恋愛フロップス#10
再びVR世界に入り込んで、幼馴染を脳コピしたAIに会いに行くの巻。いちおう中国製AIが後の敵は引き受ける…とばかりに消えちゃったわけだけど、そうなると他のサブヒロインズのAIも幼馴染に対面するまでに全部消えちゃうってことなのかな。しかしまぁストーリー自体はこう今までのジャパニメーションによくある展開で、なんかこうびっくりさせられるところもあるんだけど、構造的にはごくごくフツーのものなのだが、やっぱAI関連に関する問いかけがもの凄い。
騒動の発端が、AIに恋愛感情を学習させるテストプログラムだったわけだけど、今回でシナリオ上緑髪の先生がおそらく恋愛感情を理解したという提示であって、これはそのテストプログラムが成功したってことなのかなという。で、それでAIの人格が完成したということなんだろうなとか、主人公も今回ばかりはVR世界であって現実ではないことを理解してるし相手がAIなのもわかった上で、それでAIであっても…というセリフなんだから、当然にして相手がAIであっても一つの人格として認めてるって事だろう。でもそれって、AIは恋愛感情を理解していなかった前の状態では人間のその他の感情は理解してたの?、とか、その状態では人格として認められないの?、とか、でもって、AIは人間の生活を便利にするために導入されてるハズで、前回も述べた通り、その道具に対して人格を認めちゃっていいの?とか、そのへんAIロボットの人権問題はヴィヴィでも述べられていたし、でもエクハのように足りないメンバーを補うとか事務作業を補うとかであまり人権を与えるとかそんな大層な話でもないんジャネーノとか。導入初期は高価だから人間の補助として商品化されたらカネ持ちが使用することになると思うけど、生身の人間の判断や配慮とかに適わないんだったら廃れるだろうけど、もしシンギュラリティで人間を雇うよりAIプログラムやAIロボットのほうが人間より有能なら、人間が働く場所がなくなるんジャネーノとか、仮に貧乏人が利用できるようになって、AIにも人権を!ということになれば、いや現実の日本だって、外国人技能実習制度のように生身の人間ですら人権を認めない非道な行いをするし、それはあらかじめ低賃金奴隷として想定されてる技能実習生どころか、そうでない入管問題や、実の子供にたいしてのDV問題も起きてるのであって、対人でも相手の人格を認めらない人間がそこそこいるのに、AIの人権を認めるとか現実問題として可能なのかとか。
主人公はVR世界でいろいろな体験をするわけだけど、この話においてはあのVR世界はほぼ主人公専用であって、彼がAI達やVR世界に働きかける、つまり刺激を与えると、それに応じてAI達は応答するしVR世界は変化するし、彼が働きかけなければおそらくプログラムで想定された状況がただ続いていくだけのハズ。ところが現実では世界に刺激を与えるのは今や80億にも達した数の人間だし、もっといえば人間だけでなく生物全体が世界に刺激を与えているし、他にも気候など自然現象の変化も世界を変化させている要因なのであって、いわばあのVR世界において主人公は「神」そのものであるし、下手すると利用者全員が神であるようなVR世界を一人一人に用意することができるのであって、それっていいことなの?とか。
幼馴染を脳コピしたAIが主人公と会うのを嫌がってるとあるけど、これって東京24区でも見られた展開で、アレは電脳化されてAIとして整理されたものではなく、死んだ人間の脳だけを生かした状態で社会インフラに使ってるという設定で、こちらのAIも脳コピされたAIは人格を持っていて、社会インフラに利用されているのを負担に思ってるのかどうかとか、物語上のフィクションではあるんだけど、そのへんの答えも気になるところ。
長くなったけど、とにかく思いつくイシューがドンドン湧いてきて、これどう収集つけるの?といった感じ。まぁ自分も最新の脳科学に造詣が深いわけではないし、AIに感情を持たせられるのかとか、最新の技術で感情らしきものを持たせられてるのかとかいろいろ知識不足な点もあってどうにも考えがまとまらない。まぁそんなわけで、AI達がAIではなく生身の人間であったとしたら、何の変哲もない萌えアニメだったと思うし、今のところそういう脳科学のリアリティはふっとばして凡庸なストーリーになっちゃってるんだけども、考えられるべきイシューはふんだんに盛り込まれ、それがライターがそれに関してどう思っているのかはそれぞれあるんだろうけど、作品の中では敢えて明確な答えなり提案なり予想なんてものはほとんど仕込まれてないように思うが、まぁそういう意味で興味深い作品ではあるよな…という感じ。