ファ美肉#9

 姫が出てきて魔族退治に連れてけと言われる話。前回のようにネタが滑ってるわけでもないし、話自体は進んでいくから退屈はしなかったけど、かといって何か面白いというほどのものでもなかったかな。なんつーか、思春期っていうのは贅沢病なのではと思った。前近代で、貧しかった庶民なんかで思春期を発症したって話を聞かないからなぁ。貧しい家庭の娘はむしろ勤勉な働き手のような印象が強いし、成長しても奉公に出るとか他家に嫁に行くとかだろうから、わがままいってちゃ引き取り手がいないだろうしな…。この物語でも思春期をこじらせてるのは若い女って形になってるのも、この恵まれた時代、自己決定権を与えられていて昔と比べりゃありがたい限りなのにそれを無限増殖させることに精一杯で、他人からはいつまでもお姫扱いされたいという、そういう層に対する皮肉なんだろうというか。

リアデイル#10

 ゾンビに襲われた原因を探ってトラブルを解決する話。うーん、前回原因がプレーヤーなのでは?とか言ってたような気がするのだが、単にリアデイルの過去イベントが発動してしまったぐらいの処理で、確かにプレーヤーは出てきたのだが被害者という立場。
 前回絶大な力を持つものはその権力を如何に使うべきか?というのがこの作品のテーマなのでは?というのが頭に浮かんだので、そういう視点から視聴してたのだが、主人公はもともと運営に関わってるという話だし、廃村をどう扱うか?、孤児をどうするか?あたりを見ると、やっぱりそういうテーマはありそうって感じ。日本の前近代でも幕府や各藩の上層部あたりも、ちょっと気の利いたリーダーは領地を自分の足を使って見て回り、施政に反映させてたのもちょくちょくいるので、そういう肌感覚をもとにした権力の使い方なんだろうとぼんやり考えてた。
 今回再会したプレーヤーとも情報交換してたが、2年前にこの世界にという話だった。こちらもやはり現実化したゲーム世界に転生してきたという構造みたい。で、リアルでは死んでる主人公はともかく、他のプレーヤーはログアウトしようと努力したという形跡が見当たらない。でも主人公以外の塔の管理者は、もう既に来なくなったという話みたいだから、こちらはリアル世界に戻って現実化したこのゲーム世界にはいないって話なんだよね?。

オリエント#10

 赤髪が自分の内にいる女神に認められる話。あーなるほど、これがこのアニメシリーズ一番のメッセージっぽいな。まぁなんというか、武士の一人一人は目的としていちおう対鬼という立場で一致してるんだろうけど、立身出世を望むものとかフツーに大量にいそうだし、そんな単純な団結みたいな話にはならんだろうとは思うんだが、ただ、今まで話を積み重ねてきて、仲間内でいがみ合ってる場合ではないみたいなエピソードを繰り返してきたから、カタルシスを演出するちょうど良いタイミング。メインキャラはまだ武士団と言えるほどの規模では全然ないし、鬼退治もまだ手付かずみたいな状態なので、1クールでこれは物足りないんじゃネェの?と思っていたから、今回の話で、あーこれならちゃんと一つの話としてまとまってはいるなと少々感心した次第。

ハコヅメ#10

 警察手帳と交通事故の話。自分の机だとか、メガネだったらかけてるのを忘れて探してたみたいなうっかり顛末かと思ったら、そこそこ真剣実のある話だった。でも無くした事実が発覚した時点で懲罰は免れないというのもどうなんかなという気がしないでもない。ただ、見つかったからよかったよかったではフツーに隠蔽になってしまうからそうもいかんのだろう。現実の警察ならもっと違法性の高い隠蔽はいくらでもやってるって印象は強いのだが。
 他の作品でもぼちぼちカタルシスを感じさせる話が出てくるタイミングなんだけど、これもそうなのかも。命の重さを考えさせる展開なんてそういや今までなかったなという感じ。そんな衝撃的な話運びでもなかったんだけど、重く漂う雰囲気は自分にも伝わったからそういう意味では成功といってもよいのだと思う。

24区#9

 あの管理監視システムに繋がる親世代の過去話。今まで取っ散らかってた話がつながっていくという意味ではよくできていたんだけど、なんか根本的にこれはどーなの?という疑問がどうにも頭を離れなくて困った。
 というのも自動運転実験中の事故の話。事故を回避するために誰を犠牲にするのかを判断基準にしてるのワロタ。
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 これ、現実社会だと運転免許を取る際に、事故の起こりそうなところは「徐行」し、ハンドルを切って事故を回避するのではなく必ず「ブレーキを踏め」と言われるから。そういや東京オリパラでも自動運転車が選手をしゃいで怪我をさせていた事件があったが、あれも選手村という交通が混雑してない特殊な場所で、しかも事故が起こりそうなら緊急停止するというスキームを発動するようになってるわけで、今回の事故を見てこりゃアカンわと思ったのもそういうとこ。ちなみにオリパラでの事故はオペレーターが乗っていたのに何もしなかったという。開発は、あのプリウスロケットのトヨタだし、日本の自動車産業は日本国民にベータテストをさせて機能を向上させて海外に輸出していたのだから、あのオペレーターもわざと事故を見逃して実験データを取ろうとしたのだろうが、まぁさすがにそれを自白するわけにもいかんよな。まぁ本編でも重大な欠陥があると言っていたが、そりゃあの事故見てたら大抵の視聴者もその欠陥が何かおおよそ予想がつくというもの。で、あのカネ持ちのヨメになった研究者もそりゃ断念するわなという。
 で、あのカネ持ちも最初は理想に燃えていた…という設定で、まぁ現実にはそんなことありえんでしょとは前にも言った通りなんだけど、これは悲劇だろうと喜劇だろうとそれなりの物語なので、さすがに物語の格調を高めるためにもそういう設定にせざるを得んでしょ…という話。
 ただ、やっぱり特権階級が監視管理システムを社会の向上という理想のために…という設定自体が現実社会ではもうお花畑にしか映らないんで、どうにも作品全体が子供騙しのように感じられてどうにも。そこらへんやはり同じエロゲシナリオライター出身の虚淵のほうが思い切りがいい。
 ずっと前に自分が中国の喀什や烏魯木齊など旅行に行ったとき、町中といっても交差点あたりに監視カメラが取り付けてあったので、あー前評判通りだわと妙に感心してたところ、帰国したら東京だか大阪だかも町中監視カメラだらけでワロタという経験をしてる。その監視カメラも犬HKに言わせてみれば、あれは「防犯カメラ」というらしいが、実際のところ防犯カメラなら四六時中映している映像を観察している人がいて、なんか犯罪が起こりそうな雰囲気になるとかしたら警告を発するかまぁ何らかの対応をして起こりそうな犯罪を未然に防ぐ…みたいに考えがちではあるが、実際のところ方々に設置してる監視カメラからの映像をチェックする人員を雇う余裕なんてないだろうし、実際何らかの事件報道を聞く限り、犯罪が起こってから、監視カメラに映った犯人を特定するためのシステムでしかないわけで、「防犯」という単語を使うそのこと自体がおためごかし。
 あんま長くなるのは避けたいのだが、忘れそうなので書いておくと、例えば地方の田舎なんかに住むと鍵なんてかけないのがアタリマエであって、まぁそれは誰も盗む人なんていないということなのだけども、それは基本的には田舎だと誰がどこに住んでいてみたいに身元が誰もが周知されているから、盗みなんて行えば特定が容易で、そうなればもうその土地に住み続けることなんてできないから…という要素が多分にあるのだけども、まぁそこまでギスギスした関係でなくても、単にめんどくさいみたいな感じではあるのだと思うが、それが都市では通用しない。人が集まり過ぎて誰が誰だかわからないから、それを利用して泥棒が蔓延るわけで、今となっては田舎より都市部のほうがずっと豊かなはずなのに、都市部ではその豊かさに満足できてないというか、こう、同じ地域に住んでいるのだったらその住人同士で助け合おうとまではいかなくても、せめてお互いを傷つけないようにしていこうというゆるやかな共同体、もっといえば社会の構築に失敗してるわけで、これは学校だけでなく都市部全体での近代市民の育成に失敗してる。田舎なんかよりよっぽど便利で豊かなのに、住んでる人同士が信用できないから実際に自分が東京もしくは大阪が監視カメラのあまりの多さにびっくりしても、都市民はそれがオカシイと感じないし、むしろ積極的に設置を求めたりする。そしてこの作品でも選挙で監視管理システムに賛成する愚民を描いていたし、そのへんはライターもわかってこうしてるハズ。で、現実社会の監視カメラも極論すれば上級国民の財産を守るためだし、なんとはなれば、特権階級はそもそも自前で監視システムを設置して、不審者が侵入しようとすればそこでアラームが鳴ったりなんらかの防衛システムがすぐに作動するようになっていて、真の意味での防犯カメラになっていること。でも交差点に設置してる監視カメラなんて防犯の機能は全くないわけで、これは万が一特権階級が傷つくことがあり、犯人の容姿を記録したり、その逃走経路を特定したりするために存在してるといってよい。もっと酷いのは総理大臣をやめたのに、未だに税金を年間何億も使って警備させてるアベなんかがいい例。
 首都圏はもう日本全国の地方から富を収奪して豊かになっているし、では首都圏民のすべてが地方からの搾取でみんな豊か?というと、逆に都市部こそ格差は酷いのであって、そういう搾取構造に目を向けずにヒーローごっこをやってるというのがもうオカシイのであり、で、特権階級が社会の向上のために監視管理システムを稼働させるというのもリアリティからすると噴飯モノではあるのだ。ヴィヴィが人のために働くロボットという仕立てながら、結局アレは非正規労働者が現実の日本では三等市民、もっと言えば奴隷として使い捨てられてる現状をアイロニーたっぷりに描いたものだったように、これも行間を読めばもっとそれがはっきりとした形になって現れるというものだったらもうちょっと楽しめたんだがなぁ…という感じ。