天才王子#9

 妹への求婚はなし崩しにできたが、本人が暗殺されかけて町中が混乱の渦に叩き込まれる話。うーん、腹の読み合いの部分はそれなりに楽しめるんだけど、今回は粗が多いのか、もしかすると次回の展開のための仕込みのためなのか、どうにも引っかかってしまった。
 本人が毒入り紅茶を飲まされそうになったのをそれと気づいて反撃しかけるのだが、第一王子がうっかり飲んでしまい瀕死の重傷に。そこで下手人の下女を追いかける側近ちゃんを主人公がなぜ追及をやめさせたのかわからん。医者を呼ぶのは第一王子の御付きのものの仕事だし、そこで下手人を捕まえて黒幕を吐かせるのが自然な流れで、だからこそ間髪入れず側近ちゃんが動いてたと思うのだが、なんか主人公に思うところがあったのか、わざと追及をしないことで何らかの恩を売るとか理由があったのかは現段階では分からないと言っておいた方が良いのかな?。あの場にいた全員が毒殺されようとしたのは第一王子ではなく主人公だとわかっているし、ならなんで主人公が容疑者として扱われるのか。黒幕の第三王子がごまかすために街を攻めるのはわかるんだけど、そのへんの詰めが甘いような気がするが、最後までみないとこの展開にも意味があるかどうか確定はできんといったところか。
 そういや主人公が皇女に求婚されてたとか第一王子は知っていたはずなのだから、妹ちゃんに求婚はそもそもありえんだろというのもそうだし、展開を激しくするためになんか矛盾が多いなという感じ。主人公の国のとなりの貴族領のバカ息子が転落死したのは、プラハ窓外放擲事件のようなバカバカしさがあったからなんとかなったけど、展開を激しくするためにありえん前提を積み重ねるのはちょっとついていけんという感じがしてきた。

わしかわいい#9

 また新しいお使いに出かけるが、途中の砦で若者たちの魔物退治を手伝う話。ちょっと今回の話は雰囲気が違ってた。もう終盤に入ってるわけで、今まで俺TUEEE展開といっても、それはそれは単調だったから、そろそろこの作品ならではの魅力の部分が出てくるだろうという気がしてるのだが、かといって今回がそれほど特筆するものがあったかというとそれもちょっと違うような。
 今回よくできていたのは、砦の若者たちにとっては主人公は得体のしれない人間なので、そういう未知のものに対してどう接するか?という部分。まぁいつもの俺TUEEEな展開で絵圧倒的な強さを見せつけるのだが、それで本当に信用してよいのか、信用するにしても自分たちの力量を鑑みてどこまで全力を出してよいものかなどの、期待や不安の部分が良く表現できていたというか。ただ、それは人間の感情とかを表現してるのであって、メッセージとしての強さはそんなに感じないというか。今回の話だと、主人公は若者たちの魔物退治の御膳立てをするという役回りのハズが、いざ魔物が襲来するとほとんどのぶぶんをやはり主人公がやってしまうワケで、いやまぁ未熟なものが最初の一歩を踏み出すためにも、実力あるものが配慮して、できるだけ成功体験をさせてやるために臨機応変に支援するってのはそりゃ確かに正しいんだけど、視聴者としてはメインストーリーを楽しみたいのにサブストーリーに注力されてもな…という感覚。構造は、戦い方を知らない村人たちに野党からの襲撃に耐えるよう流れ者たちが指南する、それこそ七人の侍と同じなんだけど、やはり本家黒澤明にはかなわないなといった感じ。
 ただ、よくわからんのは、こんなの作者の胸先三寸でなんとでもできるんで、やろうと思えば主人公は本当に下ごしらえ程度の手伝いしかせず、戦いの大部分を若者たちが担って魔物を退治するという展開にできたはず。アニメスタッフが今回の話に落とし込むときにアニメオリジナルにした結果という風にも思えないし、若者たちの寄与度は極めて低いんだけど、それでも魔物を退治したという成功体験こそが大切なんだというメッセージと受け取るのが自然のような気はする。まぁ子供がいろんなことに興味を持ってやりたがるんだけど、到底自分ひとりの力ではできなくて親が手伝ったりし、それこそ親の手伝いの部分が大きかったりするんだけど、子供にとっては自分で作ったという事実が、次のステップに繋がるとかそんな感じ。そしてそれは子供だけでなく、大人の世界でもそうで、例えば成果主義全盛のこの時代であっても、なにか成果を上げたのは自分の努力の結果でと天狗になってる人間がいても、会社などの組織では周囲の人たちの目に見えない支援が、その天狗君の成果繋がってるとかそんなの。
 あと、気になったのは今回「元」プレーヤーだと言ってたこと。これから推測されるのは主人公共々、かつてこれをゲームとしてプレイしていた人たちも、もう現世とのつながりが切れてどっぷり異世界転生してしまってるのでは?ということ。主人公はアバターが切り替わるときにどうやらそうなったようなのだが、どうなんだろ?。自分が不思議に思うのは、もしそれを自覚しているのなら、現実社会に戻れないという衝撃とか悲しみ不安みたいなものが一切描写されてないのがよくわからんといったところ。リアデイルの場合、主人公は現実社会では死んでしまってるという設定だから、なら元に戻ることに執着するという要素は必要なく、あの世界で前向きに生きるということが内在されているわけなんだけど、この作品の場合どうなんだろ?みたいな。主人公の場合そのことに無自覚でいるということなんだろうか?。自分だったらログアウトできない事実に焦るなりして、なんとか現実社会に戻ろうと努力すると思うんだよね。それがないということは現実社会に一切魅力がなく、そのことを忘れてしまうほどこのゲーム世界に没頭してるか、現実社会に帰りたくない何らかの理由があるとか、そういうのを想定してしまうんだけど、その辺の描写が一切ないからなぁ。