星空へ架かる橋 第12話

 やっぱ雑破業らしく、〆は穏やかだったな。
 いやぁ、また泣かされちゃったよ。悲しいからとか嬉しいからといったわけじゃなく、なんてーのかな?、こう人の想いが繋がって、その末に泣かされちゃうんだが、理由をぱっと示す言葉が思いつかないな。
 あんま最終回単独の感想ってことになりにくいのだが、なんつーか気遣いの連続だったねぇ。前回までゞ、周囲はもう一馬と初が両想いってのをわかってゝ、今回はその総仕上げっていったところ。つむぎがリードして祭りをうまく利用してたが、陽菜がまたいゝ役を演じてたな。まぁあまり陽菜が一馬に対して恋心を抱くのではなく、あくまで一馬に対して義理堅いだけってポジションがうまい。つむぎからの電話で奉書を記した円佳も共犯者だし、じゃぁ伊吹はどうなんか?と言われると、どうも共謀者じゃなくって、単純に初の支援者って立場だった。一馬と初はお互いがぎこちなく、周囲は背中を押しただけのような感じだったが、この暖かさが堪んないな。
 結局のところ、なぜ一馬は初を選んだのかゞ明示的ではなかった。実は当初から物語の案内役としてのポジションが確定していたつむぎは一馬争奪戦から除外されていたわけなんだが、彼女こそ女性の中で一番優れていたというのは間違いないところだろう。残りの女性陣は実はみんな瑕疵があって(この作品が女性もいちおうターゲット層に見据えていることから、現実にはいないような完璧なキャラをくっつけてしまっては面白味が無い)、その誰が意中の男性を射止めるのか?という構造になっていた。で、初を見てみると、たぶん彼女は一番男性に対するアピール度が低く、なんで?と思われても仕方が無い。女性としての魅力以外に何か特技があるわけでもなかったし。ホラ、勉強面では伊吹が、料理では円佳が優れていたろ。陽菜は自分の進路について真剣に考えていたし、じゃぁそういった行動面で初に秀でたところがあったか?といえば、見当たらないと思う。
 で、じゃぁ一馬はなんで初を選んだのか?、他の女性キャラのほうがふさわしいのに…と思うか?と言われゝば、多分大多数の人間がそうでもないと答えると思うんだよ。単に初が可愛いから許すってんじゃなくて、ちゃんと一馬が初を選んだのには理由があり、そういうのは他の女性キャラのいろんなスキルに優先するんだよってのがなんとなく納得できるような作りになっているワケだ。というか、なぜ一馬はいろんなスキルの低いであろう初を選んだのか?について疑問に思う視聴者には、その理由を考えさせるように作ってあるように見えるのが、まぁなんだ、雑破業の狙いの一つでもあったんだろう。
 さて、この作品が田舎転校癒し系ADVという触れ込みだったから、田舎の魅力を十分に引き出すってものがあったと思う。まぁ田舎なんて人の出入りが少ないことをいゝことに、他に行ったら絶対通用しない我儘ローカルヽールなんてのがあったりするんだけど、そういうのは無しだよね。本作の舞台はどうも飛騨高山あたりらしい。あのあたりは昔から交通の要衝で、人の出入りの多かった場所だから、歴史的に見ても理不尽なローカルヽールは無かったかもしれないな。
 まず、一馬・歩が転校してきてよろづよに身を寄せるわけなんだが、このときに千歌が彼らの身元引受人になるわけだ。これ、昔の村だと、千歌はワラヂオヤだとかヨリオヤだとか言われる役を果たしている。彼らの責任を持つ後見人ってワケだ。で、学校はそれこそ自分が他の作品でも言っている通り、「若者宿」の役割を果たしている。一馬たちは村の風習や身の処し方を若者宿を通じて学ぶワケだ。法律が彼らの行動を規定したり、学校組織が村のやりかたを教えるのではなく、あくまで教育の中心は、村の住人であるという構造になっている。若者の知恵が足りなければ村の年長者が手助けをしており、決して南国原先生が教導しているわけではなかったよな。
 そして一馬たちも都会のスタイルをゴリ押しするのではなく、田舎のやり方に馴れ、比古南レースなど村の行事に積極的に参加する。それで仲間意識を深めていくワケだ。体操服でうろつく伊吹や、ちょっとヘンテコなこよりにも合わせていたよな。都会から来たから娯楽は激減したと思うんだが、そういうのを文句に出していたわけでもない。その土地特有の名産みたいなものがあって、そういうのにも素直に喜んでいたワナ。
 で、嫁取りだよ。この作品の構造が一馬とその周囲の女性って領域に限定されていたからわかりやすかったが、本来は大吾など他の男たちの思惑も含めて恋の鞘当てがあるべきではある。が1クールという尺ではこれが適当だとは思う。若者宿で大体誰が誰を好きであるといった枠組みが自然に形成され、いろんな働きかけはあるものゝ、基本自然にまとまりそうなカップルが周囲の承認も得た上で形成される。今回の打ち合わせの場面に見られるように、年長者が気を遣って恥ずかしがる二人の背中を押していたのもそれっぽい。で、周囲へのお披露目は村の行事、陽菜のときは綱引きだったが、今回は村の祭りのクライマックスを利用してたワケだ。そしてその当人同士の気持ちを親が阻害することも無い。なんとも昔ながらの村の自然なあり方ってのを充分示している。まぁ結婚すると一人前と見なされ、若者宿を去っていくわけなんだが、この物語も二人がくっつくところで終わっており、なんともキリのいゝところではある。
 いや、前にも言ったと思うんだが、この作品は田舎の良さを主張しながら、今までの他力本願的な村おこしって構造をとっていなかったってのが好感度高かった。果たしてこの山比古町に産業があるのか?、無かったとしてどうやって興すのかゞ気になるところであるが、さすがにその部分は本作の取り上げるべきところじゃないだろう。いや、もうこの作品では山比古町は観光が産業って言ってるようなもんだがな。でもまぁ、この街だと町民は老若男女ともヘンに気負ってなくて、身の丈にあった処し方をしているように見えるのがなんとも。
 というわけで、ストーリーテリングとしてそう目新しいものがあるわけでもなく、割と先の展開も読みやすかったのだが、逆にそうすることによって視聴者に余裕を持たせてじっくり行間を読めるようになっていた。衝撃的な事実だとか出来事も無いといえば無いのだが、だからといって退屈なことも無く、落ち着いて集中できたように思う。気遣いの穏やかさにたゞ応するだけに堕することもない。いや、もうね、たぶんスタッフが視聴者と作品を通じて対話ができるっていう構造になっているんだと思いますよ。とはいえ、そりゃ向こうのほうが圧倒的に上手なんで、こちらはたゞひたすら相手の提示に対して読み解いて納得するばかりなんですが。日常系ドラマにありがちな、平凡で見過ごしがちなものを鮮やかに切り取ってみせるわけでもないのに、生活をフツーに楽しんでしまうってのがね、やはり雑破業ドラマは見逃せないものがあるワケなんですよ。未プレイなんだけど原作も面白いのかな?。全話通じてお遊び回…テコ入れがなく、無駄が無いのも特徴的だったな。
 さて、どうだろう?。やっぱ萌えアニメ特有の媚びは過度だったのかな?。しかたのないことなんだけど、やはりアニメキャラとしての特性によって、やはりあんなキャラは現実にはいないよなんてことにはなるんだろう。かといって誇張抜きにキャラクター性を追及するのも何だしな。万人には…といった点で名作は無理っぽいが、文句無しにおもろ+ではある。毒気がほとんど無いのも面白いといえば面白いが、その分お花畑にはなっちゃうよなぁ。