伝説の勇者の伝説 第8話

 こりゃまた見事なダイジェスト風味だな。
 エスタブールの民のためにも、今、この男を失うわけには。という台詞の「この男」とは誰か?が最大のポイントかと。普通はクラウだと思うわな。自分も聞いた瞬間には何の疑問もなくそうだと思っていたのだが、しばらくたつと、アレ?、実はミランのことじゃね?と思い直した。あの時ノアの記憶の中にあるのは、民のためと言いながらその実自分が支配者になるために国を売ったサラウェルと、威勢はいいが実力もなんもなく民の犠牲を厭わない貴族の姿。そして今彼女の目の前に居るのは、すべてを打ち明け、王のためなら自分の手を汚すことも厭わないミランと、口でキレイ事を言いながら直情径行的につっかゝる、反乱軍貴族のようなクラウ。クラウがノアの命を救ったからどうしてもノアがクラウを庇って提案をしたのでは…という流れに見えてしまうのだが、ノアも民のためなら自分を捨てることも厭わない人間なので、エスタブールの民のために何が一番なのかを悟っての発言とみるほうが妥当と思われる。
 そして、ミランが素直に自分の意図を長々と明かしているというシーンが、ノアを試す…もしくはノアの指導者としての成長を促すという構造にもなっている。まぁミランはいつからあの場に居たのかはっきりはしないが、少なくともある程度はノアとサラウェルの会話を聞いており、そしてノアがサラウェルに殺されそうになる窮地をミランが救っているという構図にもなっているわけだ。それまでの姫はキレイ事を望むだけの流される女だったのが、あの台詞のあとには自分で行動し、自分で考えて、自分で交渉するという王に変身しちゃってる。そしてミランとの交渉事は確認すらしないが、クラウとシオンにはわざわざ信じるということを口に出して言っている。ノアが、ミランかそれともクラウ・シオンのどちらに信を置いているかは明らかなような気がするが。
 というわけで、どうも今は理念は素晴らしいが今一実行力に欠けるシオンを、仕事の出来るミランが支えるって構図を視聴者に植え付けたいらしいな。モノローグなんかでミランの心情を示したりしないのもわかっているとしか。それやっちゃうとくどくなり過ぎるんだよね。描写はフツーだし、テキストとしても端折る部分が多すぎて、ちょっと完成度は低めなんだけど、こういう提示の仕方が上手いので結構楽しめる。いや、脚本というかスタッフは苦労してると思うねぇ。あ、フェリスとライナーは今回は添え物にしかなってませんでした。