メイドが怪しい#9

 ギザ歯メイドがヒロインを取り返しに来るが、見極めるつもりが主人公の格に圧倒される話。ツンデレな上にドジっ娘なので属性の被りに眩暈がする思い。
 しかしなんなんコレ?といった感じ。正直なところ、自分も高校生の頃は夏目金之助の坊ちゃんなんて直情径行型の主人公、今でいえば発達障害とでも称すべきキャラが、直線に思いっきり走っていってぶつかったら方向転換してまた全力で直線状に走るという、爽快と言われたらそうかもしれんが、割と深みのない作品だと思っていたので、こうやって年を取って実は奥が深かったんだなと思い知らされるのは、なるほど文豪と呼ばれるだけのことはあるという。夏目版の坊ちゃんは赴任先の話が長いから、清との話なんて最初の坊ちゃんの気性を紹介するための単なる脇役…というか、そういう意識すらなかったわけだが、実は坊ちゃんと清との関係性こそ夏目が「近代とはどんな時代なのか」というテーマを示した部分であり、読者に意識させない形で行間に込めた部分なのでは?というのは前にも散々述べた通り。前近代は、例えば農民なら一生農民として生きていかなければならず、職業選択の自由もなければ場所移動の自由も実質無く、与えられた役割というかイエのありかたを踏襲しなければならない時代であって、近代とはそうではなく、自己決定権が庶民にも与えられるという時代でもあり、ただ、人々の意識は急には変わらないから、自己決定権を行使するキャラを描いていわゆる啓蒙的な要素が込められていた側面もあるんじゃないかと思ってる。高校の教科書でも取り上げられていた森鴎外舞姫のヒロインの生き方も然り、アレも作品の結末は主人公が逃げ帰るという形になっているが、ドイツ留学をした森林太郎には日本まで追っかけてきたエリスが実際にいたわけだし、そのへん割と人々の考え方が大きく変わろうとしていた時代であった。
 その中で、夏目がこれまたミスリードかましてるわけだが、

ただ清は昔風の女だから、自分とおれの関係を封建時代の主従のように考えていた。

 よく読んでみると清は別に下女をやらなくても頼るべき親戚がいたわけだし、別に食うに困ってそれで働き先を確保するために坊ちゃんにしがみついていたわけでもない。まさに彼女は坊ちゃんを指名して自己決定権を行使して彼の下女をやってたわけで、さて、今回の話である。
 ヒロインがメイドをやるというのは、他に働き口がないからしかたなくでもなく、主人公が子供であってもそれで尚彼のところで無給であっても働きたいというのは、ヒロインが自己決定権を行使した結果なのであって、これは夏目の坊ちゃんが赴任先から逃げかえって清と(彼女が死ぬまで)仲良く暮らしましたメデタシメデタシのところを既に達成してる状態になってる。ただ、今回の話がちょっと面白かったのは、ヒロインが自己決定権を行使して主人公と心を通わせました…というのではなく、他のキャラを絡ませて、あのギザ歯の気持ちはどうするんですか?とおそらく問いかけていると思われること。社会の全員が自己決定権を行使した結果、コンフリクトが生じたらそれはどうするんですか?、もしそのコンフリクトが重大なら自己決定権は制限されるべきなんじゃないですかという問題をはらんでるのではないか…ということ。ただ、もう答えが今回で出ちゃってると思うんだけども、それは当事者同士ですり合わせを行うなりして解消すればいいでしょ、その努力は必要ですねとか、そういう方向性。自己決定権が制限されていた明治時代なら、まずそれを獲得すること、もしくは庶民にも自己決定権があるということを啓蒙するという段階で済んでいたのが、実際に自己決定権があることが周知され、各人がアタリマエのようにそれを行使すると発生する障害というのは、もうこれは昭和の後期になってから意識として顕在化してきたことなのであって、この作品は夏目の作品よりもう一歩踏み込んだ議論をしようとしているのであれば、これは単なる夏目の作品のオマージュにとどまってないよね…とかいうそんな話。いやまぁ江戸時代だって勝海舟のように裕福な商人が士族株を買ったり、功績ある者は二宮尊徳のように苗字帯刀を許されたりして士分を得た者もいるわけで、決して生まれた身分から逃れ得ないわけでもないんだけど、そんな稀な例を出してもなという。
 というわけで、のんびりした話かな…と前回までは思ってたので、なんか今回ちょっと目が醒めるような思いをしたというか、まぁそれほど強い主張をしてるとも感じないし、そんな視点を持たなくても萌えアニメとして全然楽しめるとは思うんで、なんか偶然自分のツボに嵌ってしまったとかそういう感じ。

文字通り「払底」

 本日からイベントが切り替わって、PUのエロコスに惹かれて盛大に回してた。

 初っ端に「跡地」の画像でなんだが、30連もまわせばSSR一枚来るだろうからそこで止めるつもりが、結局手持ちの石もチケットも文字通りなくなるまで回してた。イベントをやってみれば個人的にはシナリオが好きではないランス編なので、どうしても入手したいユニットでもないんだよな。
 石は880ほど、チケットは10連が11枚、単発チケは10枚はなかったと思うが、5枚程度ぐらいはあったので、合計200連ぐらいのハズ。結局出たSSRは既に持ってるのも含めて5枚なので、やはり排出率3%には達してない。ただ、持ってないユニットが四枚、一枚はレジェンドの残り一枚が来て、これで三色揃う。出撃時50%UPのバフがつくらしいから、これで戦士/忍者/神騎のどれにもバッファーがついて、レイドイベントには重宝するはずだが、そこそこ強化してるユニットはゼブたんのたった一枚なので、バッファーだけがいてもなぁという。
 今日の10:00までランスシナリオのⅡで、16:00のメンテ明けからⅢの、復刻と新奇がシームレスにつながる形なんだけど、上記の通り、自分パッケージ時代のランスもやってなくて全然思い入れもなく、シナリオもあんまりなぁという感じなのでまだイベントシナリオは強制で見せられる開幕以外は空けてない。自分の欲望に忠実で、豪快なキャラクターというのも、エロゲだと、こう陰キャのオタクが「こうなれたらいいな」と仮託できるキャラクターでもあるんだけど、ⅠとⅡを呼んだ限り個人的にはフックしなかった。どっか壊れた人間を描くのに長けていると思ったんだけど、これはそうでもなかったなぁ。