南鎌倉高校女子自転車部 第3話

 今回は白眉だったねぇ。
 もともとの薄い本のコンセプトである南鎌倉高校女子自転車部というタイトル名との整合性をとるのが今一ぎこちなかったかな。どういう経緯になったのかわかんないが、このアニメを見る限り、南鎌倉高校は女子高のようだし、だったら南鎌倉女子高校ではないのはなんで?ということになるが、そのへんだろう。もともとが女子高の自転車部ではなくて高校の女子自転車部という設定で、そして共学校の女子自転車部というのは不自然だから高校を女子限定にしてしまえという流れのように思える。共学校の自転車部なら基本的には弱ペのように競技中心である可能性が圧倒的に高く、だとしたらそれとは別に女子自転車部が競技と関係なく設置してあるというのは確かに不自然。だったら高校自体を女子高にして競技に特化しない部活動(女子高は割と花嫁修業用という要素が強いので、部活動に競技性を持たせなくてもさほど違和感は無い)が存在してもおかしくないような設定にしたのだろう。まぁ不自然なことには変わりがないが、よくこゝまで落とし込んだなぐらいには評価したい。
 今回ちょっと驚いたのが軽水泳部という考え方。競技中心の水泳部とは別設置でこういうのは面白い。個人的な話で申し訳ないが、自分が高校生の頃は部活動は正課のとそうでないのがあって、正課のは週に一時間クラブ活動の時間に授業の一環として行われるものであった。運動部だと大会に出る部活動と、週に一回運動として楽しむ部活動の両方があって、その正課の部活動の考え方に近い。今はそういう授業としてのクラブ活動はおそらく存在しなくなっていると思うが、自分なんかはちょっと前から水泳に興味があって機会があると泳いだりするのだが、そういう競技でタイムを極限まで競うのはごめんだが泳ぐのを楽しむ部活動があったらこりゃよいわと感じた。もっとも自分が高校生の頃そんな部活動があったとしても25㍍泳ぐのが精一杯(今だと早さを問題視しなければ何㌔でも泳げる)だったのでおそらく入部してない。しかし、こういうハードルの低い運動部は今の時代こそ必要なんじゃないのという気はする。そういう意味でこういう設定は好意的に評価したい。
 今回のキモはなんといっても校長の昔語り。過去の自転車部(高校生という設定だがおそらく当時の大学の自転車部から拝借してると思う)の持っていた要素の説明の部分。自分の行動範囲を広げてくれる道具としての自転車の魅力を存分に語っているように感じた。自転車を競技として語ると、タイムを競うために人間が自転車に使役されるという構図になってしまうが、今回の話で語られていたように、昔だと交通手段も限られていてそれが自転車に対する憧れを喚起していた要素も多分にあって、しかし、やはり未知なる土地(経験)に達するために人間が自転車を道具として使うというように位置づけられるわけで、これは確かに自分が期待していた切り口。校長の台詞にあったように、今となっては自転車をどう使うかは個人に任されているいるというのもなんとも現代的な観点であって、そのへんやはり原作者が自転車に対しての捉えなおしをしっかりやったんだなというのがわかる。次話以降微妙なドラマが展開されるのだろうが、こういう立ち位置が示されると受ける印象も変わるし、正直この1話があればあとはどんな話になっても視聴したことを後悔しないだろうなぐらいには思わされた。