エスタデイ#2#3

 うーん、感想に困る。物語としての出来は悪くないんだけど、正直言ってこれ相当に時代遅れなんじゃ?という。前回ターゲット層が氷河期なんじゃ?と思ったのだが、その氷河期世代がこれ見てどう思うか?を考えるとちょっと心が沈む。かといって今ドキの中高生がこれ視聴しても、携帯電話が日常化した現在、公衆電話のかけ方を「小学生」にわざわざ教える時代らしいので、どーなんやろ?とも思う。原作の連載開始が1998年なのは前回ちょっと調べて覚えていたのだが、その連載、雑誌がなくなって移籍し2015年まで続いていたらしいから、アンテナ張ってる若手は目にしてたろうけど、基本はファンが追っかけていたというのがメイン層だろう。支持層には割と根強い人気らしいから、そのへん考えると、そのファン層が連載が続いた約20年の変遷とともに今一度振り返ってみたらどんな思いをしてるだろうと考えるのも面白くて、ただその実情を知る方法がないのがちょっともどかしい。
 さて、小道具としての電話なのだが、前回は黒電話の筐体にプッシュホンのボタン電話を見かけたが、今回ガチでダイヤル式の黒電話が出てきた。あと、緑の公衆電話も数回。今だったら携帯電話で連絡するのがあたりまえだろうし、そうであればなんか用があれば携帯端末で状況を伝えもし、連絡なければ安否を気遣うよう仕掛けることもできる。で、携帯電話の番号をやりとりしないことは、そもそも脈が全然ないということだから、こういう話になること自体が今ドキの中高生には理解できない*1んじゃなかろうか。
 あとは登場人物の生活だよな。主人公あたり、大学出て就職がなくプーというのも、やはり前世紀の自分探しのために就職モラトリアムがまだ通用してた時代で、今だったら都心部で一人暮らしだとあんなのんびりしたバイトシフトでなんとかなるのか?とか、それはそれでなんとかなっても、今だったらもうちょっと将来についての切羽詰まった感があるはず。高校中退したヒロインもそうで、今回実家が割と太めみたいな設定のようだが今だとやはり食い扶持に汲々としてるか、バイト先がそこそこ健全のようだが一歩間違うと水商売に首突っ込んだら骨までしゃぶられかねない状況なのが現在のあり方なんで、自分ですら今回視聴してそう感じたように、中高生はともかく、新採のサラリーマン世代だと本当にそう思ったはず。なので、おそらくゆとりではもう無理で、ゆとりより前の世代は就職できなくてもバイトでなんとか食いつなげてもしかするとなんらかのチャンスが持てたかもという時代の雰囲気を知ってるし、その後やはり氷河期世代は社会に見捨てられたという現実を目の当たりにしてきてる。ゆとり以降は、将来不安に怯えることなくよくこんな生活続けていけるよなぁと思っていても不思議ではない。原作の支持層のメインは明らかにゆとり以前だと思うので、そこに大きな断絶はありはしないか?、だとしたら、この作品を今わざわざアニメ化する意味、それこそ企画を立てたプロデューサー、世の中の動静にそんなに疎くないと思うんだが、何考えてそうしたんだろと思わなくもない。
 女性観も大きく違っていそうな気はする。ヒロイン教師の思い人が既に他界というのはめぞん一刻を彷彿とさせるのだが、今ドキそのような一途な純愛に近いあり方どうなんだろ?という気がする。既に晩婚化が一般化して、初婚年齢が30代と言われているが、そこに純愛ドリブンな結婚がないとは言わないんだけども、結局の所結婚相手はかなりドライな感覚で条件優先で選んでいるわけで、その帰結として見通しが立てられなかったバカな女が婚期を逸していざ年収1000万だとか三高をのぞんで陰で笑われているわけなんだが、男の方は男の方でそういう女の肉食化に(無意識にでも)ついていく連中とついていかない連中に二分化されてる状況で、今ドキの若者だったら男の主人公の湿っぽい感情に違和感を持ったとしてもこれまたおかしくない。
 なので、この第3話まで視聴した現在、自分の胸に去来するのは「よくこれをアニメ化しようと思ったよなぁ」であって、もう始終驚きと不安を感じっぱなしだった。もう個人的にはクロニクル的な鑑賞ができなければ見る価値ないだろうなとまで思ってしまう次第。まぁそのへんこの物語の方向性がどうなるのかみたいなものが気になって仕方がない。
 さて、イエスタデイときたから、ビートルズなのかそれともカーペンターズの方なのかとしばらく考えていたんだけど、まぁ’90年代の青少年がそれらを知らないわけではないだろうが、それを同時代性の象徴として使うことはまずありえないから、このイエスタデイはおそらく曲名ではないんだろうなと気付いた次第。まさに言葉通り「過去」の意味なんだろうけど、1998年の時点で過去といっても、バブルが崩壊して本格的に就職口がなくなっていくのは株価暴落の1990年より数年後のことなんで、そんなに遠くを振り返るというものでもなかったんだろうなとは思う。

*1:確か20世紀末で携帯端末の中高生の普及率八割九割だったはず。