魔法少女まどか★マギカ 第1話

 なんか仕込みの多そうな初回だな。
 おさらい。
 魔法少女モノって言えば、'90年代まで少女が大人になって困った人の手助けをするというのが定番であった。魔法ってのは権力のメタファーであって、その人の持つ実力以上の力という性質を持つ。だから、大人になるだけの魔法ってのは、ターゲット層である少女には自分自身の力で事を成し遂げろというメッセージがこめられていると同時に、大人層に向けては、なぜ大人の力を持ってしても世の中の困った問題が解決できないのか?という批判にもつながっていた。
 が、こゝ10年ほどゝいっていゝのか迷うが、特に最近のヒット作である(と思われる)なのはシリーズでは、もう少女は自分の実力以上の力を魔法という形で示し、少年用ヒーローモノに見られる「世界を救う」という形になっている。まぁこれはよく考えてみれば大人ですら持て余す強大な力を、いくら純真で悪意がなくても子供が振り回すという、非常に転倒した形になっている。少年向けヒーローモノですら、大人であっても不可能だった世界を、年端のいかない少年がなぜか救ってしまうオカシサを持つものであった。さすがに、このいびつさを反省したのかどうかはわかんないが、なのはシリーズ第3期では、シリーズ主人公を十代の少女とはいえ、社会的に責任あるポジションにつけており、強大な力を扱うための自制心を持たせていたように思う。結局ヒーローモノの主人公を少女に変えたゞけのものであって、構造的には既存の設定やメッセージを逸脱することがない。ヒーローモノを見て育った大きな少年向け作品という意味では、誠にキャッチーなものではある。
 さて、この作品をぱっと見てみたところ、少女向けのものゝ特徴である、困っている人を助けるというものでもなく、人為によって捻じ曲げられた世界を救う(のかもしれないのだが)というヒーローモノともちょっと違っている。主人公たちの日常生活は極々平凡かつ平和であり、豊か*1でさえある。学校生活も現在の日本が不況であるにもかゝわらず、これまた能天気な話題で先行き不安な様子は全く感じられない。教室がガラス張りで外から丸見えであり、ちょうど格子の部分が檻を感じさせるのだが、これはまた物語が進んでくると意味が明らかになるのかもしれない。
 で、本作では魔法少女が戦っているシーンからすると、やはり敵は居るのであり、それがダメになった世界なのか、それとも人間の醜さとかそういうのなのか、それとも誰かの内面世界なのかゞいまのところまったく明かされていない。まどかゞキュゥべえを助けた理由もあやふやなものだし、保健室に行くのを口実にほむらに突き詰められた「家族や友達を大切にしているか?」というのにも、まどかはたゞ日常に流されているだけなのに、肯定してしまうといううっかり具合を示している。どのようなペースでそうなるかは別として、敵を明らかにしつゝ、戦いに巻き込まれていくんだろうが、まずは明示的でない敵がいるという点で今までの作品とはちょっと違うものがあるのかなと思った。まぁどう考えても心象的な風景のあり方は、素直な人助け世直しモノではないとわかる。
 台詞もなんか厳選されているようであり、先が期待できる予感。まどかの青髪の友達美樹さやか魔法少女になるらしい。主人公の身近な友達はそれと気付かないボンクラってのが定番なのだが、メムバーにしてしまってボケ役でもやらせるのだろうか。声優の演技も結構技を磨いているなとも感じてしまった。
 うーん、なんか言い切った感じがなくってもやもやしてるんだけど、あまり連ねても駄文の垂れ流しになるだけなので一区切り。

*1:まどかの家は専業主夫で1馬力であるにもかゝわらず、豪華な庭付きの一戸建てに住んでいる。