閃光のナイトレイド 第10話

 桜井のおっちゃんも粋なはからいをする。
 で、桜井機関のメムバーも大概大人だよな。しかしそうなると桜井のおっちゃんが何を目的として工作活動しているかが不思議ではある。まぁ表向きは日本軍の下請けを淡々とこなしているように見えるわけなんだが、今のところ高千穂勲に対する個人的な敵対心はなさそうで、上から指示でもあれば暗殺でもなんでもやるんだろうが、特に刺激などせずにいるような感じはする。
 まぁ新型爆弾のリットン調査団へのお披露目から、勲はアジア独立運動を新型爆弾を背景に展開するんだろうなと想像はできる。が、勲が指揮する組織ってのが公式には認められない存在っぽいので、どうするつもりなのか?。まさかアジア各国に新型爆弾を提供して、独立の後押しをするとか?。いや、それって日本にも新型爆弾を渡すってことかと思うと、この上もなく危険なかほりがするのだが。
 しかし、チェコからウラン鉱石の輸入をするとか、葛が見た設備はどうも6フッ化ウランの多重遠心分離器っぽいとか、何気にワクワクする考証。画面の明るさは、中国に行ったことのある自分にとっては埃っぽさが無くてちょっと物足りないんだけど、当時を再現する意気は大いに買いますよ。
 桜井機関の4人がまぁそれっぽいな。葛はやはり勲に共感したな。妹は問題にけなげに立ち向かおうとするんだけどどうにもヘタレてしまうのがな。かわいらしいといえばそうなんだが、物語のドライヴ感を削ぐのがどうにも。が、ここでヘンにキャリアウーマンよろしくバッタバッタと敵をなぎ倒すような勢いを見せられても困るわけで、やはり時代に即した表現にはなっている。棗はまぁでしゃばりすぎないのがそれらしい。葵は会議を勲に見せてもらっているわけで、新型爆弾がアジア解放の決め手だって事は予想がつくだろうに、あの敵愾心はどこからくるんだろうな?。新型爆弾に対する嫌悪感があるようにも見えないし、かといって勲のアジア解放の大義名分に対する考えも見えてこない。いちおう葵は当時の満州国成立の意図をシニカルに分析できる頭のよさがあるわけで、勲の理想をキレイ事として切り捨てゝいるのならそれもいゝんだけど、そういう風にも見えないしな。かといって新型爆弾の存在が世界のパワーバランスを崩すという大局観を持っているようでもなさそうだし。単に桜井機関のメムバーを惑わすから気に食わないって感じが濃厚。で、それもらしいといえばらしいんだよな。
 そういう意味では4人のあり方は予定調和的といえるのだが、この妙な落ち着きが作品の魅力*1を削ぐにしても、結構アジア解放ってテーマが浮き彫りになっていて面白いと思うんだがね…。ソ・ラ・ノ・オ・トに引き続いて、この作品もそれに輪をかけて人気が無かったらしいが、もったいない。'30年代モノって、どマイナーではあるんだけど、題材を無理なく処理していると思うがなぁ。まぁ人気が無い理由を挙げよと言われれば、すぐにでも10や20は頭に浮かんでくるのでむべなるかなという気がしないでもないんではあるが。

*1:いや、この落ち着きこそが作品の魅力ではあるのだが。