閃光のナイトレイド 第9話

 なぁんだ、風蘭はまだ出番があったのか。
 でも今回はやけに打ちひしがれてたな。せっかくの可愛さが出てなかったよ。
 葵と雪菜がそれぞれの想い人と出会い、再度別れるの巻。勲はやけに紳士だし、静音は運命を受け入れる強い人間として描かれている。自分の記憶だと、昔の物語では男は理想に燃えており、他人に対する配慮なんてお構いなしに突進する様子が強調されていたし、女は状況に流されるのではあるがたゞひたすら耐えるか弱い存在として描かれていたように思う。要するにだ、昔の物語のフォーマットに従いつゝも、男は思い遣りが女は決断力がプラスされているところに変化が見られると思う。CAT'S EYEにすべてを代表させるのもなんだが、'80年代ぐらいのアニメは、例えば男ってのは俊夫のように女に配慮されているのにそれに気付かずひたすら自分の美学を追い求めていたし、女ってのは瞳のように実力があっても男を立て裏方に徹するってものが多かった。
 だから、'80年代はそういう男や女の姿を示すことで、逆説的に「男はもっと周囲に配慮すべき」、「女はもっと表舞台に出てもいゝんじゃねぇの?」ってことを主張していたと考えられる。あの時代は確かに配慮に欠ける男も多かったし、そんなに控えめにならなくても十分実力があるんだよって女も多かったように思うし。
 そして今度は勲や静音のあり方だよな。勲ってのは欧米列強の帝国主義に搾取されるアジアを(多分)救う役回りで、かといって理想を追求するあまり周囲が見えなくなっているわけでは決して無い。葵もアジア団結の秘密会議に荒っぽいながらも裏口に招待された。そこで勲はありのまゝの主張を見せたワケだ。雪菜も最初の待ち合わせ場所に行っておれば荒々しい連れ出しもなかったし、今回だって勲は自分の心を隠すことなく見せている。それもアジア解放のキレイ事(も見せちゃってるのか?)じゃなくって、暴力も辞さないって影の部分をありのまゝ示している。相手の決断に無理強いはしていない。
 静音はどうなんかね?。ちょっとわかりにくいところがあるんだが、預言者ってのは為政者の背中を押すことゝか言ってるから、本当にスピリチュアルな能力があるわけじゃなくって、ただのチアリーダーなのか。システムとか言ってたしな。が、能力もあるとか言ってたから、桜井機関だとか勲の部隊のように能力者なのかもしれないな。で、彼女は運命を敢えて受け入れるという決断をしているワケだ。まぁこういうパターンは神に捧げられる生贄の物語という形で昔からあったと言えばそうなのだが、近代大衆小説だったら「私を連れて逃げて」だよな。で、多分静音は自分の預言というより、為政者の背中を押すことが、全体の不幸に繋がることを知ってる。で、その重責は自分だけが背負うって決断をしてるんだろう。
 で、どうもそういう勲や静音のあり方を手放しで肯定しているようにも思えないんだよな。たぶんスタッフはCAT'S EYEを見た世代だろう。そしてある程度はあり得べき男や女の姿であるという形を取りながらも、俊夫や瞳が殻を破る存在であると示していたように、勲や静音もやはり殻を破る必要はあるんじゃね?という主張のようにも思える。今後のストーリーの展開でそうかそうでないかがはっきりするとは思うんだが。
 うーん、桜井のおっちゃんも頭が痛いだろうな。今回声がやたら二枚目っぽくなってたよなぁ。桜井がどこまで把握しているかにもよるんだが、すべてを見通しているんだとすれば、もう4人はお払い箱だわな。かといって切り捨てるには惜しい才能ばかりだし、そもそも4人の能力相手に罰することができるのかってところもあるだろうしで。葵も勲のように、まず会うだけにして、その後の善後策を講じていくってしていればなんとか収拾のしようもあるんだろうけど、それじゃぁストーリー的にドラマチックにならないしで難しいところ。アジア主義の活躍を見たいという立場としては、ぜひ雪菜には勲の下に走ってもらって存分に才能を発揮してもらいたいところだが、ありえんだろうしな。いや、結構勲も考えているとは思うんだよ。葛や棗は思想的に勲に近い。雪菜は身内だから志を包み隠さず打ち明ければ納得してくれるだろうと考えたと思うし、葵も理解力が無いわけじゃないだろうから、状況を見てもらえれば賛同してもらえるとばかりに行動してるわけだろ。成功すれば勲たちを監視している目を潰すこともできるし、桜井機関の優秀な能力者も手に入れることができる。で、勲は信義はいちおう通しているワケだよな。歴史を改変するわけにはいかないから勲の理想は実現しないんだろうけど、面白そうなのは軍の狗である桜井機関より、勲たちの組織のほうではあるんだよな。