のんびり農家#8

 杜氏とドラゴンの娘、隣国の人間の娘が加入する話。なんかまだまだ国が機能向上する話だった。前回書き忘れてたんだけど獣人の娘が「移住」してきたといってたけど、要するに娘たちは主人公に対する贈り物だよなー。手をつけてくれて子供でも生まれたら関係性が強化されるのだし。男を送れと言われて獣人側は困ったに違いない。で、送ってきたのが子供…というのはおそらく獣人の村の生産性が低くて子供が労働力として使い物にならないからだろうなと考えてみる。
 そうなると、杜氏はともかくドラゴンや人間の娘が滞在するのもそういう意味だよなー。子作り目的で仲間に加わったハイエルフは最初っからそうだったわけで、なんかこの作品下半身方面の話はどうも原作より改変してマイルドにしちゃってるようなのでぱっと見わからんかった。
 んー、なんかここに至るとあんまりリアリティがどうのとかいうのは野暮だなーみたいな感覚になってきた。部品をくみ上げて模型が完成していく様子で、主人公が国を充実させていくみたいな楽しみ方が今のところ出来てるかな。あと、主人公は俺TUEEといっても、実際に力の根源は万能工具であって、まぁチートと言われたらそうなんだけど、むしろ主人公のこの物語での強みはマネジメント能力部分なんで、彼の飄々とした態度にもマッチしてるし、タイトルののんびりというのとも相性が良い感じ。
 あと、主人公は国民に富をもたらしてるわけで、そのへん民から富を奪ってる本邦のありようとはいったい…みたいな。そういや中国の古代の王の武器としては斧が最上のものとして挙げられてるんだけど、万能農具はそういう立ち位置だよな。木を切り倒し森を拓いて生存圏を拡張する。それが王の武器として剣が上げられるところ、例えばアーサー王伝説なんかは典型的だと思うんだが、剣って基本的に人殺しにしか使わないから、要するに他の民族を殺してその富を奪い取るって記号なんだよね…。

砂糖林檎#8

 以来の砂糖菓子を完成させるの巻。ナニコレ?、前回あたりの流れだと状況に流されるままやっとのことで形にするのかも…とか思ってたんだけど、いろんな歯車が一気に組み上がって最高のカタルシスが得られた感じ。主人公が依頼主の話を聞きながら菓子を作るという仕立てもよかったし、それが情報を得るための最善の手段というだけでなく、依頼主を精神的に癒すためのカウンセラーという役割も主人公は果たしていて、そこに菓子を作るための職人の妥協は一切ない状況。いちおう脅されて菓子を作らされるという形になってはいるが、この機を逃して失敗してしまえば、二度とこの依頼を受けることが出来なくて、主人公は強迫観念という追い立てられ方ではなく、最高のモチベーションを盛った状態で仕事に取り掛かることのできる絶好の環境なわけで、いくら相方にやめろといわれても、いやいやこの状況こそが最高の状況でしょ逃げるなんてとんでもないみたいな。おそらく主人公はあの時脳汁ドバドバ出てたハズwww。しかも主人公と依頼主は妖精を人格として決して差別しない同志のようなもので、依頼主はともかく主人公が相手に対して悪感情を持っているどころか、どっか通じ合っていると思ってたハズ。
 こうなると別に前回までの作品ドロボウくんのエピソードは要らないような気はする。もちろんそれだけ依頼が困難を極めるということを示すのに効果はあるとはいえるのだけども、もともと彼は力不足ということが示されていたわけで、まぁフツーに前回述べた通り、彼は主人公に借りを作った…という仕込みなんだとは思う。
 今までおとぎ話の形式を使いながらポリコレ的主張を混ぜ込んでる程度の生温さを感じてたんだけど、こう、作品の完成までいろんな線が一気につながっていくような快感が今回はあった。でもまぁ構造としては包丁人味兵とか美味しんぼだとか、料理を通じてトラブルシュートを行う料理漫画の系譜に連なってるといえばそんな感じかも。
 しかし複雑な感じ。今、急速に日本は貧困化がすすんでるわけで、貴族専用に職人が手を尽くすという話は今後共感性を失っていきそうな予感がするから。庶民が飢えてなければ、上級国民がカネに糸目をつけずに職人に腕を奮わせる…、その商品が決して庶民の手に届かないものであっても、それはそれで構わないんだよ。でも、庶民が飢えているのに、上級国民が贅沢な商品を自分専用に作らせる状況になったら、それは国民全体が豊かな時と比べて、上級国民が貧困層に対して行うマウンティングという要素がどうしても入っちゃうので、まぁいうなればマリーアントワネットの貧乏人はパンが食えなきゃケーキを喰えと言った瞬間の庶民の怒りにも似た感情が巻き起こる。ましてや今は日本の上級国民は自分が贅沢するために貧乏人から苛烈な搾取をして贅沢三昧なのだから尚更。貧乏人にしてみれば、オレ達が食うに困ってるのにさらになけなしの富を奪って食う菓子はそんなにウマいか?ってなもん。つくづく嫌な時代になりつつあるねぇ。

ツンリゼ#8

 心の闇に悪役令嬢が負けそうになったのだが、何とか持ち直す話。んーなんとなくわかってきた感じ。もっと素直になれよ…とずっと思ってたのだけどもそうじゃなかったんだな。彼女の夢に出てくる魔女は彼女が彼女自身を抑圧し続けてきた結果現れたもう一人の彼女なのであって、いやまぁ漫画でよく出てくる自分の中に現れる天使と悪魔みたいな感じだとはずっと思ってた。悪役令嬢は父親に、王太子のことが好きでもその感情を表に出してはいけないと言われ、幼少時の彼女もその理屈を理解していたからこそ今の今までそのように振る舞っていたわけで、解説と実況の登場で王子の態度が急に変わったからと言って、その思いにこたえてデレデレになってしまうことは、要するに「それまでの自分を否定すること」になってしまうわけか…。まぎらわしいのは、自分が王子のことを好きであることに素直になる⇒欲望の表出、好きだという気持ちを態度にあらわさない⇒理性なのであって、上記の自分の中の天使と悪魔でいえば、あの魔女はおどろおどろしい見かけとは逆に理性、つまり天使側だから話がややこしくなってるわけね。それまでの自分の有り方を肯定するためには王子の行為が見せかけのものであるはずだという合理化が、彼女が彼女自身を抑圧した結果の結論になっていて、最後の王子との対話の途中までは、結局彼女が自己完結する、つまり嫌うわけではないが王子を拒否することでとりあえずの心の安息を得る…と思ってたら、王子がパーソナルスペースにふみこんで…という展開。今まで悪役令嬢はよくある女のヒステリーだとか、マリッジブルーのような一時的な不安かも…と思ってたから、ちゃんと理屈立てされててようやく納得といったところ。
 とはいえ、これで解決したわけではなく、魔女との対決がまだ残ってるようで、ならその見せ場ではどんな心理的な裏付けがされてるんだろうな…。しかし、解説と実況というスタイルを取ってわざわざ心理的説明をさんざんしておきながら、肝心のところはスルーというか隠してるのだから意地悪な構成だよなー。

バディダディ#8

 黒髪主人公の事情の巻。殺し屋家業を足抜けしようとしても許されず追手が来て殺される…なら前回の金髪主人公もなーるほど…とはならんやろ!みたいな。こう、物語的には殺し屋はたとえ殺す対象が悪の権化でも彼の幸せどころか命まで殺し屋は奪ってしまう因業な商売をやってるのだから、まかり間違っても殺し屋自身が自分のやってることを棚に上げて自分だけは幸せになってはいかんだろーというのが通すべき筋なので。なので、前回の過去話、やっはり金髪主人公はそもそも結婚すべきではなかったし、こともあろうに子供まで作ってたのはオイオイ…みたいな。なので、やはり金髪主人公が結婚した段階で今回の黒髪主人公が殺した相手のように足抜けを試みなければならなかったし、その挙句殺されるべきだったというしかないという感じ。で、現況はかつて結婚した相手とその腹の中にいた子供の代償としてょぅι゛ょを育ててるっぽいので、オマエなんもわかっとらんだろー*1という。黒髪主人公の父が息子を連れ戻すためにょぅι゛ょをターゲットに…という以前に、もう物語的にはょぅι゛ょとは悲しい別れを運命づけられてる…べきなんだけど、今までのシナリオがご存じの通り横紙破りばっかだからなぁ。
 なんやろ、今回の黒髪主人公が命を受けてかつての師匠を殺すというエピソードも、師匠の恋人を殺した時点でもう師匠にとって生きる意味がなくなってるわけで、対面して恋人の運命を知った時点で、もうその後のバトルシーンをする意味がないという。いちおうシナリオ上の役割としては黒髪主人公に生きる意味を問いかけるという意味があるから全然ダメっていうわけでもないんだけど、まぁなんというか、今になってもご都合主義の三文芝居の域を出んわな。

*1:嫁を殺したのは自分だと思ってるのなら尚更