花咲くいろは 第26話

 感動のラストって感じゞゃねーな。
 例えば、しっとり終わるってのが妙に心に響くのが雑破業作品の特徴だったりするんだけど、それとも違うしな。かといって全然感動しないってわけでもなく、それは単に機械的に閉じてるわけでもないのでわかる。非常に抑制的で、汽車に乗り遅れたという下手な嘘をついて喜翠荘にお別れの雑巾がけをしていた緒花を見たスイが、目頭を押さえるその後ろ姿を遠景からほんの数秒描くってのでわかるんだよな。あの場面、顔を描かなくともアップで映し、涙を滴らせるとかでもいゝわけなんだよ。かといってスイが強がってしまって泣く素振りすら見せないってわけでもない。そこらへんのバランスが非常に考えられている。
 エピローグもよくできていて、自分なんかは全員カップルにするのかと思っていたのだが、結局緒花とみんちーだけだった。これも巴やなこちはやれ蓮さんだの次郎丸だのとくっつく可能性が本編中ではほのめかされていたんだけど、積極的に繋がるアクションがなかったので、特に進展も無かったらしい。よくよく考えてみれば喜翠荘関係者が全員くっつくというほうがリアリティが無いので、自然な描写だ。いや、単に自分がカプ厨なだけだと思う。
 というわけで、盛り上がらないわけではないけど、妙に静かであって、でも評価は低くない最終回だったワケだが、総合となるとちょっと迷ってしまった。切羽詰った状況で東京を追い出された緒花が祖母を頼って旅館業務に就き、そこでやりがい(と彼氏との良い関係)を獲得していく物語だったわけだ。こうやって一言でまとめてみると、'90年代に現実社会で大流行した「自分探し」のアンチテーゼなんだろうなという気がしてならない。というか、もちろん'90年代の自分探しなんてのは底の浅いものではあったわけだが、これが日本の失われた20年を経たこのときには、もう生活をある程度心配しなくてもフリーターをやりながら自分探しをするっていう余裕は社会からなくなってしまっているというのがまた皮肉だわな。というか選り好みしなくても職自体の数が無いという状況なのだ。まぁこの目移ろいしやすい現代とはいえ、人間所与の条件で頑張れば自分を獲得できるってまとめちゃっても良いんだが、それも味気ないな。緒花が身を寄せた喜翠荘は、到着早々いきなりビンタの場面に出くわし、すわこゝはブラック企業か?と思いきや、スイ自体は商売の基本に厳しいだけのちょっと余裕がないしっかりモノだったし、思い込みが激しいがその分目的意識のハッキリした友人と、目的意識はそんなになかったが自分を変えたいと思い変化を見せる友人らと知り合って影響しあいつゝ、職場を巻き込んで前向きに巻き込んでor巻き込まれていくうちに全員が今いる場所をかけがえのないものと認識して一丸となっていく。こういう人間関係を見るにつけ、緒花はユートピアを体験して、そして高校生という日常に最后戻っていったんだなと思うと、まぁターゲット層の高校生向けへの進路を考えるうえでの一つの指針だったんだなと思わざるを得ない。ある意味ハリポ的とも言えないだろうかね。まぁそこにいれば楽ができるって意味ではなくしんどいことも多いが、やはり一生懸命取り組めばそれがなんらかの成長につながるという夢のような世界めぐりをしたワケだ。人それぞれに悩みがあり、そしてそれもちょっとした気遣いだの頑張り(すなわちぼんぼるってことだろうが)でいくらでも解消が可能であるってのはまぁ平凡って言えば平凡ではあるよな。まぁあたりまえのことをちょっとおめかしゝてあたりまえに描くという。それだけにあまりパッとしない感じがする。本当のブラック企業だと個人の気遣いなどで変わったりなどせず、すり潰されてポイ捨てされるだけなんだが、そこらへん経営上厳しいが、ブラック企業ほどの倫理的欠陥を持ち合わせていないという仮想の職場を作り上げて視聴者にお題を提示する。よくできてはいるよな。
 というわけで、実は一般人が見ても「アニメなど子供騙しに過ぎない」と思われる要素は徹底的に排除されていて、いわゆる名作評価の条件を満たしているのだが、この問題を個人に収斂させていく卑小さがちょっと惜しいところではある。そして、人間老若男女だれしも悩みなどがあり、うまくいかなかったり失敗することは誰にでもあるんだから、それは心配しなくても良いんだよ、人それぞれに与えられた条件のもとで最善を尽くしていれば先は見えてくるし何か掴めたりするんだよ、いくら努力したって人間の力ではどうしようもないことだってあるよ…的な、もう高校生の将来探しに限らず、誰にでも問い掛けている体裁を取っているような気はするんだよ。でも自分のアニメ視聴熱が湧き起こって以来の心に残る作品って、たとえばカレイドスターだのゆるめだとAriaだのを思い出したりするんだが、この花咲くいろはがそれだけのインパクトを持っているか?と言われると、どうにもパッとしない感じがした。いや、だからカレイドAriaが名作か?と言われると、それらもそれほどでもないという。万人向けの良作ではあるが、ちょっとものたりないってところで、おもろ+ぐらいかと。うーん、余計な言葉が多すぎるな。だが推敲するのも面倒なのでご勘弁を。