恋愛フロップス#12

 主人公が社会復帰してEND。あー、HEにはしなかったのね…。幼馴染の脳コピAIが社会インフラ維持のための道具として使われているのに耐えきれなくなったという、AI=奴隷労働者のメタファーみたいな要素は結局無かったといっていいと思う。
 こうやって終わってみたら、親密な心のつながりをもっていた幼馴染が不治の病で急逝してしまい、主人公が社会生活で機能不全を起こしていたのを、VRで幼馴染の脳コピAIをベースとした恋愛型AIと疑似共同生活を通じて「癒された」という物語になっていた。クライマックスの幼馴染の脳コピAIが、アレ、自分の想定しているように幼馴染の脳コピAIなのか、それとも既にこの世にいない幼馴染の残留思念のようなものと考えるかでちょっと解釈が変わってくるものの、しかしそこはあまり重要ではなく、結末は主人公に新しい「人間」の恋愛対象はできておらず、しかもサブヒロインズAIが素体を得て主人公に侍るようになっていたから、主人公に「人間」の恋愛対象はおそらくこれからもずっとできないだろうという示唆で、これは悲劇ではないまでも、sad storyの部類で終わったと思う。
 しかしこれもまたちょっと難しいところで、主人公はあの年齢ながら、長年連れ添った妻と死別ぐらいの、もう自分の半身を失うぐらいの精神的に深いつながりを持った相手との別れはかなり辛い衝撃という描かれ方だったから、もう生身の人間では到底いやすことができないからあのAIが生涯連れ添うことになってもそれは解決としては最善と考えるべきか、いや、それでも時間が立てば悲しみも薄れるのだから、機会が訪れればやっぱり生身の人間と向き合う必要があって、実はAIロボットの存在は彼が現実と向き合うための障害になるんジャネーノという見方もできて、どうにも判断をつけにくい。前にも言った通り、人間同士のコミュニケーションではいいことも嫌なことも両方あって、そういう体験を繰り返して自分なりの対処方法を身につけてきたしそうあるべきとされていたのだけども、人間の気持ちを理解し不快さを感じさせないAIが仮に開発されたとすると、人は生身の人間とのコミュニケーションのわずらわしさを嫌って、そういう高性能AIに依存することになると思うんで、この作品の結末はそういうディストピア社会の到来を暗示しているようでもいて、個人的には単純なHEにしなかったこの判断は正しいと思ったという。
 物語としても、主人公が結果的に癒されたのも、彼に働きかけたAIが幼馴染の脳コピAIだったからで、これが脳コピAIであっても主人公と共通の体験や感情を経験として持ってない他人のものをベースとしていたらおそらく不可能だったと思われるので、いわゆるワンオフという設定が上手く活きていたと思う。構成としては前半が萌えラブコメで、全体としては気持ちを伝えあう前に夭折した相手と、最終的には(おそらく疑似的に)通じ合えたという切ないラブロマンスというものだったから、要素としてのエピソード的にはそう新しいものでもなかったんだけど、展開の妙やAI技術に対する展望やメリット、懐疑などを織り込んで視聴者を飽きさせず、行間を読めばいろいろ考えさせる要素が満載というシナリオは個人的には評価したい作品といった感じ。

陰の実力者#13

 メインヒロインによる聖域調査の終了と、主人公の見せどころか?でヒキ。ここに至っても水色ツインテのネタで引っ張るかーと、ワンコのマッパ寸前のギリギリ描写とか、フェチ度高いなといった感じだが、いろいろ盛り上がって飽きることはなかったな。
 なんつーか、敵が悪魔憑きの少女を実験に使い、彼女たちの未来を奪って寿命を延ばす=権力が永続するために彼女たちを消費するという形であり、あの世界は何のかんの言って剣と魔法の世界だから、悪の組織が近代的装置で埋め尽くされている=現代の権力構造のメタファーでしかないから、フツーに考えてあれは自民盗の似姿。ただ、偽装が上手いというか、そういう社会批判要素はちょっとではそれと気づかれないようになっているので、さらっと上っ面を撫でるだけではありきたりな勧善懲悪モノにしか見えないように作ってあるよね…という。
 次回あたりが中盤のクライマックスと考えると、その次ぐらいから終盤に入っていくのかな。おふざけ要素とか中二病なスタイルをこれだけ織り込んで、それでなおメインシナリオに集中させられるし、そう矛盾を感じさせないようになってると思うんで、やはりなかなか大したもんだなーという印象。