ももへの手紙

 うーん、よくわからん。
 泣けたのは泣けたんだけど、妖怪の設定にストレスを感じながら視聴してた。傍若無人な彼らの正体が物語の進行と共に明らかになっていく様子はよくできてたんだけどね。空から降ってきた水滴が己を実体化するときに、なんで妖怪の姿を借りねばならなかったのか、どうせ現実の食料が必要だってことなんだったら、手近な雑誌で人間の似姿でいゝじゃんかと思ってしまう。メインは主人公の家族愛なんだったらさぁってなもんで。
 父娘のすれ違いあたりは「あゝ、そうなんだろうな」と思わせるものがあったゞけに、手紙の続きが謎仕立てになっていたのもよくできてたのにな。なんで人間ドラマを描くのに人間以外の存在を介在させるのかね。おじちゃんおばちゃんや同級生に郵便局員など、使いでのあるキャラは用意されてるのに、遠巻きにしか関わらせてもらってない感じを受ける。まぁ結局のところ死んだ父と娘との一度っきりの手紙の往還ってファンタジーがキモだったりするからなぁ。妖怪を介在させないんだったら実写ドラマでやれってことになる。
 一応大崎下島あたりがモデルの、架空の島らしい。わざわざ背景を実物と変えている。たまゆらと舞台が被ってるので、観光客誘致としてなかなか考えているんだなと感心する。自分はたまゆらを視聴後、日本残酷物語を読んで、大崎下島っつーか、御手洗地区はもともと無人島に近かったのが、江戸期に航路の中継地点として人工的に発展した島であることがわかって愕然とした。古代中世から続く歴史のある町だと思ってたんだよね。しかも流通のハブとして発展したんじゃなくて、色町としての要素が強かったらしい。とはいえ、江戸末期か明治あたりに船の性能が向上して立ち寄る必要が無くなったため、一度壊滅的に廃れたらしい*1のだが。なんかそういうのを知ってしまうと歴史って単純じゃないなと感慨に耽ってしまう。
 そうそう、作品としては惜しいってトコかな。たまゆらのほうがリアリティが無いんだけど、夢を見させてくれるって点では上のような気がする。こっちのほうがクォリティは高いんだけどね。テーマがテーマなだけに夢とか希望とかの明るさはいらないんだけど、視聴者に対するストレスのかけ方にもう一工夫欲しかったって感じかな。ジブリを意識した全年齢層向けの作品のように見えるので、こんなもんかとも思ってしまうのではありますが。

*1:乙女座は復興後の代物。