咲-Saki- 第9話

 先鋒戦に大将を持ってくる妙。
 意外だった。大将はすべて大将戦に持ってくると思っていただけに、この不意打ちにはやられた。が、それぞれの高校のカラーはキャプテンが担っているわけであり、大将戦ですべてキャプテンがカブってしまうよりは、それぞれの戦いが引き立つというワケだ。よく考えているわな。しかし、メムバー一人の勝負にまるまる1話使うわけね。そんでもって卓上の4人にクローズアップすると。でも鶴賀は扱い低いな。視聴者向けには清澄と龍門淵の二強に、ちょっと格下の風越を絡めて二強の引き立て役にし、鶴賀は今のところ完全に添え物だな。でも、客観的(作品世界の下馬評)に見れば、勝負は昨年の二強である龍門淵と風越の勝負になっている。しかも清澄はアテ馬になっており、先鋒戦では風越が昨年の雪辱を果たすといった結果になっている。ウマい。
 さて、組織論的にそれぞれのチームをどう解釈したらよいのか、前回の話から考えてみたのだが、これはどうも日欧米の対比に良く似ているように感じた。自分は目立たずに協調を重んじるヨーロッパ型は風越。個性豊かなメムバーが百花繚乱的にオールスターチームを組む龍門淵は合衆国型。そして、清澄は日本型。
 清澄のタイプは、無論戦後の“社員は家族である”って企業文化だ。合宿は会社の慰安旅行のメタファーだし、前回試合後の屋台のラーメンを喰う描写は会社帰りに赤ちょうちんのメタファーだ。全国を目指すという目標は業界シェアNo.1を目指していたのと重なるし、後輩の面倒見のいゝキャプテンって構造も、個人主義的なヨーロッパとも、ボスが一番って合衆国とも違って、あくまで日本的。裸一貫で会社を立ち上げた経営者・管理職(竹井やまこ)が、自己主張のちょっと弱い高学歴社員(咲や和)を大切に現場で鍛え上げるって構造も、高度経済成長期からバブル期に入る直前の日本の企業文化に非常に近い。戦前やバブル以降の日本の組織はあまりに劣っているので、欧米にこてんぱんにやられるのが筋だが、戦後のバブル期以前までの日本の組織はジャパンアズナンバーワンなわけで、これから勝ち進んでいくであろう清澄にぴったりといえばぴったり。
 うーん、原作者はどうも女性らしいのだが、組織論的なものを埋め込んでいるのはまず間違いないとは思うんだけど、日欧米の組織を解釈してモデル化したのかどうかまではわかんないな。組織の性格付けを際立たせるってのは昔からの手法ではあるワケだし。それともアニメ化による改変だったりするのか?。
 風越キャプテンの優希支援もなかなか面白かった。ただ、描写として福路の描写がお人よしに偏りすぎているきらいはあったかな。極端にしないと「優しさには裏があった」ってのも引き立たないとは思うんだが。視聴者的には気遣いの福路が報われて溜飲を下げるって展開は嬉しい限りではあるのだけども…。