1stQ2023開始アニメ短感

転天#9

 結局ルサンチマンを拗らせたシスコン王太子のご乱心でした…という話に。見かけは派手な割に、象徴としての意味も希薄なバトルシーンに尺が割かれてあーぁ…みたいな感覚だった。バトルの初期では明らかに弟クンは主人公を殺すつもりだったように見えるし、しかし結果を見るにつけ、その器でないことを自覚した弟クンが「若様ご乱心」の形を取って王位継承権を主人公に返した…という話になってるので、視聴後感はよくない。
 王族なら通常傅がつくものだし、親は子供に好き勝手させ過ぎでしょーというしかないし、だからこそ主人公である王女が思いのままに振る舞って王家自体を振り回してるんでしょーみたいな話にしかならんので。バトルシーンでも個々のセリフには正しいこともあるのだけども、例えば私人としての正しさと公人としての正しさが混同されていて整理もされてないので、読者が自分に都合よく拾えるようになっており誰にでも正しさは付加させられるのだろうけど、個人的には総合的に判断して結局言いたいことを口に出してるだけでそこに一貫性はなく、どちらにも感情移入できない…ということにしかならなかった。で、おそらく初回からの因縁がこれで終息したので今回はどう考えてもクライマックスなんだけど、これで結局言いたかったことは何なの?みたいな疑問が沸き起こる。前回も述べたように、解決すべき社会問題としての民の描写がほとんどないのでそれが本筋でもないだろうし、そもそもタイトルに転生とあり、そこかしこに転生前の現代日本の描写がありながら、全然転生要素が表に出てないのはなんでなの?みたいな疑問がある。タイトルにあって物語上全く伏せられているのは不自然なので、残り数話でなんらかの露出があるのだとは思うが、そうだとしてもやはりこのアニメシリーズを通じて伝えたいことが全く見当たらないのがなんか不思議。転生先の身分が王家でなければ、例えば上位貴族であってもこの話は成り立たないので、割とピンポイントな政権批判*1だと思うんだけど、そうだとしてもかなり逆説的で抽象化されてるから方向性がズレてるとしか思えないし。でもって王女の魔法研究の根幹は、前世の科学的合理思考なわけだから、話をどこへもっていきたいの?みたいな。

テクノロイド#8

 溶鉱炉転落事件の現場に行ってロボットたちに詳細を聞いていると…の巻。新品でも鋳融かされるとか尋常じゃないな…と思うんだけど、話が進めば進むほどロボットはAIとかアンドロイドのことを直接言ってるのではなく、使い捨ての人間の労働者のメタファーとしか思えなくなってくるな。ロボット刑事に強制力が働くヒキの部分も、政治に警察が引っ張られる現実の状況とも妙に酷似してるしな…。外形的には陳腐な話運びなんだけど、示される構造とか徐々に明かされていく事実とか、見かけよりは重心の低い作品やなーという感じが回を追うごとに強くなってきてる。
 しかし、ロボット賛成ではなく「容認」なんだな。語感からすると、積極的に受け入れるというよりは仕方なく認めるというニュアンスの方が強いので、どちらにしても被差別的階級って立ち位置やね…。フツーなら好意的な単語を使ったり、そうでなくても色のついてなさそうな単語を持ってくるはずなので、視聴者にストレスを与えることを厭わないで、伝えたい印象のために敢えてこういう単語を選んだあたり、そう大したことでもないんだろうが覚悟のほどがうかがえる。

トモちゃん#9

 主人公ペアではなく、周辺キャラの深掘り回。今まで主人公たちの引き立て役としていい味を出してたんだけど、脇役として輝く…のではなく、彼等も人間なんですよ…という形になってたかな。まぁ対象の二人がお互いの気持ちを確認しただけという、ストーリーの落ちとしては全然大したことを言ってたりはしないんだけど、今まで見せてきたのとは違う側面を見せられてなんか意外というか。シナリオの展開も、ちょうどビリヤードのようにキャラが玉突きでぶつかりあって押し出されて、その結果おさまるべきところに収まる感じとか、動かし方が巧妙でちょっと面白かったかな~。

大雪海#8

 敵国を脱出して自国に逃げ帰るの巻。あー、水は貴重だから風呂用に大量に使うわけにはいかんのかー。とは思ったんだけど、海の成分が水ではないことに今更気付いてしまうという。とはいえ、海中の描写がよくわからん。魚のようなものが泳いでたし、息ができないから空気袋がいるんでしょ?。とはいえ歩くのに現実の水中のようにもの凄い抵抗を受けてるわけでもないような描写だし。いやまぁ前回述べた通り、水が現実の水であるかどうかはあまり重要ではなく、あくまで水は富の象徴として扱われてるっぽいからそのへんはまぁ。

とんでもスキル#8

 依頼を受けなかったために失効した冒険者登録のために、依頼を受けるという話。そういや海を目指すという目的とかあったよなwwwって感じだが、そのへんあんまりこの作品にストーリー性はないし、自分も期待してないからオッケーかな。傭兵のおっちゃんが高級食材を口にしていたことに気づいて態度が急に変わるのがなんのかんのいって面白かった。
 転生後の世界を自由に生きる描写としてはこの作品の有り方が納得なんだけど、そうなるとやっぱりストーリー性は作りにくくなるわな。事件に関わって俺TUEEEだと結局トラブルシュートの他の物語と変わらなくなるし、そこで辛酸をなめる展開だと自由に生きるという命題からかけ離れることになるし。かといって本当にのびのび自由に暮らしたとしてなんら事件性の無い平凡な日常シナリオを見て読者が喜べるかというとアレなんで、そこになにかしら興味を引くような要素を入れなきゃならないだろうしで、そのへんこの作品だと異文化で新しい発見があるだの、上記の通り人げ円の活動を活き活きと切り取ったりしてるから何とかなってるんだろうな。

1stQ2023開始アニメ短感

 なんかもう三月に入ってしまい、ほとんどの作品が終わりに向けてラストスパートという感じだが、いちおうまとめてみる。

  • ツンリゼ 甘々なロマンティック描写が多い割に退屈しない作品。物語として面白いわけでもないんだけど、要素の組み合わせとかが結構考えられてるようで次回が楽しみになってるかな。
  • 利便 やはり虚淵といったところ。必殺仕事人のようなトラブルシュートの形をとっていながら、キャラ一人一人の生き様も描けていて、さすがに見ごたえがある。
  • 砂糖林檎 お伽噺の形式を取りながら職業人としての心構えとかをミックスした作品かな。物語としての突き抜けはちょっと物足りないけどバランスは良い感じ。
  • のんびり農家 農業というより経営要素の方が大きいかな。常々言ってる通り人類発展史をなぞってる感じで、ごく早い段階で読者がそれに気づけるようになっているからディテールにストレスを感じることもないのでは。荒唐無稽だけどそれとわかって視聴する分には合う人にとっては合うと思う。
  • お隣の天使様 ドラマ性があるほうの物語だと思うが基本若い二人の疑似新婚生活を楽しむ作品だと思う。これだけイチャコラされても退屈しないのだからスバラシイ。
  • 虚構推理2 1からのシームレスな続きなのだけどもそのへんはまぁ。で、1期の後半は割と自分的には受け付けなかったのだけども、それがウソのように楽しめる。主人公たちが事件をあまり深刻に考えず、自分たちの推理が正しいかどうかにもこだわってなくて「それも一つの解釈」と断じてるのが意外で、その辺肩の力が抜けてていいとは思った。
  • 便利屋斎藤 JRPG要素が気にならなければギャグ&サラリーマン応援歌的要素でそこそこ楽しめるかな。コメディというよりギャグとして楽しむのなら十分。
  • 長瀞2 いきなり都度感想で述べた通り、若干スポコン要素が入ってきてマンネリ回避。1期でNG認定したヒトにはお勧めしないけど、楽しめた人にはまぁこんなもんかと。
  • 最強陰陽師 自分、耐性がついてるから楽しめてるけど典型的な萌えアニメかなぁ。物語としての形はちゃんと保ってるしカタルシスも得られる、そこそこに詰めてテキストは練られてるから視聴が続けられてるけど、敢えてこの作品を選んで視聴するにはきっかけがいるんじゃないかな。
  • ろうきん 初期はあまりのご都合主義にうんざりしてたけど、この作品の楽しみ方を会得してからはコメディとして普通に楽しんでる。でもまぁやはりこの作品もどうしても見ろとおススメするようなものでもないかなぁ。
  • 暗黒兵士 追放系なろうの典型的なストーリーだが、まぁ可もなく不可もなくといったところ。これもサラリーマン応援歌的なもので、読み捨て御免で消費する程度とは思うけどね…。
  • D4DJ2 シナリオのクォリティに浮き沈みがあるけど、基本1期と同様楽しんでる。1期で受け付けなかったら2期を見る必要はないけど、2期でフックした人専用だろうな。
  • 神拾2 これも1期でフックした人用だろうな。やさしい世界を生きるという方向性なので、後付けご都合主義が気にならない人は浸れるけど、これも敢えて視聴するような作品でもないとは思う。
  • イカード シナリオはちょっと方向性が見えにくいのだけども、割と話が落ち着いてきたから初期のような受け付けない…という感覚は薄まった。トラブルシュートものとしては10数年前程度の昔のテイストっぽくてどこか懐かしい雰囲気だけど、物語として設定されてる大きなミッションは今の時代あまり共感されないんじゃないかな。
  • AUO 初期のうちは転生後の世界を冒険活劇的に生きる要素が楽しくて高評価だったけど、直近の話はあまり楽しめないかなー。学園編を抜けたらまた違ってくるのかもだけども、この調子だと卒業するまでの尺はないだろうし、このままおれ達の戦いはまだまだこれからだENDで終わりそう。
  • 氷属性男子 これもいちゃこらを繰り返すだけの話で、正直マンネリだと感じているけど、不思議なことに視聴継続意欲は衰えてないという。
  • 人間不信 人間は描けてるかなーとは思うけど、世界を救うキャラ達の割に話がこぢんまりして突き抜け感はあまりない。視聴を始めたらそこそこ惹きこまれるけどなんかぼんやりしてるかなーといったところ。
  • 久保さん 平凡であることがテーマだとは思うけど、これもいちゃこらでフックさせてるからそれが上手くハマってるかなー。設定的にダメな部分もあるけど個人的には中毒的な魅力がある。
  • テクノロイド おおきなおねえさん向けの部分があざといなーと思っていたけど、話は割と丁寧に作られていてわかりやすいのも手伝って、見た目の印象よりは出来はいいかなーという感じ。
  • おにまい 動画部分にかけてるコストはスゴイものがある。話もあんまり捻りが無いテキストの割に、退屈しないんだがその理由が良く自分でもわかってない。最初のうちはこの作品のテーマとかメッセージ性とか考えていたけど、今はそれも吹っ飛んで視聴してるなぁ。
  • バディダディ お仕事シリーズでもそうだけど、なんか気合入れてポリコレ要素ふんだんの作品を作っちゃうとP.A.Worksはダメだなぁという典型的なハマり方。キャラが薄っぺらいのはワザとだとわかるんだけど、シチュエーションの深刻さとキャラに奥深さが無いところのバランスが悪い感じやね。P.A.Worksの作品は自分の中で一度ケチがついたら以後の挽回はないという印象なのでツラい。
  • 防振り2 1期はありうべき近未来…という要素が個人的にフックしたので期待してたのだけども、やはりRPGリプレイの要素が強くてうーんといったところ。でも1期も全体の構造はそうだったし、自分にフックしたのも中盤以降だからこの作品にとってみれば通常運転だとは思う。目新しさが失われ、現状キャラの関係性の組み換えとかをやってるだけで、ここから魅力的な要素をひねり出すのはもう難しいかもしれんね。
  • トモちゃん キャラ設定に惹かれて視聴対象にしたけど、案外自分にフックした。全体的な青春コメディの部分は変わらなくて、思春期特有の未熟さからの成長部分、各キャラが少しずつ奥深くなっていく部分がよくできてる感じ。キャラが馴れあって、なんかのきっかけで話がシリアスになってまた通常運転…みたいな軽めの萌え作品とは対照的に、話の重心が回を追うごとに低くなっていくのが意外な感じ。
  • 大雪海 うーん、ストーリーがお花畑に感じて個人的にはイマイチかなぁ。クランチロールとビリビリが絡んでるので、おそらくこれはアニオタや一般向けというより、年齢層低めの、たぶん宮崎アニメのような立ち位置を想定して作られてるのだと思う。あと一か月程度だから最後まで付き合うつもりだけど正直見切りたい…。
  • スパイ教室 全体的な構造は萌え作品なんだけど、個人的には展開のギミック部分で楽しめてる感じかな。シリアス部分で欲張ってないからバランスが取れてるんだろうと思う。そんなに物語としての魅力があるというほどではないんだけど、好意的に視聴してる感じ。
  • あやトラ 矢吹健太朗節全開なんだけど、To LOVEるシリーズよりはシリアス寄りという印象。まぁおバカなストーリーだけど、矢吹作品とこちらも身構えているのでそれなりに楽しんでるかなー。
  • 転天 正直何を言いたいのかわかりにくい感じ。百合的要素を入れてはみたものの、そっち方面での突き抜けもこれでイイの?と判断自体を保留してしまうほど。転生要素がまだ表れてないので、それが出てきた時点で一変するのかねぇ?。

 コロナで延期してる作品もあるので抜けがあると思うが、ざっとこんな感じ。あとNieR、オーフェン続編、ノケモノ、閃の軌跡、もののがたり、アルスは確保中だが未視聴。この分だと放置しぱなしかな。

*1:政治的権力を失ってる皇族と考えるのはあまりに無理があるので