スカイガールズ 第26話「それぞれの…」

 手を振ったぐらいでこけるようなバイクでもないだろに。
 第1話を見返してみたんだけど、泣けてくるねぇ。自分の第1話の感想も見返してみたんだけど、もう企画の胡散臭さを疑う様子が香ばしい。まぁ見かけからして萌えと軍隊の合体なんで一歩ひいた目で見てしまうのも無理はないですな。しかし今第1話を見て、初めっから真剣に作っていたのがわかります。やっぱ見かけで「こりゃ受け付けねぇ」といった人もいるんでしょうが、もったいないといえばもったいない。
 ソニックダイヴァー隊がレスキューとして再出発というのは、さんざん投資してきた開発案件をこのまゝドブに捨てるのももったいないという観点なのか、兵器開発は最先端を行っとかないとダメで技術維持の観点なのか、それにしても多分救急用としても開発コストは莫大だろうし、維持費用もかなりのもんになると思うんだが、そこらへんあんまりツッコんでもだめだろう。そこらへんちゃんと救助用のエピソードが盛り込まれて、しかも露出して一般に認められているという体裁を取っているのはよく考えられている。でも世界各国から搭乗員を募るか?という疑問も湧くが。
 しかしワーム殲滅後の平和な世界を描くのもなるほどだし、戦闘ではなく平和のために一度スカイガールズを飛ばせてあげたかった冬后の思いやスカイガールズ、および周辺の人々という構成で〆というのもシリーズのまとめとしてなかなかだったと思う。これも静かに閉じましたな。
 さて、結構自分的には途中引っかかる部分も多かったのだが、気になったのは怒涛の流れの中で過剰な自己犠牲賛美はなかったか?、安易な軍国主義礼讃になりうる要素は無かったのか?というところか。今までの中で結構それを気にする発言もしてきたのだけども、全体を見終わってみて、ちゃんとバランスは考えられていたかなと思う。現在の日本の状況は、むしろ共同体や家族ですら解体されつつあり、そのなかでの理想的な共同体幻想を守るためのお涙頂戴ものっていうのは、分断化された個人がよりどころを求めるあまりについつい嵌りこんでしまう危険性がある。そのなかで、帰るべき共同体を持つ音羽にせよ、家族を持つ可憐にせよ、ちょっと個人主義的っぽい瑛花(複数の要素はもたされているのだが)にせよ、きちんと戦う背景みたいなものは設定されており、また共同作業を通じて仲間での紐帯も無理なく描いて、決して「特権階級に都合のよい幻想」に振り回される姿にはなっていなかった。日本人が自己犠牲描写を好む性向でもあり、かといって海外ドラマのように戦うモチベーションが全くの個人の都合で振り回されるというのも萎えるので、たぶん現時点で微妙に考えられたバランスを取っていると思われる。
 その上で各人の事情を踏まえたいろいろな人間関係上の要素を織り込んでいたわけで、各話単発モノとしても楽しめるものであったし、シリーズ全体として通してみてもブレはない。ワームは何の暗喩か?という点については物足りない気はするんだけど、そこを深めていったらかえって混乱するんだろう。もう理屈っぽくて見てられない作品になった可能性はある。尺的にも詰め込むには足りないといったところかね?。初めっからワーム側は敵として対置されているだけで、キャラとして一切の描写がなく、まぁ突き詰めて考えれば全くのヤラレ役であったわけで、途中に明かされた設定ですらなくても通用するといえばいえる。
 まぁいろいろ考えても、兵器少女もしくは島田フミカネキャラの装甲・武装と生身の少女が合体したキメラをアニメ化するのにココまでがんばりますか…ホント頭が下がりますなぁ。さすがに機械と生体の合体には無理があるだろう→でも肌の露出が多くて兵器を扱う少女という形は保ちたい→がらすきの機械を水着同然の少女が動かすという設定なら無理がないんじゃね→ナノスキンとか色っぽくね→敵と戦う設定を詰めたらいいんじゃねみたいな流れだったと思うんですよ。まぁ大まかな戦いの枠組みは既存のものから拝借するにしても、よみ空にも通ずるちょっとリアル志向のところまで、日本人的なんでも混ぜちゃえ感がよく発揮された作品だと思う。よくよく考えたら剣道というアナクロから最先端の兵器の融合、萌え少女という動物的感情露出要素から軍隊という抑圧要素(むしろ戦闘時に抑圧が解放されたりする…というかそれが期待されている)の奇妙な融合*1、キレイに描かれすぎであるがサラリーマン的要素など、よくもまぁ無理なものをこう詰め込むもんかねぇ。別に他の作品だって同じような融合を無理矢理しており、視聴者のほうで合理化してみたい要素だけ見ちゃっているというわけなんですがね。
 というわけで、図らずも自分にとってはいい意味で期待を裏切られた作品でした。実は音楽もわりと好みでした。声優もベテランを揃えていて、そつが無いというか。絵も崩れて気になったということはなかったな。2クール十分に楽しませてもらいました。さすがに一般人にはとても勧められませんが、よく出来た作品だと思います。スタッフの皆様方おつかれさまでしたということで、おもろ+。

*1:まぁ軍オタの美少女性向は昔から言われていたことなんですが。