魔法使いの嫁 第11話

 なんか遠距離恋愛の電話のやり取りみたい。
 うーん、難しいところなんだけど、このへんが人気の秘密なのかな。連載誌を考えるとメジャーどころじゃないので、わざわざコミックブレイドを購読する層の社会的な立ち位置からするとなるほどゝいったところである。Aria、あまんちゅの連載誌でもあるわけで。
 今になって振り返ると、この作品は人と人との関係性が割とはっきり現れているのが特徴で、リンデルのように孤立しているとか、アリスとレンフレッドのように師弟(を越えそうだが)関係であったり、今の所固定した関係性で主人公の脇を固めているって感じ。で、唯一変化が激しいのが主人公周りで、チセは登場時は不定形の奴隷として現れる。それがエリアスに買われて連れ帰ってから弟子になり、その次に婚約者であることが告げられ、そして今のところはルツという使い魔を得て主人という立場を獲得している。こういった役割的には成り上がることによってチセが幸せになっているということを示すものではあるのだが、これで一段落してようやっと不器用な者同士の恋愛描写に取り掛かり、おそらくこゝからが本番といったところなのだろう。
 今までずっと引っ掛かってきたことではあるのだが、チセはかなり疎外感を得ていたろうが、割と他人の痛みに理解があるのでそのへんがどうにもウソ臭いという気はしてた。他の作品なら日本で友人がいたという描写の一つぐらいしてもよさそうなのだが、それをしていないということは普通に考えるとそういう友人はいなかったとみるべきだろう。となれば、かなりチセはいうなれば差別をされ続けてきたと考えるのが自然で、ならばあの優しさはなんだろ?というところ。そんなに不自然すぎるというわけでもないのだが、例えばおじろく・おばさの無表情、南北戦争後の奴隷解放後の黒人奴隷の半数以上がまた奴隷身分に戻ったとかを考えると、人間というのはそういう知識や経験がないといざ自由になったときにそれ以外の処し方を知らなくてそれまでの習慣を続けてしまう。いやまぁチセにセーラー服を着せているからさすがに学校には行ってるんだろうし、そうであるならば普通の生活や世間一般的な幸せとは何かについてさすがに知らないってことはない。そのへんチセの感情表現が乏しいとかやつれた表情をさせているってのはそりゃ原作者もわかってやってるんでしょといったところではある。まぁうまいというかずるいというか。
 あと今回ん?と思ったのが、チセが日本で見たという妖精の姿。モロ日本の妖怪なのな。西欧の妖精と日本の妖怪がシームレスにつながる世界ってのも個人的にはうーん?といった感じ。大方文化によると思われるそれらが、少しでも過去に交流があったというならまだしも、普通独立して発生したものだろうから、なんかこれもご都合主義だなぁというか、まぁそこまでダメっていうつもりもないんだけど、それでも視聴して引っ掛かってしまうというか。
 で、それらいろいろひっくるめて、あ〜、こりゃなるほどイギリスのファンタジーを使ってはいるけれど、やはり現代日本の切り取り方なんかなという気はしてる。チセが見えないものが見えずに周囲に疎まれるのは、まぁブラック企業で成果の上がる方法を却下されて干され、こきつかわる社畜のメタファーだと見ればそんなに不自然だとも思わない。奴隷市場は転職市場だと考えられるし、その際に運良くホワイト企業の経営者に拾われたとかなんとか解釈しても良いわけだし。今だと大企業はまぁコネでもないと…っつー時代に入りつゝあるし、そうでもなければとてつもない学歴でもないと無理ゲーというか、そのとてつもない学歴の入手からしてという話。で、そうやってまで入る企業が社会的に有益な行動をしてるのかといえば、結局の所社内政治で成り上がって企業の社会的役割ナニソレ?、自民盗に賄賂でも送って税金を食う仕事を回してもらうってどこのゴミ虫?って状態だしな。かといってそうやってまで大企業のように社会を食い潰して甘い汁を吸うような仕事ばっかりでも世の中はないわけで、そういうものゝ一つとして魔法使いというかファンタジー社会が描かれているのかもといったところはある。で、具体的にそれはどこなの?と言われたら難しいから日本を脱出してということなのかねぇ。