GOSICK 第10話

 馬車に連れ込まれた久城は、拉致されたのかと思ったよ。
 いや、かなり迷った。馬車の中には密売組織の手の者が乗っていて、アナスタシアも久城もどっかに連れて行って始末するとか、そういう展開だと思ってた。視聴者をビックリさせたいのはわかるんだが、これは乱暴すぎるだろ。視聴後何時間か勘違いしてたよ。
 うーん、何が言いたいのか搾りきれてないのかな。もちろん現実というものは、誰か観客がいて、そいつのためにわかりやすく動いてはくれないから、ある意味リアリティがあるといえばあるんだが、こう脈絡をすっ飛ばされるとこちらとしては混乱する。
 今回の目玉は、美術品密売と子供誘拐&人身売買の非道さを暴くものであったのだが、あまりこういう悪に対して考えさせる要素がないように思えた。密売にしても人身売買にしても、現代日本でいうところのオリックスによる郵政私物化、プチエンジェル事件のように大抵は政治屋と商人が結託して行われるものであり、こういう痛快冒険モノに近い物語のように解決がなされることに違和感があった。オークション現場にいた連中を見ても上流階級の人間ばかりのようだったし、普通警察は買収されているだろ。昔がいくらのどかな時代だったからといって、これ程まぬけでもなかったとは思うんだがな…。
 細かいことついでに言っておけば、ダイアモンドがいくら硬いといっても、あれだけ複雑な加工をされていればどっかに傷の二つや三つぐらいついており、落としたらその傷のところで(砕けはしなくとも)割れるぐらいのことはするだろう。まぁガラスとダイアの違いが示せれば事足りるので、ちょっとぐらい誇張したって悪くは無いんだが。
 で、ブライアン・ロスコーとの因縁や、ヴィクトリカの家の事情、どうやら本作の主題であるヴィクトリカと久城の絆がちらほら見受けられたんだけど、これらはまぁ伏線として妥当なところだろう。というか、ヴィクトリカの掌の腫れ?傷?の思わせぶりな描写はなんなんだ?。ジャンタンの事件は解決してしまったし、なにか意味でもあったんだろうか?。っつーか、普通に考えたらこれで事件が終わったのではなく、ヴィクトリカの風邪が治るまではドタバタが続くんだろう。
 久城の土産である、ガラスの靴はさすがに本作ならではといったものだった。あれがパイプ置きであるというのをスグには明かさないのにも感心。でも肝心のヴィクトリカとシンデレラの関連が自分にはわからなくてもどかしい。単にシンデレラは女の子の憧れだからというものなんだろうか。
 というわけで、感想を書く段になるとどうにも粗が目立つのだが、視聴している最中には別に気になっていない。とにかく展開が派手で、じっくり考える余裕がないまゝ次のシーンに移るので、めまぐるしいことこの上ないのだ。で、結局のところ一つ一つの事件はビックリ箱ぐらいの効果しかなく、この作品で言いたい主張ってのはぶつ切りにされて、かなりバラバラに配置されているっぽい。で、この作品が推理小説の形をなしているように、いろんな要素が散らかってはいるが、ある時期になるとすべてが再構成されて大きな構造が現れてくるんじゃなかろうか。たしか「光と水のダフネ」がそんな感じだったよな。一つ一つの事件が子供騙しっぽく感じられはしても、少なくとも退屈はしないので、気長に見守っていくつもりではある。が、本当に構成がそうなのだとしても、多数の視聴者にはハードルが高いんだろうな。