一つ一つの事件はエピソードとしてよくできていたと思うので、なんか惜しかった。
  • 長瀞 青春の甘酸っぱい感じは描けてたし、お色気とのバランスもまぁこんなものかとは思うが、アイデア自体は高木さんの二番煎じかな。こっちのほうがカップル間はやや対等寄り。
  • ひげひろ キャッチーな要素をふんだんに取り入れてそこそこ見ごたえはあったが、基本は昔のメロドラマの構図。アジールが一つのテーマと思ってたんだけど、それよりはむしろ孤立化した現代人の問題というほうが主かも。
  • ましろ 音楽の本質について直球勝負をしてきてるところはよかったし、実際に演奏と組み合わせたときの破壊力がアニメにして発揮された作品だと思う。もともとが人気作だから外れだと思ってなかったんだが、それ以上に出来は良かった感じかな。
  • 聖女 聖女なんだから、もうちょっと現代人に対する救いみたいなテーマが込められてるのかと思ったんだが、ごくごくフツーの異世界転生モノといった感じ。理想の職場みたいな描写だったので視聴しててストレスは感じない。きっとこの程度だろうという見込みだったから失望はないが、物語としてのパンチは弱め。
  • スラ300 おそらく積極的にありうべき共同体を拡張していってる物語だと思う。エピソード単品では取るに足らないものだと思うが、構成はよくできていると感じた。
  • クラマー 君嘘の原作の人だから大外しはないだろうと思っていたのだが、おそらく物語としては始まったばかりみたいな感じで個人的には不完全燃焼という印象。サッカーのスーパープレイ動画としてはよくできてる部分もあって見ごたえはあるが、それ以外はパッとしない感じ。
  • 86 差別構造を描き、その中でもがく人間を描くのはよくできていた。続編があるらしいが、キャラを一新するのかどうかわからんのでとりあえずメモ。
  • スパカブ 貧乏人の少女がカブを手に入れて世界が広がる様子はよかったのだが、後半はいろいろツッコみどころが多くて困った。大きな軸として間違ってるわけではないのだが、どうにも気になる点があって素直に楽しめるというワケでもない。TV放映ということでいろいろ改変してるらしいし、そのへんどう判断するかは個人差があるだろう。全体的には悪くなかったと思う。
  • 大運動会 テーマのシリアスさとB級テイストの喰い合わせがどうにも判断つかん。前作の設定やキャラを拝借し、世界展開するならこう作るしかないというのはわかるので出来は決して悪くはないんだが、昨今のジャパニメーションと比較するとセンスは古くてそのへん人を選ぶかも。
  • ドラゴン家を買う 物語の骨格は魔女旅あたりと変わらないんだけど、こちらのほうが丁寧で王道な感じ。魔王選抜はくじ引きだとかその魔王は王宮にこもるんじゃなくて全国行脚だとか、フツーに政権批判も混じっていてそのへん含意はそこそこある作品。視聴対象にした時点ではもうちょっと能天気なものだと思っていたので、案外しっかりしていて好印象。
  • 恋きも はいからさんあたりを彷彿とさせるのだが、センスは古くないし、ラブコメとしても物語としても構成はしっかりしてるので退屈せずに最後まで楽しめた。
  • フルダイブ ゲーム世界に活動の場をということなので一種の異世界転生といえなくもないのだが、割と現実との乖離がなく、過去の自分と向き合う場としてのVRなので、むしろこれはリハビリが構造としてあるのかもとは思った。そう考えると今ドキのテイストながらそれなりに直球勝負を仕掛けてるという風にも思える。主人公も都合が悪くなるとゲームをリセットして再開することもほぼやってないし、そこらへんのループモノよりは志は高いかな。コメディとしてはギャグが上滑り気味で、けっこうストレスも感じるのだが成長モノとしてはよくできているのではとは思う。
  • やくも 陶芸とご当地観光ガイドと成長モノとしてバランスが良い感じ。バラエティ風味なのに結構真剣に作られてるんだなというのがわかって個人的には好印象。
  • 蜘蛛 設定からして何か深刻なテーマがあるのだと思ってしまうが、構造としては最終話感想で述べた通り、キャラのレベル上げをギャラリーとして見せられてる感じで物語の進捗がそこそこある感じなので、個人的には退屈したというかもどかしかった。ただなろうからの商業化で、累積300万部だからそれなりに人気がある作品のはずで、そのセンスが合わなかったというしかない。テーマ自体は悪くないと思っているがドラマとしてもどっかで見たようなものの焼き直しだし、ダラダラ物語が進んでいくので、蜘蛛はともかくRPG的要素が受け付けない人にはお勧めしない。
  • サンファン3 物語としてはとくに言及するような欠点もないし、よくぞ人形劇でここまでというのは今までと同じ。シナリオは熱もあるしひねりもあって王道展開。当代きっての声優たちの競演も聴きごたえあるし、まぁシリーズ追っかけてる人ならこれは外せないでしょというしか。
  • 馬鹿野郎 谷口悟朗作品でまぁ外れることはないと思っていたがかなり楽しめた。ラスト周辺の怒涛の展開は逆に自分にとっては雑だと感じたのだが、まぁ現代世界のシステムをいろいろ組み替えたりフェイクを入れたりして物語に織り込んでいるのを読み取っていく作業は楽しい。組み換えを繰り返すことで、この陣営は現実の組織なり集団なりのメタファーだということから逃れて、それで結局普遍性まで磨かれていくという手法なんだと考えると、ちょっとひねってるなとは思う。が、終わると割と記憶に残らない感じ。







未視聴作品。いちおう確保してるが見てないのは

  • 異世界魔王1・2 すばらしきこのせかい ダイナゼノン シャドーハウス セブンナイツ 
  • あと継続中だが未視聴なのは 東京リベンジャーズ ブルーレフレクション


 この期はヴィヴィと86が当たりみたいな感じ。まぁ86は続きがあるので何とも。あと、ライトな作品は、やはり商業作家となろうで差がある感じ。なろうは最初は何か見るべきものがある雰囲気は感じるんだけど、物語が進むうちに失速するというかダラダラ引き延ばしてんなという印象が強くなる。逆に商業作家の作品はアニメ化に際して切り取る部分にもよるんだろうが、ラストで伏線が回収されて腑に落ちる展開が多く、構成が練られてるというのがわかるので、視聴し続けた甲斐があったと感じるものが多い感じ。別になろうだから絶対ダメとか商業作品だから絶対オッケーというふうな単純なものでもなくって、新人発掘だとか、売れ線を探る手段としてというか、いろいろ移行期にあるというか、あらたなステージに移ったという段階なのかも。

追記

 
anicobin.ldblog.jp魚拓
 他人がどう評価してるのか気にはなっていたのだが、こういうのを見つけたので参考になった。レスをまとめた本文は短すぎるので、下の※欄をザッピングしてみたが、なんとオッドタクシーが一番人気っぽい感じ。視聴対象にしようか迷ったのだけども、まぁ外れではないだろうが可もなく不可もない年齢層広めの作品だから、そうチェックすることもないかなと特に躊躇するような要素もなく外した記憶がある。ヴィヴィと86は評価高めだが、ちょくちょく合わなかったという人がいる模様。スラ300を面白かったと言ってる人がそこそこいてへぇーとはなった。ひげひろはあんまり人気がなくてちょっとばかし意外。外形的には媚びっ媚びの萌えアニメだし、そのあざとさが忌避されたのかも。理由も含めてみたらそういう人がいてもおかしくないぐらいには思えるので、だいたいの傾向がそこそこ一致するのは面白い。あと、こういう場で自分の推し作品を猛烈にプッシュする人はいなくなってるかんじだな。


 あんまり書くつもりもなかったんだけど、モリアニ、あれおそらくウィリアムはコナンドイルがモチーフになってると思われる。コナンドイル、ホームズシリーズを書くのに乗り気ではなかったらしい。人気が爆発しても本人の書きたいものは別にあって、嫌々シリーズを書いていたようで、ホームズを殺して終わらせたら、出版社がこれだけ売れ線なのに書かないのはもったいないからと連載を無理やり再開させたらしい。
blog.livedoor.jp魚拓
 この作品の前半はミステリとしてもそこそこ面白かったのに、途中で投げやりになり、ロンドン塔からモリアーティーを落とす下りは、コナンドイルが一旦ホームズシリーズを閉じるまでの流れによく似ていて、うーんとは思ってた。まぁ原作者なりアニメ制作側なりが本当にそこまで織り込んで作ってたかどうかは自分でも怪しいとは思うのだが、この出来だとねぇ。