夏目友人帳 参 第12話

 夏目が藤原家に来るときのエピソード。
 藤原夫妻に行きたいと泣き崩れるのを見て、「泣くなよ〜」と思ってしまうんだが、彼に泣かせるのも演出の一つなんだなと思い直した。彼のような身寄りの無い子供が親戚中をたらいまわしにされる物語はたくさん目にするんだけど、なるほどようやく安息の地を得られるのか…というより、ある意味そのための儀式なんだなと思った次第。
 髪の長い一つ目の妖怪については、彼女自身が寂しかったんだろうなと思わなくもないな。が、夏目が人間界を去ってあの妖怪と暮らすことを考えると、どうも具体的なものが思いつかない。だから寂しい気持ちをあの妖怪は美味しくいたゞくとか言ってたが、それは夏目本人を喰うってことじゃないのか?という気もしたのだ。人間界から去るという事は社会的に死ぬということであり、それが生物として死ぬことゝ何のかわりがあるのか?とは思うわな。まぁそれはともかく、夏目があの妖怪の元に行ったとして、元の飼い主を慕って帰りたがる子犬のように、夏目が人間界を恋しがるという可能性もあるわけなんだが、それに思い至らないのは一つ目の妖怪が素人に封印されるほどバカってので説明されている。だからやはりあの妖怪は夏目と二人で寂しさを紛らわせながら暮らすのを望んでいたんだろうと思うしかない。
 昨日のエントリーついでに言わせてもらえば、西村・北本との関係がいわゆるホモ・ソーシャルな部分だろう。というか、男の自分とすれば、今回の弁当のシーンは饒舌すぎる*1ぐらいで、もっとがさつだろうという気がしないでもないが。原作者が女性で、女性に説明するために、本来男だったら口に出さない部分をわざわざ言わせたと考えるしかないな。
 しかし、アレだな、今期はほとんど妖怪に名を返す場面がないな。が、その分夏目を中心とするいろいろな人間関係…というか、この作品のテーマである友人関係はなかなかにして浮かび上がっているように思う。西村・北本との同性としてのつきあい、田沼・多軌との秘密?などを共有するものとのつきあい、名取との(能力上として)擬似的ではあるが仕事上のつきあい、藤原夫妻との目上の人との保護・被保護(親子関係に見えるが、今のところやはりそこまで行っているとは思えない)のつきあい、逆転して子狐との関係(やはりこちらも友人に近い関係だ)、そして斑との運命共同体的関係。社会にはもっと多様な関係はあるとは思うんだが、こうやって整理してみるとほとんどが友人関係のカテゴリーに入ってしまい、かつまた多彩である。笹田のアタックにも耐え、多軌とも極めて慎重にではあるが、恋愛関係は示唆はされていても排除され尽くしているわな。これまた昨日のエントリーに即して言えば、セクシャルな関係が徹底的に排除され、ソーシャルな関係のみが描写されるという。で、面白いのが斑だ。彼は友人帳に名が記されていないのに、一番友人帳に名が載っているような働きをするのだ。
 さて、次の最終回は夏目の慰労会らしい。たしかにお疲れ様というしかないな。

*1:まぁ反省すれば、自分のアニメ感想だって、うざいくらいに説明過多だ。