バビロンちょっと驚いた。

 うーん、ガワがセンセーショナルだし、思ったほど奥深くもなくって、それこそ前回からの流れで言えば、ユーチューバーのお面の子供の立候補の件、手続き段階で誰かわかるしそれ以前に自殺しようとしている父親は誰?と一言聞いてれば正体がわかるものを、公開討論会でさも初めて知ったみたいな演出をするのは、もう視聴者バカにしてんのかといった感じなのだが、この作品もやっぱりというか、作品自体を推してるんじゃなくて、あくまでアベ批判がメインなのがわかってしまうと、そういう本質でないことを槍玉に挙げるのは筋が悪い。
 


 で、何が驚いたのかというと、これ超余裕でも述べた通り、あまりにも事実とのマッチングが素晴らしいということ。正直自分で言っても荒唐無稽としか思えないのだが、これ、今話題の桜を見る会にピッタシターゲットを合わせてたと思うしかない。そもそも桜を見る会の違法行為、元々は共産党が春の時点で一度問題にしてる。なのにすっかり忘れ去られたかのような扱いで、今、再び話題になってる。そして、この作品、以前はもっと早くアニメ化しとくべきと言ったのだが、割とクォリティからすると急造感が否めない。人物作画見ても直線的な筆運びが多くて、一話仕上げるのにかかる時間はとても少ないと感じる。ヘンな話、3月辺りに企画をでっち上げて、この瞬間をゴールとして製作されたと考えて、時間的には十分な実行可能性がある。実際アベの犯罪に関し、あれだけ多数の証拠付きで白日のもとに晒されて日本国中が大騒ぎしても、東京地検特捜部は一歩も動かなかった。昨日あたり市民団体が刑事告発したようで、これで検察も嫌々ながらでも動かざるを得なくなったとは思うが、糾弾するのが誰もいなかった場合、警察も検察も確実にダンマリだった。


 さて、今回のお話、未だに対立候補側が悪だと考えてる視聴者がいてもおかしくないとは思うんだが、そして、今回のヒキの猟奇的行動の描写がまたトリッキーだなと思うのだが、整理してみるとやはりヒーローは対立候補であり、悪役はどう考えても主人公側。公開討論会対立候補が主張を取り下げただけでなく、息子との対話を通じた演説でそれなりの支持を獲得したわけで、その段階で主人公側が対立候補を拉致する口実は失われている。なのに、結局主人公側は作戦の変更をせず無理やり実行した。結果として拉致は失敗したのだが、主人公は行動開始といってるわけで、これ犯罪を実行したという記号。失敗したから犯罪ではないというのではなく、犯罪を実行したが失敗したので、「未遂」扱いになる。この段階で実行部隊の運命は決まったといって良い。法を守るべき警察や検察が、明らかに自分でも悪いとわかっていて、状況の変化にも対応できず、計画を変更することもなく実行したのだからこれはまぎれもなく犯罪。成功したら当然彼らの犯罪は隠蔽され、絶対に罰せられることはない。対立候補側が今回実行部隊を全滅させたのも当然で、ここで少しでも情けをかけでもしたら反撃されて一網打尽にされる。最後のシーンを除いて対立候補側がやったのは囁くことでしか無く、犯罪性は視聴者でも皆無だとわかる。


 最後の猟奇的シーンも意地が悪くて、対立候補側に自分は悪だと言わせているが、あれ逆説的に悪いのは主人公側だといってる。切断の瞬間もモンタージュ技法をつかって主人公の家族の描写と重ねていたが、あれ、それだけでなくて、次攻撃してきたらこんどは主人公側の家族がターゲットになるということを示唆してる。作中でも本人に述べさせていたが、ちょっと囁くだけで自滅させられるのに、なんで露悪的になるのか、その意味はもうこれはオマエと同じことをやってるだけだというだけの話であって、極めて意図的。それに対する主人公のセリフは、やめてくれというのと、悪について考えるというだけで、自分が悪かったとは一言も言ってない。これ、まさにアベの態度そのもの。今、この瞬間、あれだけ桜を見る会での違法行為が白日のもとに晒されても、やはり自分が悪かったとは一言も言ってない。このアベの態度、警察検察の態度、見事に今の状況に「完全に一致」してる。半年前に、今日この日をターゲットにして、きっとアベは態度を変えないだろう、警察検察も絶対アベを逮捕する方向には動かないだろうと見きった上での、この現実との見事な一致、ホント自分でも信じられないというしかない。


 しかし曲世愛というオールマイティーを使わなければ成立しないし、そのへんやっぱ文学寄りではないんだけど、そうでもしないと抵抗側はただただやられるだけになるわけで、世に問うだけのものにならないのも事実。超余裕もそうだが、この作品は製作の名前にある通り、どちらも強く市民革命の必要性を述べてるの、なかなか世が極まってるなという感じがする。半年前はこんなに社会批判が激しい作品は少なかったし、個人的に違和感があったぐらい。それが今期は社会批判系の作品が多い上に、前回述べた通り、今となっては壊れてしまった学校的価値観を復権させる動きも多数感じられて、これ、おそらくアニメ界だけでない大きな力が働いてると思う。確証は全然ないし極めて確率の低いものだと思うが、もしかすると近いうちに大きな変動があるのかもしれぬ。