フリージング ヴァイブレーション 第12話

 無双なだけじゃなくて、退場だった。
 ちょっとビックリ。存在感はあるんだけど、物語的には出番が少なく、あまり描写もなかったシフォンの犠牲で危機回避。人格を失っていたと思っていたアミリアもノヴァの中で意識がはっきりしてたし、いやもうね。ノヴァは天罰だというほのめかしがあったが、単にいじめのしっぺ返しというだけであって、別に神云々の話ではないという。E-パンドラ計画の責任者も、拘束されて権力をふるえなくなっただけで、相応の罰を受けたというふうにも見えず、まぁそれはそれで現実なんだろうなとは思いつゝ、物語としての決着としてはちょっと清算しきれてないなとは思った。が、この作りだと続編はあるような感じ。今回が最終回だという雰囲気も前回まで感じられなかったし、今回もOP映像がないとわかって自覚させられたぐらいだ。
 割と情感たっぷりに事態を描く割には、物語の構造がいまいち煮え切らないというか、やっぱテイストは'80年代までの日本のドラマとあんまり変わらない感じを受ける。たゞ、それが古臭くていけないか?と言われるとそうでもない。日本が'80年代のバブルを通じて古い価値観を壊し、それで得た'90年代やそれに続く'00年代で何を獲得したのか?、それが古い価値観を超克するものだったのか?と言われると、なんというか、昔より精神上よいものなんてほんのわずかしかなく、バランスの著しく欠けた社会を作り出したんじゃないか?と思わされる。それだけに、おそらく原作者も'00年代からの日本アニメを視聴しているだろうから、それから何か「これは良い」というものがないと判断したんだろう。日本でいうと昨今の安倍政権のやりたい放題、韓国でいうとフェリー事故の推移を見ると、物質的豊かさの向上とは反対に、乗り越えるべき旧弊悪弊はかえって増しているようであり、そういうのを「シュヴァリエの悪行を、個人としては全く罪のないシフォンがその償いを行う」という形に昇華させているところをみると、まぁそのへんの精神構造の変化を読み取って、日本だろうと韓国だろうと、今、こういう状態ですよという主張をしているように見える。
 前シリーズでは学園内でのいじめの描写が主であり、これは職場の環境悪化を描いており、今シリーズでは、上部構造のツケを末端の現場が払ってなんとかするというものを描いている。でも善側でも悪側でも主役は血筋・コネかよ!というツッコみはあるが、まぁ庶民がいくら足掻いても、全体の動向を判断し、それが正しかろうと間違っていようと、特権階級が全体の進路を決めているというのは間違いないということで、末端の国民はそれに振り回される・尻拭いをさせられるという構造は厳然としてある。そういう意味で、この作品では物語の進め方が古いドラマを想起させるってのは、むしろ新しい物語を提示するのに意味はないということの証左でもあるように思わされた。それっぽい描写はあるが、作品全体として日本市場で大いなるフックを持つと思われる萌え要素が感じられないのも特徴的。
 しかしなんだね、シフォン会長の背中に生えた武装とか、艦これの艤装と変わんないというか、結局のところガンダムに見られる「女の子のロボット化」のようにも思える。なんのかんの言って視聴者はロボットが好きなんだよということなのか。今梅津作品を見ているのでふと思うのだが、アクションとしては、ロボットものとしても人間の動きにしても、動作は派手だが、なんか中途半端。いや、アクションが売りでもないし、そのへんの描写が優れていても意味がないのでどうでもいゝことではあるが。
 評価は微妙だな。全裸シーンを白消しするぐらいなら、初めから隠しておいてくれたほうが自分的にはスッキリする。音楽も特徴的なんだが、ちょっと上滑りって感じもするね。しかしなんでか自分的には魅力的な作品だった。いわゆるちょっとやりすぎなところを見せて、視聴者に考えさせようとするところが合うだろうか。もちろんぎんぎつねのような叙情作品もすごく魅力的なんだが、こういう荒削りの作品も悪くない。社会問題を取り扱ったアニメはどうも最近少なくなっているように感じる(行間に込めるということもかなり少なくなっているように思える)ので、そういう意味では貴重な作品。露出多めなのがちょっとおしく、おもろで。ドン臭い作品だけど、続編があればチェックしたい。