ガリレイドンナ総評

 うーん、総評を書くの久しぶり。最初この作品の第1話を視聴したときにはなるほどこりゃインパクト弱いわとか思ってたけど、いざこうやって最終回を視聴し終わると、たしかにインパクトは弱いんだけど、なんか不思議な余韻が漂っていて、鑑賞後感は悪くなかった。泣くにしても号泣といったような大きな感動はないものゝ、じわじわ来る満ち潮のような感じか。おそらくそれはかなり考えられたバランスによるものなんだろうけど、上記でも述べたとおり、スタッフは視聴者の感情を不必要に揺らさない配慮が感じられた。
 さて、気になったのは背景である環境問題。地球の寒冷化が描かれていたが、これがおもしろい。今は温暖化とか特に日本で言われて問題視されているが、実際に人類にとって困るのは寒冷化のほうであって、温暖化はむしろ歓迎すべき変化。地球の歴史を振り返っても、今は間氷期であり、下手をすると間氷期が終わって氷河時代が到来したら一体人類のどのくらいが死滅するんだろうか?と思うと気が遠くなる。それはさておき、なぜ寒冷化を扱ったのかという理由が知りたいな。なんか結構考えていそう。しかし、これはさすがに作品中では自分が見る限り意図的に理由が描かれていないように思う。
 ガリレオテソロが高エネルギー物質であるということも、何を考えているのかよくわからんかった。普通高エネルギー物質というと、低エネルギーの物質にそれに見合うだけの高エネルギーを無駄を承知で閉じ込める?(吸熱反応)ということが必要なので、ガリレオテソロを消費すれば高エネルギーが得られるかもしれないが、そもそもガリレオテソロを作るのにそれ以上の高エネルギーが必要と考えるのが普通なので、まぁ何やってんだかという話になる。が、日本に飛んでいって終わったから、おそらくそのエネルギーの変換は父が作りかけて星月が完成させたあのエネルギー変換装置がキーになるとは思う。というか、正直あんまりそのへんのエネルギー量に関するリアリティはそれほど考えていないというか、地球のエネルギー問題を解決する凄いものぐらいに考えておいたほうがよいだろう。
 家族愛というのも、ロベルトあたりやブラガニ団の擬似家族(共同体)も含めた人間関係全般としてみると、機会を作っていろいろ描いていた。まぁ特別新奇さはないんだけど、昨今のアニメ作品に見られる豊かさゆえのめんどくさくてリアリティの希薄な人間関係と比べると、要素を絞ってうまく提示できていたと思う。
 最后に法廷劇を持ってきたのも今視聴しているウドバリセシルあたりとの関連が思い起こされてニヤリとさせられる。この作品だと裁判官はあくまで企業には買収されていないという描写で、ガリレオ姉妹が相手の弁護士に論点を絞られて彼らに都合のよい発言だけさせられ追い詰められている描写になっていた。やはり梅津監督とか、法曹関連の知識があるとか、そんなのなんだろうか?。それとも法廷劇自体が好きなんだろうか。
 というわけで、いやはや、尺が短いせいで描き込む要素が少ないが、ガンガン減らせるところは省略してバランスよく仕上げていたように思うし、なるほどそりゃそのおかげで薄味に感じたんだろうなとも思わせる。あとわりかし自分はEDの出来がよいと感じていて、物語の余韻をうまく引っ張ったり、逆に気分を切り替えたりするようなそんな機能があると思った。
 セシルのほうが肉感を出して趣味に走った作品とすれば、こちらはお行儀良く全年齢対象に作った作品といえばよいか。なんかとんがったところはなくてお行儀の良いところがちょっと損をしているのかな。まぁ確かにウけなかったのはよくわかるんだが、自分としては人気が出なかったのはすごくもったいない作品と思う。そりゃいろいろ減点材料がないわけではないんだけど、途中から世界名作劇場のようだなと感じたというのもあって、少し甘めに名作をつけておきたい。