斗神姬#12

 敵を次元の狭間に追いやることができたのだが、地球もそれに呑み込まれそうになって…の巻。終わってみたら、人類の便利な生活を実現させてるエネルギーシステムは温存されました…という結末で、自分としてはその便利なシステムを失うなり制限を受けることと引き換えに敵の撃退に成功するみたいなものを予想してたので、なんじゃこりゃみたいな。
 ロボット&古代がコンセプトだったということなのだが、これもよくわからん。中国古代といえば堯舜、そして今回主人公が搭乗してる神農の時代は、基本的には神話なのであって、今遺跡が発掘されて夏王朝は存在したかも…という段階なのだが、それ以前の話。神農の時代は帝王とは民のために汗水たらして活動するという、民の暮らしを向上させたり守ったりということを期待されはするものの、基本面倒ごとばかりを押し付けられる、旨味なんて全然ないものなのであって、あー確かにAncient girlsなるメインキャラの女の子たちは、そういう立ち位置であって、この最終回のヒキでも世界全体を救った英雄のハズなのに社会的身分は全然変化がなくって、あー面倒な仕事を押し付けられた…って意味では確かに中国古代の帝王と一致はしてるんだけど、そういう話でもないだろとは思うんで、これも不思議。それよりもむしろ、これは天変地異や疫病などの脅威に生贄を捧げてムラなりの共同体の存続を図るというものに近くって、でも、こう村の乙女を生贄に捧げて例えば旱魃時に雨が降って村人が助かった…という話が昔に現実に起こった…ということはまずありえないことであって、そして別に本当にいけにえを捧げる行為が村を襲っている脅威を取り除くとかそういうものではなく、単に食料が足りないから生贄と称して共同体で一番生産に貢献しない穀潰しを減らすって機能のほうが大きかったわけなので、今回の、少女一人と引き換えに敵の脅威が去って元の贅沢な生活を人類は取り戻した…という結末もなんなのソレって感じ。
 劇中でも、人類の命運を年端もいかない少女たちに託すしかないというセリフがあるのだが、それが例えば現代社会において大人の尻拭いを子供がさせられてるとか、男のやらかしを女が尻拭いさせられてるのに評価されないとか、子供の場合はどの国でも基本「大人からの贈与を受ける側」でしかないし、中国では、女性の社会的地位は日本より低くはないわけで、わざわざ男女同権をこういう作品で主張する必要性がない。
 で、今回驚いたのが、一応物語上のケリがついて、ラストでパーティーのシーンがあるのだが、これが「敵を撃退して一周年記念祝賀パーティー」なのかと思いきや、結婚式だったわけで、「え?」ってなった。別にあの激闘を関係者が振り返るという形にも、その後のキャラの動向という形でも全然不自然ではないのだが、なんか唐突に感じてしまう。とはいえ中国のドラマは尻切れトンボと思われる終わり方をするものが多いので、まだこれはマシなほうではある。
 あとラストでも、便利なエネルギーシステムは維持されたが、それに懐疑的な主人公の父親が代替エネルギーの開発をしてる…でも遅々としてなかなか進まないってことになってたが、これも日本ならあーこれ原発のことね、なら今まで地球に襲来してた敵は原発ムラだとか、原発メルトダウンで実際に受ける被害のメタファーとも考えられることができるのだが、この作品のメインターゲットは中国人でしょ?。日本と違って核兵器開発能力のためにわざわざ原発を維持しなくても、核保有を認められている超大国という扱いだし、中国なら原発に電力を依存しなくても、今や世界的な再エネ大国なのだしそもそもが原発批判する必要性のある国柄でもない。
 なので、やはり物語の帰結から導かれるテーマって何なの?という感じが拭えないという段階。


 というわけで、結論というかテーマに疑問はあったのだが、SFという点においてはそこそこリアリティに寄せてきてるんかなというイメージは強かった。あとはトリアージ関連?。その時々に発生するトラブルに対して、問題を再設定しなおし、何が優先事項なのかタテマエとホンネを使い分けて効率を最大化するとかそんなの。これは「上に政策あれば下に対策あり」の中国らしさが出てたかも…みたいな。ただし中共批判にならないよう、「上」は微妙に他国に押し付けて、極東司令官以下「下」に位置してるのはそういうことなんだろうなって感じ。
 とまぁ、最終回なのに、カタルシスはないとはいわないんだけど、こう大喜びするというか、今までの鬱屈を全部吹き飛ばすような勢いはなかったというか、上記うだうだもうちょっとスッキリした結論が欲しいと記述はしてみたが、そういうのは全部ひっくるめて「こういう中途半端な結論にしたその意図は行間から汲み取ってくれよ」ってことなのかもしれず、もうちょっと時間が経ってみると印象も変わってくるのかも。個人的にはシナリオ部分にドラマ的熟成をあまり期待していなかったから、SFを混ぜ込んできて、それでいちおうストーリーとしてのクォリティは前より上がっているなということは感じられたので、動向を探るといった興味に関しては満足したという感じ。とりあえずアイデアを形にしてみましたってんじゃなくて、シナリオの深みも増しているようで、改革開放時にそれなりにクォリティを評価されていた中国映画にちょっとずつ近づいてる感じはする。