鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 第61話 神を呑みこみし者

 うん、こんなものかな。
 いやぁ、クライマックスなんだけど、GyaOだと接続状態が悪くて止まるんだよね。それで台無しになっている部分があると思うと、ちょっとかわいそうな気もするが。
 おとうさまが神を呑み込むんだけど、ホーエンハイムの周到な準備により、それが阻害されたって考えていいのかね?。とにかくアメストリス(人口5000万人らしい)人から奪った魂が元に戻った。
 結局賢者の石ってのは、人の世の生き血を啜りの「生き血」に相当するものであって、一般人を搾取して得た特権階級の権力ってことなんだろう。それで神の力、もしくは真理を得られるものか?と考えると、それってどうなの?、いやそもそも神の力とか真理って何?って思ってしまう。おとうさまとやらが神を呑み込んでまでやろうとしたことは何か?、それはそんなにおとうさまにとって魅力的なものなのか、いや、おとうさまだけでなくとも、それを魅力的と思う人がたくさん存在するようなものなのか?、どうせよくよく考えてみれば対したことの無いものなんだろ?、と思わずにはいられなかった。
 そもそも“神の”とか、“真理”とかいう接頭語をつければ、あたかもそれが人智を超えた凄いものだと思ってしまうんだが、そういうこけおどしもどうかなぁ?と疑問を感じてもしまう。例えば神は万物の創造主だとか、全知全能だとかいう属性を付与されているわけで、だからこそ神が人間を創ったなんてことが言われるわけなんだが、それは得てして逆転しているわけだ。人間が神を創造したわけだろ。人間が理解できない世の中のすべての事象を、「人間ができないことをできてしまうスゴイ存在=神」なるものを仮定し、すべてそいつの仕業にしてしまったのが、原始宗教的な一神教のあり方のような気がするわけだ。なんでもできると仮定しながらも、神はそもそも人間が“想像”した存在だから、人間が想像できる範囲を逸脱することが無い。考えても理解できないことをすべて神の御わざとしてきたわけだから、とんだ思考停止だよな。
 で、宗教のあくどいところは、人に理不尽を押し付けるときに、そういう思考停止を他者にも強要することだ。権力者が自分の欲を満たすために神を持ち出す。自民党60年余の日本支配での擬似民主制の業の深さは、その神が「民主」という形をとっていたことだ。実際にはその「民主」ってものは、権力による利益誘導だったり、コネによる利権の固定化だったりする。でも実際には一般人からの搾取が権力の源泉だったわけだ。
 だから、おとうさまの神を呑み込んだ果てにあるものを描“か”ないし、描けるはずも無い。そして繰り返し描かれるのは、搾取の象徴である賢者の石or血の色である“赤”なのだ。そして権力者の権力の源泉を止めるのは、やはり搾取を各構成員が拒否することであるというのも言われていたような気がするのだがどうか。まぁ今回の話のキモはそこら辺だろうと思うのだが。
 なんかあっけなくラースとプライドが退場。ラースは矜持を持ちつゝ、プライドは矜持を捨ててお亡くなりにという対比でいいのかな?。それぞれラースは他者を見下す傲慢から他者を対等な存在として戦って死に、プライドは自分(の入れ物)を捨てることで自尊に反する行動をとって死ぬという、それぞれに与えられた象徴とは逆の結末に。ラースに関しては、言っていることとは反対にちゃんと言葉を残しているし、それがホークアイへの贈る言葉にもなっていたのがニクい。プライドに関しては、てっきり入れ物からホムンクルス分を取り除いて余生を贖罪のために送らせるとか予想したんだけど、あんまそういうことになりそうもないな。ラースの死を持ち上げた分、プライドは子供の格好をさせていたせいかもしれないが、幼稚な考えのまゝでの死に様だったように思う。
 まぁそんなわけで、自分的にはあんまりインパクトは感じなかったのではあるんだけど、見ごたえは十分にある回だった。