魔法使いの嫁 第24話

 まさかの逆プロポーズ。といってもなぁ。
 結局カルタフィルスとヨセフの分離は無かった。ヨセフの過去話からすると当然ではあるがあっけない解決法でナニコレ?といった感じ。まぁそれも過去話を覗き見したからこそわかったことだとは思うんだけど。しかし分離せずに受け入れるということなのであれば、ヨセフはともかくカルタフィルスの過去話をやるべきだったのでは?。あと、ヨセフ・カルタフィルスは細かな違いはあるが結局チセの写し鏡という役割を持たされていて、ちゃんとチセの欺瞞をヨセフの口に語らせていたという。まぁやっぱり制作側(おそらく原作通りだと思うが)もわかってそう描いていたというのはちょっと安心。ヘンな話、比較するとヨセフのほうがチセよりよっぽど罪がない。
 チセが目を覚ましてエリアスと喧嘩するシーンで、なるほどこれで忌憚なく喧嘩し会える仲になったのだから晴れて夫婦になったんだなという。それを経由してのラストなんだからまぁキレイに話は終わったと言える。
 いやぁ、自分の中でも紆余曲折あったのだがこうやって終わってみればなかなかにしてよくできていると思った。なんだろ?、最初チセは救われるべき存在で、彼女が癒やされる過程で読者もこう格言などに触れながら一緒に癒やされるそういう物語だと思っていた。が、それが最大の間違いであって、これにはヤラれたといったところだ。そもそも彼女が最初の段階で自分で自分を売るという登場の仕方をしているのだから、はっきりいってチセは最初っから地雷女なのであって、それが形の上では終盤まで伏せられていたという。これまたおかしな話だが、この作品は24話かけてチセが自分を地雷女であると自覚して最終話でようやっと一皮剥けるというシナリオであったわけで、気づいてみれば最后まで騙されたというか、やられた…脱力って感じではある。スレイ・ベガという魔力の大きな貯蔵タンクであるという設定も、チセが子供の頃はなんでそれで不幸な目にあったのか、物語の展開でもそのメリットやデメリットが今一はっきりしなかったわけなんだが、こうやって終わって振り返ってみれば、正しいかどうかは別にして、要するに魔力っていうのは人のドロドロした欲望なんでしょぐらいの解釈ができてしまう。不用意にそれをうっかり溜め込んでしまったら当然制御なんてゞきるはずもなくて、自滅するしかないでしょというわけだ。チセがスレイベガであることは生まれつきであって別にチセに責任があるわけでもないからそれは原罪に相当し、チセが他者を救おうとする行動は贖罪といってもよさそうなもんだけど、それはキリスト教的な意味での原罪・贖罪とは意味合いが違っているので、そういうものではないだろう。
 なんか最近文学にこじつけた作品が多いせいか、しかも月がきれいで太宰が取り上げられたせいなのか、こう太宰の人間失格と比較すると、アレは主人公がダメ人間と思わせて、最后の最后ばぁやにアレは良い子と言わせてそれで初めて読者はそうだよなと思わされる仕掛け*1になっていた。これはどちらかというと上記の通り逆の構図であって、主人公は救われるべき人間だと思わせて実は周囲を振り回す困ったちゃんであるということを明かしていき、それでも彼女が救われるのであればまづ彼女が今までの反省をして全身全霊をかけて一番の他の困ったちゃんを救わなくちゃダメでしょという形になっている。そう考えるとなんでこの作品は「大人」を描かないのかという疑問も氷解する。そういう大人を登場させたらチセの本質を見抜いてしまうわけだから、そういうキャラを登場させたらなにかしらそれを読者にほのめかす必要がある。そうするわけにはいかないから大人を終盤まで登場させなかったという。
 しかしなんだな、文学性という意味においては決して悪い作品ではないんだが、視聴して良かったか?と言われたら自分にはあんまり合うような作品ではなかったかなというのが正直なところ。人間失格なら小一時間ほどで読めてしまうので、読後全体を振り返って各エピソードを解釈し直すのも手間ではないし俯瞰もしやすいのだが、これは24話だと正味10時間ほどは費やすわけでしょ。原作漫画だと何巻分のがアニメ化されているのかわからないが、それでも読むのに3〜4時間はかゝりそうではある。アニメを見る限り、折り返し地点の12話まで方向性がはっきりしなくてやきもきした記憶のほうが強いから、よっぽどこの世界観に馴染みが出なければ切られてもおかしくないとは思った。個人的には過去仕事上で地雷女にひどい目に合わされた経験*2があるのでそういうバイアスが効いているとは思う。原作漫画はファンがついているとのことなのだが、チセが地雷女だとの解釈をもったその上でなお愛好しているんだとしたら我慢強いなぁと感心するぐらい。

*1:主人公は徹頭徹尾悪意のない人間として描かれ、むしろ周囲に悪意のある人間をポチポチ配置している

*2:しかも相手の言うとおりにしたのに一方的に反故にされてバックれられたという。