星空へ架かる橋 第9話

 なぜか一番一馬から遠いはずの陽菜の担当回。
 あ゛〜、ダメダメ、こういうお涙頂戴モノには弱いんだ。泣きました、いじょっで終わるんだけど、それじゃぁなんなので。というか、脚本上、いくらでも陽菜に謝らせる機会がいくらでもあったのに、忘れてたなんて言い訳をさせてずっと引っ張ってきた理由がわかったな。しかしなんだな、陽菜がなんで一馬に惚れるのか、そのきっかけがよくわかんないな。もちろんその理由自体は今回のエピソードにふんだんに散りばめられてはいるのだが、それは後付けであって、今までの間にどうしてってのが欲しいところ。公園で恵んで貰った食料をかきこんでいる際の台詞から、どうも一馬は初のことが好きらしいというのはわかっているわけで、それでなお一馬に引っ付く理由が欲しいんだよね。フツー、先約を尊重するだろ、特に引っ込み思案と思われる陽菜なら特にそうするはずだし。
 陽菜父が無理筋承知で、むしろ一馬に花を持たせる…というよりは、(きっと)謝罪のつもりでってのが面白い。陽菜父はどうやら一馬が陽菜父と陽菜の仲を取り持ってくれたらしいというのがわかっており、そして都会から来た若造と罵っていたのも反省しているらしい。で、村の神事に参加させ、そこで一馬に勝たせてやることによって共同体の仲間入りをさせるという小憎らしい演出。なんか神明裁判を思い起こさせるな。熱湯の中に手を漬けさせて、正しい者ならば火傷をしないとかいって真偽をはかるやり方。まぁ実際にウソをついていないものは火傷承知で手を突っ込もうとするので、寸前まで見極めて止めた例が多いらしいが、少なくとも人為に拠れども結果的に神様に正しいと認めさせることによって真の仲間入りをさせたかったのだろうというのは想像がつく。まぁどうせ父が勝っても一馬が勝っても陽菜は家に帰るわけで。なんか頑固一点張りの陽菜の父が考えたとするにはあまりにも話が出来すぎている。
 というか、あれは実質酒井家による、一馬への娘の委譲だろ。すっぽ抜けた綱を勢い良く引っ張って、直角に曲がって陽菜と一馬が抱き合うのは不自然だよな。それはともかく、父と婿とが勝負して、婿が父に打ち勝って嫁を獲得するというのを公に晒すという形をとるというのは、やはりある種の披露宴に他ならない。いや、実際にストーリー上そうなるとはとても思えないが、コレ大抵、初ら他の女性キャラへの牽制になるんだよな、昔だったら特に。
 いやぁ、しかし陽菜の一馬へのアタック振りにはクラクラさせられたな。裸を見られて騒がないというのも、どう考えても一馬を男として心理的に受け入れているよっていうシグナルだし、一つの布団で一緒に寝るなんてことが何を意味するか、ご両人にわからない筈がない。…とまぁ、リアリティにケチをつけてばっかりなんだが、いや、実はこれはゲーム上では陽菜ルートでこういう手順を踏みますよっていうお知らせの意味合いが強いので、こゝはそういうことを念頭において視聴すればいゝだけのこと。なにより陽菜の女としての、そして人間としての魅力がたっぷり紹介されており、単なるお涙頂戴だけじゃなくって、なかなかにして楽しめる回だったと思いますですよ。でも、これでもう陽菜の出番はなくなっちゃったんだろうな。