魔法使いの嫁 第18話

 エリアス、女々しい。
 うーん、こんな設定なのだったら、もうちょっと最初っから演出の仕方もあったろうに。エリアスにこんなに幼児性を付加させるのなら、弟子と嫁にするという最初の目論見の意味付けが変わってくるし、今までのチセを弟子として指導するときの心積もりもちょっと不純なものがドロドロしてたんじゃねぇの?。いくら周囲にエリアスは子供のようなものと連呼させても、今までの描写でエリアスに深いものがないという風には全然見えないので、これは反則技というか、仕込み間違いというふうに感じる。ルツに言わせている通り、関係性の逆転というのは面白い試みだと思うのだけども、これでは婚姻関係を結ぶ前の同棲カップルの痴話喧嘩に過ぎないので、今まで作り上げてきた世界観や雰囲気と甚だそぐわない。それで命の危険まで生じているんだから、DVも真っ青だよ。若い二人が若いが故に感情で突っ走って駆け落ちぐらいの前振りがあって、お互いの愛がお互いを傷つけ合うとかいう古典のほうがまだマシ。最初っからエリアスに明示的な幼児性があったのならこれで十分納得もできるのだけども、ひとえにそれがないからグダグダに感じる。そもそもオークションにてヒトをカネで買うから人権意識がないというのも納得できない。カネで贖うことでしかチセを救うことが出来ないんだから。そもそも魔法使いってあちらでは知恵とか理性の象徴だよ?。こんな体たらくだったら人間界と対になっているであろう魔法世界のランクが下がっちまう。魔女だったら欲情のメタファーというのもあるけど、この作品ではそういうふうな扱いをしてないじゃない。なんか画竜点睛を欠くみたいな感じですごくもったいない。
 うーん、この作品の人気があるってことだけど、チセに見られる通り、現実の家族関係を「コレジャナイ」と感じている読者層が多いってことなのかねぇ。たゞ、現時点でのチセは家族関係についての理解は深くないという描写なので、そのへんの原作者はわかってそうしていると思うんだけど。前回の神隠しの回でも姉弟関係ばかりで親の介在は極薄だし、なのにあの姉弟には兄弟関係と言わせずに家族関係としか言わせてないわけだろ。なんつーかこれは自分が過去さんざん言ってきたとおり、現在までに起こってきたことは地縁社会から個人分断化が進み、今や家族ですら解体されようとしているってことに原因があるのかもしれないね。
 現代人が今の家族関係をコレジャナイと思うのはなんでなんだろうね?。コレジャナイ、理想の家族像をしっているということになるんだけど、それは別に過去の家族関係を知っていてそれと比較しているわけではないから、教育によって教えられたもんなの?ということになる。いくら道徳必修化だとか保守層が理想像を描いてはいても、それを明示的に教えられてきたわけでもないでしょ。結局の所学校教育が構造的に消費者教育に変化させられてきたって考えるしかない。今ある家族関係はあくまで暫定的で、そしてその暫定的であるってコト自体は正しいんだけど、変化の方向が産業が消費者の欲望を掻き立てる形で誘導されて、常に今の家族は欠落した状態であり理想ではない、改善のために努力しろ、あれ買えこれ買え、文句があれば訴訟しろのそういう即物的なあり方が原因なんだろうなと思うしかない。人為的に精神的な飢餓状態に貶められ、欲望を掻き立てられて搾取される。逆に言うとこの作品はそういう態度とは対極にあると思うんだけど、そのへんどうなんだろうね。