久保さん#4

 相手の変化に気づく&VTDの話。話としては何の変哲もないフツーな感じ。ただ、前にも述べたようにこういう話が青年誌でウケてるという事実がちょっとわかんなくて、いろいろ考えていたのだけども、なんかぼんやり見えてきたような気はした。
 フツーこういう嫁取り物語は、主人公が何かしら試練を乗り越えてそのご褒美として異性を得るということになるのだけども、この作品は主人公になんのとりえもないのになぜか魅力的な異性が寄ってくるという男のドリーム全開な展開になってる。だからといって過去粗製濫造された萌え作品とは雰囲気がだいぶ違っていて、主人公が周囲に認識されないからと言って、彼の能力に他人と比べて一段と劣る…というわけでもなく、むしろほぼ一般的とも言える。で、前近代とか近代であっても昭和のある時期までは、そういう一般的な庶民は「結婚するのがアタリマエ」な社会ではあったわけで、物語において主人公が努力して嫁取りするのは、結婚はフツーにできる社会なのだけども、さらに努力してトロフィーワイフを得るという文脈になる。
 そして、今やもうフツーでいることでは結婚すらできないという社会になりつつあるわけで、そこで気づいたのが、このもうフツーであるというだけでは結婚すらできず、いずれ子孫すら残せず社会からいなくなる、つまり、「貧困の再生産など起きない。彼らは子供さえ持てないからいずれいなくなるだろう」がカジュアル化してきた世相を反映してるから…という話。個人的にもこの作品をコメディとしてではなく、もう自分の目には目映く写っていてある意味悲劇的に眺めているとすらいえる。ヒロインは作劇上、美人という風に描かれてはいるけれども、リアルでいえば特に美人でも不細工でもなくフツーの人を想定してるんだろうなという感じ。青年誌なんだから、ジャンプマガジンサンデーのように年齢層が決して低くなく、基本的には社会人を想定してると思うんで、今や若者の半数以上が非正規雇用だという話だし、彼等にとってもこれはもう決して手に届かない羨望の対象となってるんじゃなかろうか。

のんびり農家#5

 カレー作りと冬ごもり。カレーの食材であるスパイスが短期間に森をちょっとばかし切り開いたいかにも日照が足りなさそうなところで栽培できる(スパイスは熱帯性作物なので)んだったら、冬ごもりなんてしなくても別に万能農具で冬でも農作物はできるのでは?とも思うんだけど、そのへんはまぁ。
 冬ごもりでもいろんなゲームを楽しむ風景は冷静に考えたらキャラ同士の馴れ合いというか、別に誰が負けようと勝とうとどーでもいいんだけど、個人的には自分が見たかった「のんびり」の部分であったので、割とほっこりしながら視聴してた。
 しかし、外からかんぬきがかけられる部屋…って、要するにしないと出られない部屋ってことだよね。プライバシーの保護なら中からかんぬきをかけられる構造のハズだし。

砂糖林檎#5

 主人公が弟子入りの真似事をする話。代わりに働けというセリフでそういうストーリーなんだろうなということがわかったので、その限りにおいてはまぁこんなもんじゃね?という感じ。
 ただ、これも世相を見渡してみるとどうにももう時代は先を行ってるんじゃ?という風にも思える。10年前や20年前なら自分の技術を安売りするなには非常に共感してたと思うんだけど、今の日本は、高給食んでる連中が必ずしも自分の実力で稼ぎを得てるんじゃなくて、もうほぼ特権に位置してるから…とか、税金チューチューしてるから…でしかないので、その高級な菓子に大枚払えるということはもれなく搾取階級だから…という話。今回の話がよくできてたのは、貴族がいくら金を積んでも仕事は受けず、原価ギリギリのところで庶民のために仕事をしていた…というところ。
 社会が発展途上で、誰でも仕事を頑張れば頑張るほど社会全体の富が増大する状況だったら、オマエも頑張って働け、それで得る高給は正当なものと言えるんだけど、平社員が頑張ってもその成果は上司や経営層が横取り、既得権益層の特権のためにいくらイノベーションを提案しても蹴られ、かといって上級国民が社会の上層にしがみついていても経済はシュリンクするばかりで、彼らが富を得るために庶民の所得を奪う構造では頑張れば頑張るほど上級国民は肥え太るが、庶民はやせ細るだけなので、そんな中でスキルを磨くことにどんな意味があるのか。上級国民が贅沢を喜ぶ手伝いをしたところで、それは社会からの富の収奪に他ならない…という段階に来てると思うんで、なんか複雑な心境。
 自分がスキルを磨くために背一杯投資したとして、貧乏人に安売りすれば、その安価な値付けがアタリマエになり、逆に貧乏人からもなんでオマエは更に努力して低コストで贅沢なサービスをもっと提供しないのか…と逆ギレされる社会にもなってるんで…。
 現状、この作品が世相には気を遣ってるんだろうし、物語としては特に破綻してるところもないんで問題はないといえるんだけども、そういう素振りを見せたんなら中途半端に感動ポルノにされると後半しんどくなるかもな…という危惧はある。

ツンリゼ#5

 母親の登場でゲームヒロインの境遇とかいろいろ明らかになる話。今までは紹介も兼ねて順調な展開にしてきており、雰囲気的にもこのまま幸せな日常が続くと思うなよ…という不穏な空気が現れてきてるんで基本大丈夫だとはおもんだけども、もう悪役令嬢の行動原理も把握出来てきたし、解説と実況というスタイルもネタ切れになってきたかな…という感じなので、個人的には息切れ寸前みたいな感覚。
 既にできあがっているはずのゲームが、もう一度やると変化している…という状況も、柳田国男が各地の昔話を調べ上げて、同じ物語だったハズなのに各地でバリエーションが見られるのは、物語を聞いた側が次に伝承するときに自分たちが気にいるよう改変した結果といってるし、そのへん現代の二次創作に繋がる部分があるなぁとも思って、そういうこの作品のメタ構造的な部分も面白いといっちゃぁ面白いんだけど、それだけだからなぁ。まぁいちおう作品の前提条件を語り終えたぐらいのタイミングだろうから、物語としての面白さはこれからと思うし、今後の展開に期待といったところかな。

草ドラ#1~5

 ビリビリ制作のなろう原作アニメ。前にも言ったけど、半分ぐらいは大陸版を視聴済み。
 やっぱり意味が掴めるとわかりやすいというか、セリフの細部が分からない状態ではもっとコメディ寄りだと思ってたんだけど、日本語版だとなんか全体的にしんみりした雰囲気に感じた。前にも原作の漫画化版を読んだ時も、メインヒロインが言うことを聞かずに突っ走る…という雰囲気だったような気がするが、今回視聴した限りでは、もう彼女は主人公に頼るしかないし、実際に拠り所にもなってるんで状況自体に違和感はない。主人公は@芳忠さんだし、ヒロインは@悠木碧だから、両者ともベテランだしハマり役だとも思うんだけど、なんかぎこちない気はする。このへんよくわからんのよなー。確かに大陸アニメの間の取り方は独特だったりするんだけど、最近の作品はそういうのあんまり感じなくなってたしなー。