ぼくリメ#1・2

 ゲーム業界での過去に飛んで人生やり直しモノ。視聴対象から外すと一度は決めていた作品なのだが、原作も話題作だしまぁ見とくか程度だったのだが、増田で
anond.hatelabo.jp魚拓
 を目にしてしまい、真偽を確かめようと一目見てみることに。
 確かにラブコメというか、コメディ部分はちょっとヒいた。でも個人的に感じた重大なことはそこではなく、作品中でも人生はやり直しができないものみたいなことを何度も言っておきながら、やってることはそのやり直しそのものだし、自分が感じたのは一昔流行った「仮想戦記」モノを個人の自分探しに適用したものなんじゃないか?ということ。遡る前の記憶や知識技術をそれが未熟だった過去で適用して無双する構造は変わってないし、しかも仮想戦記なら過去に飛ばされたキャラが救うのはたとえ国としてだらしないとしても国家という共同体だったのに対し、これは個人、それも自分自身を助けるのだから自分本位極まりない。そのへん大きな物語ではなく終わりなき日常を生きるというサブカルの主張の延長線上にあるだけの話なので、よく見てる光景ではあるのだが、あまりにもご都合主義であることも含めて節操ないなとは感じた。ただ、それはあくまで外形的なことであって、物語がどう転ぶかの評価基準に照らし合わせたら取るに足らないことではあるので、まだまだ様子見。
 大学で寝てた友人が答えをブチ当てる構図も、あれ、自分が大学生のときでも「大学行かずに本ばかり読んでる学生」みたいな感じのことが既に過去のこととして語られてたことそのものといった感じ。特に文系の学生のよくできた連中は大学の講義はマスプロ教育であって、一通り教養を身に着けていたら時間の無駄なのであって、それこそ文系なんてコネがあるとかでなければバブル崩壊前ですら別によい就職先があるわけでもなかったから、本当にやりたいことがある学生は今回言われてたように突き抜けるために人より二歩も三歩も先に進んでいる、そのことが学校に行かずに本ばかり読むという行動に現れるってだけの話。なので、案外この作品で述べようとしていることは新しいどころか日本に大学ができたころぐらいからの手垢のついたものなのであって、あるいみ原点回帰というか古典復古みたいな感じなのだろうと思う。
 大学なんて本来手取り足取り教えてくれる場所ではないし、シェアハウスで男女四人はやりすぎだが、寮生活をしてた自分にしてみれば友人同士がお互いを高め合うというのはわからないわけでもないし、それなりに若者向けの基礎基本を説いたハウツーものって感じはする。だが同じ友人関係にしても昨今の大学生は犬HKラジオなんかを聞くと「コロナ禍で大学がロックダウンして、友人と励まし合えないから勉強する気にならない」というもうなんというか甘えたちゃんの主張が喧しいぐらいなので、そのへんどーなの?と思わなくもない。SHIROBAKO同様映像業界のセルフブランディングでもあるだろうし、まぁせいぜいSHIROBAKO程度が関の山で、それを超えるのはちょっと今の段階では想像できない感じ。
 あとねー、自分がどうにも引っかかるのが、主人公、過去に飛ばされる前の生きざま、別に一生懸命でなかったわけでもないんじゃないの?ということ。結果として失業したとか、鳴かず飛ばずだったからというエクスキューズをして、なんかやはり成功してキラキラしたものを見せつけてあのようになれる可能性があるという夢を見させるの、すごく業が深い感じ。なので、なんで主人公に過去に飛ばされる前の人生を否定させるようなことをすんのかというのが腑に落ちない。
 2006年といえば郵政カイカク選挙直後のこと、2016年といえばアホノミクスを吹かして正社員を切り捨てて非正規雇用が激増し、労働者人口の4~5割が非正規になったのがほぼ確定したころなので、その辺の時代感覚はなんとも。2016年といえば、大学新卒はホクホクだが、28歳なら失業するとほぼ次の就職先に正社員はありえなくなっているから、それ以上の層あたりの共感は呼びそうな感じではある。

たんもし#2

 主人公に別のヒロインがあてがわれるが、実はそのヒロインは…の巻。なんのかんのいって前回の話を視聴して、今回のこの話を心待ちにしてた。依頼の中身もなかなか気取ってたし、手掛かりをどんどん拡張していって話が転がる様子も面白かったし、オチというか真相をクライマックスの触手が溶けるシーンまでわからなかったから、結構面白かった。ミステリの形式をとっているものの、オカルト交じりなのでファンタジーでしかないんだけど、こういう拡張の仕方もあるのかという驚きがあって、個人的にはちょっと目を見開かされたって感じ。

死神坊ちゃん#1・2

 原作未読。話の筋が説明しにくいな。でもぱっと思いついたのはやはり漱石の小説。主人公と何が何でも主人公の味方であるメイドの構図は、坊ちゃんと清の関係と同一。しかも#2では月がきれいとまでセリフに忍ばせてきたのだから、漱石リスペクトなのはほぼ間違いないのでは?。
 しかし、作者がどの程度意味を込めているのかよくわからないのだが、触れたものを死に追いやるという設定、メイドの着替えでは何重にも服を着てれば大丈夫のようでありながら、手袋越しでも植物は枯れていて、しかし彼が手袋をしているのはうっかり直接触れないようにという気づかいであるように思えるので、結局あれもこれも何らかのメタファーだとか記号のオンパレードであるらしい。本当にそうであるならば、作者は設定の段階からこれはこういうこと、それはこういう意味というのを詰めてからシナリオを作ってるはずなんで、まぁさすがに全容を明かすなりのことは、なんらかのカタルシスを演出するためにクライマックスまでお預けだと思うので、物語が進むにつれある程度の傾向なり方向性なりはわかるんだろうけど、連載が続いている以上そうやすやすと読み解きはできないんだろうなという気はする。
 ちょっと毛色の違う方向性でスマッシュヒットを探る程度の作品なんだろうと思っていたから、割とツボに嵌って自分でも意外な感じ。#2では音楽やダンスがこんなにエロティックなのだとは思わなかったので、個人的にいろいろ世界が広がったような気分。