伝説の勇者の伝説 第21話

 ルシルが目を開けたよ。
 人を殺して悲劇の修飾。短髪ピンクは今回殺すのかと思ったけど、そうしないんだな。っつーか、大鎌少女の相方は前回で本当にくたばっていたのかな?。正直こういう絶叫ポエムがこれだけ連続するとげっぷが出てくるのだが、今回はガスタークに対する憎悪を煽る(というか敵対関係をはっきりさせる)のと、行動に踏み込ますための背中押しという点では確かに必要だろうと思う。
 今回気になったのは二点。権力の使い方とヒロインの中性々だ。
 権力について言えば、魔眼の保持者ってのはその力を自分の中に内在しながら、基本的にはそれを極力使わないようコントロールしている。が、ガスタークのピンク髪兄弟は、自分では実力がないくせに、勇者の遺物だの指輪だのとやらを手に入れて権力を強化、そしてその強大な力をなるべく使わないようにするのではなく、やりたい放題で人殺しも厭わない。それでいて前者は化け物呼ばわりされるわけなんだが、どう考えても客観的に生かして置けない危険な化け物は後者のほう。持っている力をどのように使うかはあくまで人間なのであり、力そのものが善だの悪だのというのはナンセンスってのはどっかで言ったよな…と思ったら、昨日視聴したと禁Ⅱなわけだが、これもそうだろう。
 さて、ヒロインの中性々だが、それは今回のフェリスのありようだ。言葉遣いからしてフェリスは自分が女であることから離れちゃっているわけではあるが、どう考えても、フェリスのライナーに対する感情は恋愛っ気がないように思える。戦友だとかというのも思い浮かぶ。師とはちょっと違うような気がするが、ライナーを導く存在と考えるとしっくりくる。前にもフェリス自身が不幸な過去を送っていたから、ライナーとは数少ない共感しあえる仲間なんだろうというのを述べたが、なんというか身近な存在というよりは人格者的な距離感があるような気がしてならない。
 でだ、フェリスが女性というよりは中性的と考えた時に他のヒロインはどうかと考えたのだ。まず、キファだ。学校時代は彼女は確かにライナーに恋愛感情を抱いていたようなのだが、こゝに至って大人になったというか、惚れたはれたって感じは抜けている。まず死線を潜り抜けていること、ライナーが牢獄に入ることでキファは彼に莫大な借りを感じていることが挙げられる。もう少女の時期をとっくに過ぎているのだが、じゃぁ大人の恋愛か?と言われるとそれともちょっと違うような気がする。だから、女性的というよりは、貸し借り関係の要素が大きい分だけ中性的と感じたのだ。次号予告だと拷問を受けているようなカットが見られたが、こゝらへん関係性への言及が楽しみではある。
 で、ミルクなのだが、ライナー大好きっ娘であるからして、当然彼女が女性的と思ってしまいがちなのだが、そういや彼女とライナーのつながりってのは、ライナーがミルクを幼少の頃助けたという、やはり貸し借り関係の継続なのだ。彼女が今の、決して不幸ではない境遇にいるって状態も、たぶんライナーに報いたいという一心が実現させた部分が大きいだろう。で、ミルクが仮に男だとして忌み破り追撃隊の隊長として追っかけをさせたところで、まったく違和感がない。そこに好きであるという感情を抜いても全く成立してしまう。なんつーか、自分の大好きな「鬼平犯科帳」の密偵のようなイメージと重なるのだ。もちろんミルクがライナーを好きであるという要素を絡めても破綻しないように作られている。
 まぁ別にいちゃいちゃシーンがないからというわけでもないんだが、こういう話の仕立てだと、例えばライナーがあれほど現実社会と関わるのがめんどくせぇといっていながら、このヒロイン三者のいずれかとくっついてひっそりと隠れて自分たちの世界に浸って幸せに暮らしました…っていうのが想像しにくい。情感はたっぷりあるのに、それが男女が惹かれあう要素ではなくって、あくまで人間としての存在理由にまで踏み込んじゃっているだけに、恋愛要素が吹き飛んじゃっているという感じだ。ライナーとくっつくのがフェリスであれば尻に敷かれるだろうし、キファだと対等で、ミルクだとご奉仕されるという上下関係三種になっている。こゝらへん同じ男女ペアで戦う作品でありながら、ざくろとは全然雰囲気が違う。ざくろのほうは色気たっぷりだが、こちらはほとんど感じられない。かといって、仮に三人のヒロインの誰かとくっつくとして、そういう色気なしでもこういう関係って良くない?と思わせるところがなんとも面白いんだよな。