友崎2#9

 ポニテ娘と文学少女を天秤にかけることを決める話。うーん、やっぱり大きな構造として主人公以外の他者が主人公を社会的に成長させるための踏み台ということに強い違和感があるのだけども、なんか難しいところではある。地域社会や今や崩壊してるだけでなく、彼らの親世代が属しているであろう企業がもう疑似共同体としての機能を放棄しているので、そのなかで若者は何を寄る辺に生きていったらよいのかと考えると、こうやって社会自体を自然発生的というか袖にそこにあるものとして利用することはできず、もう人工的に作り上げていくものなのかなという気がしないでもない。この作品でも子供の成長に親がかかわるシーンは一切出てこないし、昔の作品だったらギャグとしても自分の子供に彼氏彼女ができることにウキウキな(もしくは反対する)親なんかが出てきたもんだけど、キャラはもう同世代で問題を処理せねばならず、かといってキャラ達は社会的に贈与を受けるだけの存在であって、決して社会を支える立場にはないという歪なものになっている。学校自体が社会に順応するためのスキルを学ぶトレーニングの場であったのだけども、この作品では学校が社会の規範を代表する場というよりは、もうレッセフェールで個人が自己責任で活動する場になっているのも気になる。
 なので生徒たちは自力救済という形で自分の人生を切り開いていかなくちゃならないのであり、今展開してるカップリングの話にしても、要するにメインヒロインがやってることは結婚相談所におけるコーディネーターの役割なのであって、現代という時代性からすると、もう自然発生的に恋愛をして配偶者を見つけるということは昔に比べて困難になってきてるから、こういうことになるというのも仕方がないというか、むしろちょっと上の世代だと労働者として企業に使い捨てられるのがアタリマエになってきてるので、職場恋愛の場としても機能してないし、ならば高校のうちから前もってこういう配偶者探しを始めておけよ…みたいに見えなくもない。いちおう物語だから最終的にはお互いの気が合うかどうかに収斂するんだろうけど、いったん就職して社会に出るともう組織は個人の人生プランを考慮に入れて対応してくれず、最初っから労働する機械として扱うだろうし、異性も相手をATMだの、パートナーとして相手を便利な道具として見てくるだろうから、主人公が相手を成長の踏み台にしてるといっても、当然相手もそういう観点で主人公を見てるだろうという話で、どっちもどっちということになる。まぁそういう社会の構図を教えてくれるのがオラクルとしてのメインヒロインだろうし、今回のイケメン君なんだろうね…。なんか世知辛い…。

外科エリ#8

 診療所の先輩の過去話。やっぱりストーリーとしては微妙だけども、症例やエピソードのチョイス、バランスはよく取れてる感じ。っつーか、貴族の娘が、ワガママとは言わんけど貴族として求められるものをほっぽり出して好き放題やれるのはやっぱり違和感が強いというか、逆に彼女は貴族ではなく自己決定権を持った現代のせいぜいカネ持ちの子弟程度と考えればストレスは感じないし、大勢の読者も前近代から近代の過渡期の貴族がどうあるべきなのか全く念頭に置かないで、現代の価値観で眺めているだろうから何の問題もないんだろうとは思う…。

まほあこ#9

 魔法少女チームが特訓の後温泉にゆっくり浸かるの巻。裸にされたアイドル志望がなんで前よりうまく歌えるのか不思議でつらつら考えてたんだけど、思い当たったのはアレか、KBSでやってた顧問のセリフ「やる気出しちゃダメ」ってヤツか?。アイドル志望は人にちやほやされたいから頑張らなくちゃと気を張ってるからそれで歌をうまく歌えてなかったと。それが主人公に強制されて裸にされて歌うと羞恥のあまり自分が注目を浴びるなんて考えられなくて、とにかく必死で歌ってたら肩の力が抜けてたとかそんなのかな?。
 今回味方として二人合流したわけなんだけど、主人公を撃退できず帰還してもパワハラに遭うだけなんで、それで元居たところ以外に買えるところがなければ仕方なくそこにいるしかないけど、逃げ場があるなら何も好き好んでブラックな職場に戻る必要もないわけで…。

治癒魔法#2~8

 なんか一気見した。いちおうあのまま激しいトレーニングを続けてそのまま戦線に投入される流れで、困ってる患者を治す医師の話かと思ってたんだが、どうも過酷な戦場に投入される衛生兵物語らしい。
 全体的な気持ちとしてはやっぱり自分には合わんな…という感じなのだけども、今や特権階級となってしまった医師マンセーという話ではないようなのでなんとか視聴できてるというところ。この作品が他のとちょっと違うところがあって、それは近代的価値観である自己決定権万歳物語ではないことかな。
 主人公は召喚されて希少価値の高い治癒魔法スキルをもっていたから、そこで師匠にいやおうなく連れ去られて過酷なトレーニングを課されるわけだが、そこに主人公の意志は無視されてる。まぁ主人公が逃げ出したところで自活できる手段もないわけなんで、選択肢がないどころか、まぁそのままレールに乗るのがあの場合ベストではあるんだけど、結局彼には他の選択肢が新たに提示されることなく、治癒魔法使いであることを最新話では内面化しちゃうわけなんだけども、まぁそのへん異色の作品だよなーと感じ入った次第。本当なら主人公がいろいろ体験していく中で、大切な人を失ったりしてそれを成長の糧にするというのがセオリーなんだけど、その主人公にとって大切な人は元居た世界からやってきた二人の友人だけなんで、彼らを失ったらそこでアウトになるから、その物語上大切なものを失うという要素は、師匠の過去話で済ませるんだろうなとかそういうところなんだろう。いちおう予知夢という形でその友人二人を失うのが物語のセオリーなんですよとエクスキューズしてるんだろうからね…。
 そういうわけで、別に無理に追い求めるための夢なんてなくていいんだよ、今持ってるものを最大に生かすという方向で、特に人生で突飛な選択をしなくてもそれはそれで全然かまわないんだよというメッセージ性があるんなら、それこそが本作の特長なんかなと思わなくもない。