なんかどんどん酷くなるねぇ。

 教育費の無償化が言われだしてもうなんともといった感じ。なんで親の私物という要素の強い乳幼児保育を無償化するのかとか、アホ大学が増えた上での大学授業料のツケ払い化とか本当に正気の沙汰なのかと驚くばかり。
 数年前あたりから年越し派遣村湯浅誠を評価できなくなったのも、彼が消費税増税を容認して貧乏人対策を大学教授かなんかの上から目線で始めたあたりから。要するに貧乏人から搾り取って貧乏人を助けろという論調に汚臭がしてきたから。もちろん自民盗が消費税を貧乏人のために使うかどうかは、アベが本来増収分はすべて社会保障に使うという決まりごとだったのに、「借金返済に使う分を一部大学無償化に使う」と言い出したことからも明らか。いつのまにか自分で言ってたこともなかったことにするアベの詐欺っぷりになんで国民は怒らないのか不思議なところ。
 乳幼児保育の無償化の胡散臭さというのは、もうどうにも救えない状況で、本来家庭の外に出すべきでない(要するに社会的には人間ですらないもの)を外部に委託(アウトソーシング)する親達の身勝手さがこんなにもあたりまえになってきたのかという驚きがある。2000年前後の新聞だったと思うが、もともと企業は働き手である(大抵は)父親に母親込みでの養育費も含む形で給料を渡していたのだが、それが男女雇用機会均等法で母親が結婚後も辞めずに要するに夫婦で二世帯分の給料を毟り取ろうとするからしんどいという記述があった。それに耐え切れなくなって企業は一世帯分の給料を払う体力もなくなり、また、労働力の供給過多が起こって給料の低下を招き、結局共働きでカツカツ一世帯分の所得しか得られなくなってしまったという側面がある。まさに愚民の自業自得。乳幼児というのはカネというよりはとにかく手間がゝゝるので、目を離せないために人手を消費する。その大変さがわかっているから、それまで企業は養育費も含めて一家の稼ぎ手に一世帯分の給料を渡していたのに、結局やりがいとかに目がくらんだフェミニストのおかげで、男も女も貧乏に寄らされてしまった。別に男女平等ということであれば、女のほうが稼ぎ手で、男が養育を担当しても良いのだが、ところがどっこい、女のほうで男に養育を任せるどころか、男に自分よりもさらに稼ぐことを今尚求めている。そういう身勝手さが中流が衰退する原因となっているのに、もうなんていうかね。
 初等教育が無償なのは、近代化の過程でそれまでそうでなかった国民を富国強兵のために動員するために行ってきたことで、それまではむしろ家庭というよりは地域で教育を行っていた。というのも、農業が主であった時代は、とくに共同作業が重要視されており、ムラの習慣やその地でのやり方はその地で行うしかなかったし、そのほうが効率的だったからだ。前にも柳田の研究した成果を述べたことがあるが、日本では中等教育にあたる、13〜15歳にもなれば、子供は親元から離れて若者組や娘組などゝ呼ばれる若者の共同体で生活し、そこで先輩などから礼儀作法などを学ぶようになっていた地域が多かった。初等教育にあたる所謂小学校に行くような年齢だと、親の仕事を手伝うとかそういう形で家族労働に関わっており、その中で家庭のやりかたを学んでいったのだ。そういう時期でも、乳幼児は父母が農作業をしている畦道などに連れて行ったりして目を配っていたり、祖父母が面倒を見たり、農作業が覚束ない兄弟がお守りをしたりしてた。ムラが託児所みたいなものを作ってそれを当番制で面倒見たりしてたという例は皆無だったというつもりもないが、そういう資料を見たことはない。大体ヒトは生まれてから、家庭からムラと大きな組織に順応する形で所属を変えていったという感じにしか見えない。しかし、それはヒトの一人一人がその組織で目に見える形で共同体の成員として成長する形を見ることができる。ムラで生産されたものはムラを動かす原動力となっていったし、その生産に携わる共同体の成員も成長段階に応じて他の共同体の成員との結びつきを深めていくというイメーヂだ。
 ところが、産業化を進めるにおいて、そういう共同体の成員は共同体の成員で面倒を見るという構造を破壊しないといけない。生産と消費を分離して、生産手段を利用して消費地から搾取をするというのが本質だから、生産も消費も共同体の重要な要素である昔ながらの組織では、お互いが支えあう存在であるが、生産者と消費者が分離されてしまえば、搾取側と非搾取側にわかれざるを得ず、そしてそれは各産業というか利権を同じくする組織どうしでの貪りあいになってしまう。高度経済成長期のように、日本は生産をする立場、外国は消費する立場という風に立ち位置がはっきりわかれていれば、日本人であれば全員立場が同じであることが可能であったが、バブル崩壊以降、特に労働市場において日本人が分割されるようになった。つまり資本家が海外で安い労働力で生産したものを国内の(それまで生産者であった)日本国民に売りつけることによって、まだ購買力があった日本人からの搾取を始めたのだ。こうなると権力者は、大多数の日本国民の子供を同じ共同体の成員として果実を分け合う仲間として教育するはずがない。だからバブル崩壊後数年でモンペが発生して学校崩壊が起こった。そしてその種は臨教審・ゆとり教育の推進で既に準備が完了してたのである。あのモンペを発生させた教育の実態はまさに「消費者教育」であって、そうなるともう大多数の国民は自らの生活を向上させるという名目で消費させられる=資本家にとっては搾取対象という構図に既になっているわけだ。なので、そこには既に共同体を維持するための教育という観点はない。そしてそういう教育に染まった国民は、意識として共同体を支え、その見返りとして共同体から得られた果実を得るというそういう有機的な意識はない。個人の利益を最大化するという欲に駆られた消費者が出来上がっているわけだ。それが、とにかく子供の世話をするのは面倒だから他人に安く請け負わせたいという意識になって結実してる。働くのは確かに自分のためではあるのだが、それは巡りめぐって自分を成り立たせている共同体を支えることになっているということはもう名目だけになってしまっていて、結局目に見える共同体はなくなっているから自分が所属している意識も無いし、基本はアベではないが、自分がカネ儲けをするためのごくごく狭い範囲での身内にしか意識が回ってない。自分は産業に絡めとられて子育てをまともにしていないから、子供がそう育っていないし、当然育ってないから、同じ職場に子供世代が入ってきても意識の違いに愕然とするだけだ。子供は社会が育てるべきと口では言いながら、その実自分は育てるべき社会の一員としてちっとも振舞っておらず、自分の生活のためだけに働いているだけで、一方通行で都合の良いことを言ってるだけだ。
 そんな中、子供はさらに社会のことなんて考えないように育っているのにそのために社会で育てろというのはうーんといった感じ。むしろ若者のほうが、現実にそういう欲得づくの浅薄な人間関係にちょっとした違和感、それもいじめに遭ったり見聞きしたりして無意識的にでもこりゃおかしいんじゃね?と勘のよい連中が一部ヴォランティアなどやちょっとした市民運動に関わったりするぐらいで、しかしそういうのは組織化されているわけでもないから焼け石に水程度だから、結局のところ個人内の経験として昇華されてしまうぐらいで、それが大きなムーヴメントになることもない。
 まとめると、そもそも近代教育というのがお互い目に見える互いに支えあう共同体というものを破壊する役割を果たしてしまうし、外部に市場を求めることができなくなった先進国では、国内の特権階級と二分化され、国内植民地化されてお互いに支えあう共同体を作る方向とは逆方向にあるということからすると、かなり構造的に難しいといったところ。そういう構造に気がついて少しでも居場所を作り出すなり維持するなりするのかといえば、国民はそういう構造に気がつかないどころか、利己的な消費行動からむしろ自分の居場所すら破壊している段階であるということ。その一環が子供を社会に面倒を見させ(負担を増加させ)て、それが鏡写しのように貧乏人の負担として跳ね返ってくること。こういう観点を考えると、個人的には貧乏人の負担による教育の負担は百害あって一利なしと考える。
 下世話なことを言えば、初等中等教育ではその大半が教員の人件費とはいえ、児童生徒一人当たり一年百万円以上掛かってる。仮に一時間1500円で(大学生のいわゆる未熟な)家庭教師を雇うとして、一日六時間分9000円、一週間五日として45000円、一月四週として18万円、それが一年で大体200万円ぐらい掛かる計算になるのを、マスプロ教育でなんとか半額にしているといったところ。それを一人一人の個性に合わせた教育なんて土台最初っから無理だし、実際カネ持ちは家庭教師に月何十万も払って教育をしてるぐらい。それをさらに人手の掛かる(それをカネで済ますのだから倍数効果が掛かる)乳幼児保育、高等教育にかけるって正気の沙汰ですか?と言いたい。
 育児も介護も元々家庭内労働。今は結構難しい状況だが、家庭内労働に戻す*1べき。そうなれば労働市場がキツくはなるが、労働人口が一番足りないと言われているのが介護分野なのだから、その負担も減る。労働者が減れば報酬も適正化して高給になるから共働きでなくても十分まかなえる。男女平等を言うのなら男か女かどちらが働くかは家庭で決めてくださいとしか言えない。女が働きたいというのなら身勝手な上昇婚は有害だから撒き散らさないでください。 
 それでも今では都市が地方を収奪する構造が完成形に近いので、地方経済の循環ってのが難しいからしばらくはかなりしんどい思いをするから我慢してくださいとしか。あと、政財界が利権構造を強化したいから移民の促進って甘言を弄するから耳を傾けないでくださいといったところ。どう?、難しいでしょ。それだけ日本は壊れてしまったということ。

*1:工業生産力が低下ししているのに家庭内経済を外部化させることでGDPを水増しできたから、その数字を気にする層は必死に抵抗するだろうね。外部経済化する折に中間搾取してきた層もたんまりいるし。