花咲くいろは 第23話

 祟子、SPやったらいゝ仕事しそうなんだけどな。
 う゛〜ん、中盤から最后にかけては、もう間が計算され尽くされているらしく、目が釘付けだった。よく出来た実写ドラマには、どんなに頑張ってもアニメは勝てないんだろうなと思っていたんだが、なんかその認識を改めなくちゃならないみたい。見ている最中はそうそう感激するってわけでもないんだけど、見終わったときに改めて感慨に耽るという感じだ。起伏にとんだ展開でないためにどうしても見た目のインパクトは無いが、こういう視聴後感になるのはかなり珍しい白眉の出来と言える。
 自分でなくても多分視聴者のほとんどが緒花に後を継いで喜翠荘の営業を続けるべきと思っているに違いない。スイのビンタシーンでこれまた視聴者の大部分が喜翠荘はブラック企業なんじゃないか?というインパクトを与え、実はスイの要求水準が高いだけであってブラック企業ではないということが後からわかるようになっていた。でも決して従業員が活き活きと働いているわけでもなかったのが、緒花が転がり込んできて体当たりで仕事に取り組む姿が周囲に影響を与え、今となっては従業員全員が喜翠荘をかけがえのない居場所として認識していることが今までの流れからも、今回の従業員たちの態度からもアリアリと窺える。
 次回敵はおかみさんという感じのサブタイだったから、きっと従業員が一丸となって喜翠荘を続けるよう努力をする回になると思うんだけど、多分スイの決意は変わらないだろうし、そしてその決断は正しいと思うんだよね。縁が跡継ぎだと決めているだろうし、緒花に素質があるからといってホイホイ変えるわけにもいかない。緒花はまだまだ経験が足りないし、縁の居場所がなくなってしまう。
 いや、なんつーか、もう映画化の話がポシャってその金が組織解散の直接の引き金になっているにしても、じゃぁ金が戻って映画化以前の財務状況に戻ったらそれでオッケーか?と言われゝば、やはり違うと思うんだよ。いくら祟子が頑張ったところで、縁夫妻に経営者の度量があるかと言うと、はっきり言って、無い。
 近況を引き出して申し訳ないが、つい最近、職場でそこそこの職掌の人(但し、組織のありかたの根幹にいる人ではないんだが、その人のおかげで組織の崩壊が免れているという実力の人)が言ってたんだが、ダメな人間はやってはいけないことを繰り返しやっちゃうと断言してた。で、所管の最高責任者がこれまた同じ失敗を繰り返していて、その人の在任中つまり今までずっと組織が崩壊過程にあるんだわ。その人はむしろ組織の末端のダメ人間に言い聞かせる形を取っていたので、結果的に指桑罵槐になってはいても、そうと分からないようになっていたので二重に凄いと思ったのだけども、組織のトップに必要な度量とはと考えると、自分の職場の失敗例を間近で体験しているだけに、とても若旦那には委ねられないと思う。基本他人の忠告を聞かないで自分勝手な判断をしてどツボにはまる、責任逃れに部下の首をきって保身を図る、何の償いも埋め合わせもしない、あとは定年近くてトンズラするだけっていう自分とこのトップの実例があるだけにね。で、そいつがやはり同じ失敗ばかりするのだ。
 縁はパワハラをするわけでもないし、能天気で先の見通しがつかないってだけなんだけど、視聴者が見てとても経営ができるとは思えない。祟子も行動力はあっても判断自体はあさっての方向を向いているし、とてもおかみとして従業員を束ねられるとも、縁の補佐ができるとも思えない。祟子は目的がわりと明確で、裁量によって結果が大きく左右されないような案件ならそこそこのパフォーマンスを示すだろうが、全体を把握する立場にはとても立たせられない。
 で、面白いのがスイとその旦那が、喜翠荘を譲られて開業したという由来だ。スイにとってはまぁ未練もあるだろうが、土地や施設を獲得するのにそう努力をしたというわけでもないだろうから、手放すのも抵抗は無いんだろう。たとえ従業員が意識を一つにしたところで構造的な問題は解決しないのだ。自分の職場でもかなりの数の職員が協力して作り上げようとした事案を1人のクズが管理職に取り入って全部台無しにしたことがあって、今もその尻拭いにほとんどの職員が奔走させられている始末だ。問題は従業員じゃないんだよ。で、映画化の件でスイはすべてを縁に委ねて、いわば彼を試したのだ。で、その結果は出たのだ。
 まぁ可能性としては従業員たちがおかみさんを説得して旅館の営業がずっと続いていくという形になるかもしれないんだが、ぼんぼり祭りで有終の美を飾り、閉館って流れが順当だろう。で、もし従業員がそれでもこのメムバーで旅館業を続けたいというのであれば、喜翠荘を継ぐという形ではなく、別の喜翠荘を作るという形をとるべきなんだと思う。いや、大抵の視聴者は喜翠荘が続いていくという展開を期待していると思うんだが、自分はスイは英断を下したと思うよ。
 今回は人間模様が見どころだったんだろうけど、やっぱ組織とは?、組織のトップとは?ということについて深く考えさせられた。