「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社 若手流出時代の処方箋読了

 前から気になっていたのではあるが、amazonマーケットプレイスでJPY100しなくなったときを見計らって購入。軽い本で2時間ほどで読了できた。
 そもそも著者自体が3年で外資系コンサル会社を辞めており、そしてコンサル会社を立ち上げ。対象読者層はどう考えても企業の中間管理職であって、しかも良く考えてみれば3年で大量に新人に袖にされるような会社勤めの人なんだろう。3年で3割辞める会社と聞けば、そんなもんかもとも思うのだが、恐ろしいのはそういう会社では10年経つと9割辞めているということだ。キてる。まぁそうだわな。会社としても、そのペースで辞められちゃぁ教育にコストをかけるのがバカらしくもなるし、じゃぁ教育にコストをかけないと新人が育たない会社として有能な人材が育たないばかりか、入社すらしてくれないわけで、どうやったらそういう状況を回避できるか?がテーマっぽい。
 まず、問題点を整理するというところからはじまるらしいのだが、「あなたの勤務している会社で当てはまるものがあれば教えてください。」というアンケートに対して、若手社員対象では

  1. 日常の業務に追われ、社員の育成の優先順位が低くなっていると感じる。 57%
  2. 元気のあった若手社員が数年立つと元気がなくなっている傾向にある。 40%
  3. 優秀な人材に限って退職してしまうというケースがある。 36%
  4. どうすれば給与が上がるのかが明確になっておらず、社員のやる気に悪影響がでている。 35%
  5. 新入社員(新規・中途を含む)を育成する仕組みがない。 33%

 と上位5位までがこんな感じ。ちなみに%はグラフを適当に読んだ値です。まぁどう考えても若手のやる気が削がれているような風潮ですわな。業務内容に触れていない以上、どうしても概念的なものしか出てこないような質問なんだろうが、何をしていいのかそもそも指示されずほったらかしにされて、せめて金で報いてくれるかといえば、そういうこともないというのが見て取れてしまう。
 面白いのは同じ質問を人事担当者にも聞いてみたことだ。結果が笑える。

  1. マネジャー層の人材不足・マネジメント能力不足を感じる。 63%
  2. 日常の業務に追われ、社員の育成の優先順位が低くなっていると感じる。 61%
  3. 部署や職種を超えた人事異動が少なく、人材の流動性が低いと感じる。 37%
  4. 全体の目標を意識せず、決められた業務以外には関心を持っていない人が多い。 37%
  5. 周りに自分で考えようとせずに、指示を待つだけの社員が多い。 37%

 実は若手社員の高数値順でグラフを並べていて、人事部のほうは目立たなくなっているのだが、人事部ですら苦言を呈している一番の理由が、管理職の能力不足なわけで、以上しゅーりょーって感じだ。で、管理職が使い物にならないから、もう極力彼らの騒音が新人の耳に入らないよう、一人で勝手に動ける「自律的社員」を育てちゃえということらしい。っつーか、管理職がムノーかというと、どうもそういうことを強調したいらしいのではなく、業務はきちんとこなすが、忙しすぎて新人の教育まで手が回らないという逃げ道を作っている模様。で、手間暇をかけないといけないが…とは言っているものの、実質あまり手をかけずに勝手にやらせろと主張しているような内容だった。
 なんか切ないねぇ。著者が社会人になって約10年。阪大院卒だから今34ぐらいか。氷河期の人じゃん。あれほど世の中の流動性が高いと自分で言っているのに、具体的な数値目標を自分に立てさせろとか、ポジティブシンキングの推奨とか、なんか体育会系的なアブないノリも感じられるが、書いてあることの半分はウソではないと思う。
 あと面白かったのはトヨタ5W1HのWは全部WhyのWということ。

「なぜこのような問題が起きているのか」
「なぜそれは防げなかったか」
「なぜそもそもこれをする意味があるのか」
「なぜこの方法でやっているのか」
「なぜこれを自分がやる意味があるのか」

 3行目が笑える。意味のないことはやらなくていいというのが真意なのだったら、なぜトヨタが強いのかわかるような気がする。5行目は他人に爆弾を渡す風潮でも醸成しているのか?とかツッコみたくもなる。まぁ企業・業種などでもやり方は違っていて当然なので鵜呑みは厳禁かな。内容は具体的そうに見えて、結構そうでもなかったり、注目すべきポイントは少なめ。新書ぐらいの値段だったらよかったのかも。送付手数料込みで400円ほどってのが、自分には適当だと感じた。