バビロン最終回

 視聴直後はよくわからんかったのだが、これ、本当に原作者の意図なんかなと気になって密林の第3巻のレビューを読んでみたのだが、どうも最終巻ではないらしく、となれば、このアニメの最終回もあくまでアニメ版としての〆らしいということがわかってちょっと考えるのが楽になった。
 一ヶ月の休息期間を置いていたのも気になっていたのだが、再開していきなり合衆国大統領編になって戸惑っていたのではあるが、中断前に善と悪について考えろというヒキだったので、現実の大統領あんなに思慮深い人物今までいなかったよと苦笑しながらも、なるほど、これ視聴者(読者)にもいろいろ素材を投げながらこの哲学的命題を一緒に考えていきましょうという構成なんだなと思って、感心しながら視聴してた。アニメがどういう切り取りをしていても、原作はこれが本筋だったのかなと思っていたのだが。
 ここからはネタバレ上等で書くのだが、しかし今回の最終回で、いともあっさり大統領に(彼の考えるところの)答えを言わせて、これ大丈夫なんかなと思っていた。ちょっと時間が経ってみたら、なるほど、これはこの作品上での答えであって、それが現実社会に於いての哲学的命題に対しての真の答えでなくっても別に構わないんだなと思い至った。作品上で、それが正しかろうと間違っていようと、その答えを叩き台に視聴者が考える答えと比較させることによって、いわゆる議論(作者と読者との対話に於いて)らしきものを形成するんだなとぼんやり思っていたわけで、なるほどこれはこれでアリかもと妙に感心してた。
 ところがBパート以降、話をまとめるに当たって大統領を射殺し、曲世と正崎を対面させるとかポカーンだった。正崎が大統領を撃つんだろうなとは思っていたが、それは一時的に大統領の運動能力を喪失させて、最終的に自殺させないようにするためだと思っていたし、いやそれでも射殺したのは世界の支配者としての大統領が自殺する姿を世界中に見せるわけにはいかないから誰かが殺す必要があったんかなとか、いやそれはそれで問題だろ、正崎にとって大統領は恩人という立場だろうし彼の倫理的にも辻褄が合わないのでは?とか思っていた。原作でもああいう顛末なのかわからないのでなんともだが、もしかしてアニメオリジナル展開なのかね?。
 でも結局の所、続くことが善で、終わることが悪だという論理世界だと、正崎はたとえあの曲世との対決で生き残ったとしてももう人として終わってるだろうし、大統領を死に追いやった曲世は、世界の支配者ですら向こうにまわして生き残った(続いた)わけだから、続くvs終わる、善vs悪の構造でいえば彼女こそが善なる存在だという結論になる。まぁ言うなれば「勝てば官軍」というわけだ。
 しかし、よく考えてみれば、放映中断直前で曲世は検察官を生きたまま切断する殺人を行っているわけなのだから、「続く」ということを満たしてるからといって彼女が善なる存在であるはずがないわけで、あーそーいえばあの中断のタイミングを思い出すと、そもそも、この作品反アベだったなということを今更ながら思い出す。やたら大統領が考える人であって、物語のテンポもそれに合わせて丁寧な話運びだったから忘れてたよ…というわけなのだが、なるほど、桜の会の犯罪行為で本当ならアベ政権終わってたタイミングだったんだよなという。桜の会が税金で支持者を買収するという前代未聞の犯罪行為だし、なんといっても招待客にいたJL山口はよりにもよって自民盗支持者をターゲットに詐欺を働いていた犯罪者なので、国民全体ならいくら騙しても平気なアベでも、さすがに身内を騙したとあっては退陣せざるを得ないはず。だが、仮病で政権を放り出したときとは違って、あれだけ明確な犯罪の証拠があっても権力にしがみついている。これにはアニメ制作スタッフもたまげただろう。これは想像でしかないが、おそらくアベが退陣すること前提に、あの物語世界の未来は明るいという結末になっていたのではなかろうか。ところが恥知らずにも虚偽答弁を繰り返してしがみつくとは思っていなかっただけに、急遽ラストの展開を差し替えることになったから、あの不自然な中断があったということではなかろうか。もちろんスタッフもアベが犯罪の明確な証拠があっても総理の椅子にしがみつくというのは可能性が低いだけで予想の範疇ではあっただろう。だからどちらに転んでもよいように最終回を調整していたが、よりにもよって可能性が低いところが来たという。大体一ヶ月ぐらいあったらアニメ一話分ぐらいを作り直す時間は稼げるわけで、なるほど時間的にはそんな感じかなといったところ。
 まぁ個人的に言わせてもらえば、そもそも自殺なんて法律で許可されていようといまいとする人間はやっちゃうわけなんで、そして許可なく自殺することが犯罪でもなんでもないわけなんで、なんで自殺法が世界的なホットイシューになるのか意味不明だった。国家が自殺を強要するとかだったら大問題だが、この物語別にそんな話ではなく個人の選択の範疇だったし、意味のないことで政治家や官僚が右往左往するのがある意味滑稽ですらあった。要するに物語の前提条件となる、仮説の立て方自体がオカシイというか意味のないものだったわけで、そのへん自分にとってはズレてるなという感覚は常にどっかに存在してた。ただ、物語を通じて現実の日本社会の政治家や官僚、それも清和会だけには特にダンマリな検察組織のオカシさには大抵の日本人が気づいているわけで、そのへんの不条理を描いていたのが本筋なんだろうなと個人的には思っていたから、最終回で構造としてそこに回帰していったのは、まぁそれなりに考えた結果なのかなと思わなくもない。まぁあんまり文字にするのも気が引けるのだが、この最終回の話運びだと、勝てば官軍という状況下ではいくら犯罪行為をしても権力の椅子にしがみついてアベ政権が「続いて」いく限りアベが善になってしまうから、早くアベ政権を「終わ」らせて悪に落とし込めとでも言いたいんだろうなと思ってみたり。

ペット

 これ、結構オモロイ。前回誰がボスなのか明らかになって格段に面白みが増した感じ。そりゃこういう能力があって、それを発揮する場があって、それでカネまで儲けられるんならやらない手はないでしょというわけで、実際やってることは犯罪だし後ろ暗い雰囲気が常にまとわりついてるんだけど、なぜかスッキリ感があるという。物語の帰結点が見えないと結構もどかしく感じるものだが、今の所物語に手を引かれて連れ回されてるような感じがそれはそれで悪くない感じ。