ゼロの使い魔F 第1話

 帰ってきたバカップル。
 えーっと、視聴して寝てしまったのだが、なんだろ?、最近帰宅して寝てしまうことが多くなった。大抵1〜2時間ほど後に目が覚めてしまうのだが、今回は朝までぐっすり。一応理由が無いことも無いが。
 というわけで、第3期から随分時間が経っての最終クール。第1期はそういや巷でやたら話題になってるなぁというぐらいで視聴してみたら、割と中世の考証をしているっぽくて(といってもリアリティなんて無いのだが)、少し感心した記憶がある。話の内容としてはドタバタ気味のラヴコメで、話の雰囲気としては昔のフォーマットゝそう変わりがないというイメージだ。なんで当時人気があったのか?を振り返ると、ツンデレが流行していたのと釘宮理恵の嵌りっぷりが理由じゃなかったっけ?。まぁそんなに自分の判断が正しいとも思えないけど。
 本当ならザッピングぐらい少しはして復習しとくべきなんだけど、生憎前作をどこにしまったのかわかんなくなってしまっている。そういや王女がなにやらちょっとおかしくなっていたような気がするが。ティファニアの煮え切らない態度とかも、そうそうそうだったってな感じだ。
 ミス・ヴァリエールのありかたなんだが、これもあぁそんな感じだったって思いだ。で、なんだろ?、なかなか面白いのが彼女の身分制における下層民への見下しと、貴族的な使命感の同居なんだよね。今、世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書)を読んでいて、これが古代から近代、もしくは現代までの経済の歴史を概観していて、また物の見方として面白いんだけど、ヴァリエールは王・諸侯(騎士)・庶民の区分でいえば諸侯に位置しており、柄谷によれば中世から近代への移行期に力を失っていなくなる身分なんだよ。中世の諸侯といえば、王から一定地域の支配権を認められ、その地の徴税権を負っており、これは今でいう国のやっていることなのだ。ところが、中世期に西欧では自由都市が発達し、貨幣経済の発達とゝもに王と商人が結びついて、他の王を圧倒し中央集権国家が成立していくらしいのだが、近代化とともに戦争が重火器が主役を占めるようになり、諸侯や騎士の出番がなくなったらしいのだ。で、王が諸侯の土地を取り上げ、徴税権を握り、諸侯はいわばサラリーマン化して官僚になっていくという流れだそうだ。つまり、土地の支配という視点でいえば、諸侯は土地の徴税権を握る限り、その地の一番エライ人になるわけだ。王が別にいるといえども、土地の実効支配者は諸侯であり、そりゃ確かにヴァリエールが傲慢であるというのもわかる。
 そこにヴァリエールが召喚したという形で、民主主義を標榜している才人が現れる。もちろん現代日本は民主主義などではなく、基本エスタブリッシュメントと呼ばれる日本の実効支配者が(またこれが合衆国の権力を背景に)、選挙制度というおためごかしをうまく利用して、やはり特権階級と被支配者という構造をとってはいるのだが、才人自体は若者であり、社会的に人間は皆平等という理念を抱いた状態で中世ファンタジー世界に飛び込んでくる。当然ヴァリエールは召喚した相手が社会的身分として自分と対等かどうかを判断して、当然のように召使扱いするわけなんだが、もちろん価値観が違うから才人とうまく折り合えるはずも無い。が、まったく未知の世界に現れた才人は誰かの保護がないと生きていけないわけで、いわば生活のために必要なものをヴァリエールに贈与してもらうという形で当初は落ち着くわけだ。が、その後の展開で、才人が才能を発揮してヴァリエールを(使い魔として)助けたりするわけで、それが才人からヴァリエールへの返礼(つまり贈与だ)になり、互酬的関係が成立する。そして驚くべきことにその互酬的関係を認知したのが、ヴァリエールの周囲の人たちだったりするのだ。確か才人を騎士に任じたのが女王じゃなかったっけ?。
 まぁかなりヘンな状況ではあるのだが、ヴァリエールは才人のことを自分と対等ではなく下の身分だと疑っていないのに対し、ヴァリエール以外の人全員は、才人のことを貴族ヴァリエールの客人ぐらいにしか思ってなくて、むしろ対等に扱っている。中世の諸侯なんて自分のものは自分のもの、領民のものは自分のものぐらいにしか思ってなかったはずで、そのへんヴァリエールが才人のことを自分の所有物としか思っていないというのは中世としては大変正しい物の見方なのであって、むしろおかしいのはヴァリエール以外の人たちなのだ。当初は魔法学園の生徒達も才人を見下していたが、ある一定時期以上経つと、ヴァリエール以外のキャラは全員近代個人主義的価値観を持っていると考えないとおかしい態度ばかり示している。そういった意味でこの作品世界はまったくもっておかしい。
 さて、そういうヴァリエールも恋の力で才人を対等とみなすルイーズに変わるわけなんだが、さすがに今期は彼女も近代個人主義的価値観に染まっているようで、才人を所有物扱いするのは女性性の成せる業という形になっている。才人は相変わらず近代的価値観なわけだが、そのへんこの魔法の有効な中世ファンタジー世界が近代的価値観でどのように変わっていくのか?の集大成が示されるのだろう。まぁルイーズが自分に出来ることがあるのなら…なんて言っているのはその変化の表れではあるよな。理念なんてものが見え隠れ…いや隠れてないだろうけど、これも基本は近代的価値観だろう。
 第1話としてはキャラの関係性のおさらいっていったところかな。実は切り口は面白そうなんだけど、物語としてはあまり見るべきものはないかもと期待度は半減している。惚れた腫れたやポエムなどで退屈はしないだろうから出来は悪くはないとは思うんだが、惰性と言ったら言い過ぎだろうか、付き合いで視聴してみるかぐらいの気持ちに近い。まぁ別にいやいやチェックするわけでもないし、もしかすると期待以上の驚きがあるかもしれないということで。