聖女#12

 別に元の世界にではなく王都に帰還したというだけの話なのだが、それもあまりメインではない感じのサブタイの場違い感。内容的には魔術師団長に、聖女の魔法の発動条件を見抜かれてEND。うーん、なんか微妙なところで、その微妙ってのが別に出来の良い悪いの境界部分を指してるんじゃなくて、結構評価が難しいという感じ。前回、この作品の大きなテーマが救いだと途中勘違いしたがそれは違うという話をしたのだが、そういやと思い出したのが防振り。あれ、原作をなろうでちょっと拾い読みしたらもう全然楽しめなくて、アニメのほうが原作にはない価値がつけたされているように思ってちょっと驚いた記憶がある。自分が中高生のころの映像作品、特に原作付きの…というか、人気小説の映画化(今だと劇場版っていうんだろうけどその辺の時代の変化を感じる)は特に、原作より薄っぺらくなるのが常であって、まぁ通は映画なんか見ずに原作を読むのが通例だった。これも連載はなろうらしいので、なろうのスタイルだと割と新聞小説のようなぶつ切りみたいな感じであって、割と構造的にそのぶつ切りで読者を満足させねばならず、大きなブロックでなにかその作品の魅力を積むだとか、メッセージ性を仕込むのがちょっとめんどくさい感じの局面が多い感じ。なので、シリーズ構成あたりが、原作プラスアルファを狙ってんのかなという。ラスト、セイが口パクでセリフ何言ってたのか隠してたが、あれ、あんまり小説でやらないことだろうし、そう考えてみると、今ドキのアニメなんでなかなか原作を改変することは難しいが、やはりアニメならではの仕込みはやってるんだろうなとは思う。
 あと、ヘンな話だが、今回のエピソード見て、あー社会批判というか、政権批判をここで仕込んだのねというちょっとした驚きがあった。セイが沼を浄化すると、モンスターがきれいさっぱり消え、しかも戦いによって荒れた森が復活するという、あーそりゃ森は日本のメタファーでしょと思うしかない。では、沼は何のメタファーかというと、そりゃ日本を蝕んでる連中のことでしょというのは想像に難くないワケで、やはり、中盤の山場で欠損患者を全快させるシーンを置き、ラストのラストで森というか、王国に救援を求めてた地方の厄介ごとをきれいさっぱり解決するとか、やはり中盤は個人に対しての、このラストは社会に対しての、やっぱり「救い」を提示してたんだろうなという構成だと思うしかない。しかもオモロイのは、せっかく魔術師団長が出張ってまで、セイの聖女魔法で沼を浄化するための血路を開いてくれたのに、当のセイはその血路を開いてくれた隊員が危険にさらされると沼の浄化を後回しにして救援に入ってしまうワケで、自分なんかはその瞬間アホが~と思いながら視聴してたのだが、その直後にセイが沼の浄化を果たしたら、もう危険にさらされてた派遣隊がすっかり安全になってしまうシーンが提示されていたので、やっぱりあーアニメスタッフ、原作にこのシーンがあるんだろうけど、やはりこれを描くことは確信的だったろうねと思うしかない。マクロの問題を片づけるとミクロの問題も自動的に片付くんだから、その能力があるんだったらミクロの些事は大事の前の小事であって、決してそれに手を出してはならないのであって、まぁそういう主張でしょ。自分も前から言ってる、子供食堂なんかはあれはむしろ無い方が貧困の解決には早道なのであって、現在の自民盗を頂点とする政官財の既得権益トライアングルがタッグを組んで庶民を搾取してるのをやめさせるのが先であって、まぁこれだけ日本が格差社会になってしまうと、今から自民盗退治をやって貧困問題が解決するのか、もうそういう段階も過ぎているんじゃないかとも思うのだが、まぁ子供食堂なんてやっていて、それで急場をしのげてしまったりすると、自民盗の連中は「いくら搾取をしても貧民どもが子供食堂とやらで自助共助するんだから、いくら搾取をやってもダイジョーブ」とばかり、搾取がいくらたってもやまないのであって、というか、特権階級による搾取は酷くなる方向にしか作用しないので、むしろそれやってると解決が遅れるでしょということになる。なので、セイがやるべきことをあの瞬間見失っていたということを示すために、わざわざこのタイミングにこのエピソードが来るような構成にしたのであって、そのへんよな。
 まぁ全体的に見たら、ひげひろがおおきなおにいさんというかおっさんのドリーム全開な妄想の類であるのと同様、この作品もおおきなおねえさんというか、おばはんのドリーム全開な妄想の類なんで、ただ、セイが薬用植物園で仕事してるのはアレは理想の職場なのであって、そのへんの構造は男女問わず楽しめるようになっていたと思う。まぁいろいろ気になるところがないわけではないんだけど、でもそもそもがこの作品神拾と同じ系統の作品なんだろうなという見込みで視聴対象にしたことからすると、それよりは得るものが多かったというか出来は良かったという感じ。神拾と違ってもう植物に関しての掘り下げは全然ダメなのだが、ファンタジー世界の妄想植物談義をやられてもそれはそれであんまり益のないことではあるので、そのへん無駄のない作りだったと思う。