サクラクエスト 第24話

 会長、漢だねぇ。
 会長のあり方は、過去のみずち祭ではっちゃけた回を見てからがらっと変わったんだけど、今回は見せ所だったなぁ。むしろこういう人が上司に欲しかったと思うぐらい。振り返ってみればこういう上司、一人もいなかったなぁ。むしろ自分の出世のために人をすりつぶす人ばかりだったというのを思い出して(新規採用時の上司だけは違っていたが)、今更自分の人生に愕然とするという。
 今回は作品としてみると、あぁもう風呂敷を畳みにかゝってるなという感じで、しみじみとはするけれど、そんなにテキストゝして評価できるところはあまりなかったというか。そういうもんだろうとは思うのだが。なんか巷ではP.A.Worksのお仕事シリーズといわれているようだが、結局のところ暗部を掘り下げることはせずにきれいなところを見せているってのはそれほど変わってはないのだが、P.A.Worksがわざわざ地方に仕事場を構えていて割と腰を落ち着けてこの問題に取り組んでいるのかなというのと、暗部はあからさまに描かないが、注意するとそれなりにオブラートに包んで包んでわかる人にはそれなりに伝わらないでもないってところはあって、まぁそれも今までのお仕事シリーズになかったわけでもないんだけど、しかしこう終盤に向かって何か事態が改善しているかのような描き方だとはて?といったところではある。
 あと、これは自分なりの見解で作品に盛り込まれているとは感じなかったんだけど、地域興しに関してはいろいろ自助努力なんていうことが特に地方に向かって言われることが多く、地方が悪者であるかのように糾弾されることが多いが、むしろ地域の維持に関しては地方のほうが住民が手を加えているほうが多く、都市部の住民は役所に丸投げで自分の住んでいることに関してまるで他人事であることが多い。地域興しは当然そんなのやる必要あるの?という態度で、都市部の住民が地方の住民を努力が足りんだとか能力が足りんと非難するのはどの口が言うのかといったところが全く欠けていて、そのへんスタッフも気の毒だなという気がする。都市部の住人こそ人口が多いということに胡坐をかいて傲慢極まりないというのが明らかになったのが、昨今のふるさと納税の返礼品のドタバタであって、この作品を企画していたころはそんなことはまだ気にもされていなかったろうから仕方のないことである。
 なんというか、それ自体が素晴らしい政策だと誉めそやすつもりは毛頭ないのだが、江戸幕府が農民を土地に縛り付けていたからこそ(いろんな事例はありはするが)、日本全体に人口が散らばっていたわけであり、逆に明治政府以降は都市に縛り付けられた庶民をむしろ積極的に引き剥がしていわば流民化し、そいつらを工場労働者としてこきつかうという政策があったからこそ地方が衰退したわけで、確かに住民の自発的な移動によるとはいえ、地方から住民が流出したのは政策のせいであって決してその土地の住民の怠慢によるものではない。そのへんを考えると、この作品の方向性は旧来の「地方の衰退は地域住民のせい」というところから全く脱却できておらず*1、残念ながら時代遅れといわざるを得ない。

*1:おそらくアニメスタッフはそのことをわかっているとは思うが、それを踏まえた方向性で作品を作ってもおそらく世間では理解されないので…。