王ラン#20

 父王が弟王の姿のまま出てきて、不死身の人を無力化する話。臣下を一気に助けるとか、単純な力の行使で敵を圧倒するなど、一般的な王の器とかを彷彿させるんだけど、やっぱり庶民の入り込む隙はなく上級国民だけのお話になってるのはまぁ。
 今回ちょっとおもろかったのはやはり三途の川のシーン。鏡の人が母親の言葉で煩悶してたというか、言葉に重みを感じていたようなのだが、なるほど他人のために犠牲になるという共通体験をしていてしかも自分を愛してくれたからこそ言葉が響くのであって、他の誰もが彼女に何を言ってもそれが響く筈がないというのが表現できてたこと。
 まぁやっぱりというかなんというか、構成は上手いし人間を描けてはいるんだけど、どこかストーリーにわざと瑕疵を加えてるというか、いたずらを仕込んでそうというか、まぁそれも構成の一つで、作品が終わってみたら総合的に良く組み合わされていた…という可能性も大いにアリそうなんだが…。

失格紋#9

 前回登場したつよつよ魔族の居場所を探るために、一旦学園に戻ってそれからまた旅立つ話。途中で試験に合格するために味方として現れるつよつよ冒険者と戦うんだけど、この顛末を見るとやっぱりこの作品のテーマは相変わらず教育なんだと思った。スポーツの世界でも、とりあえず走り込みをしたり、ダンベルなんかを振り回して筋トレすればそれなりに筋力もつくし、反復によって技術も身につくんだけど、筋肉の使い方を意識すると効率的に筋力もアップするし、技術も効率的に身につけやすくなるわけで、それが無意識に魔力を使っていた→…に表現されてるのだと思う。
 まぁそうやってこの作品のテーマがわかれば、そりゃ主人公は(人間側の)すべての師匠なわけであって、彼が俺TUEEEなのも、そりゃ他者に対する見本として、うっかり窮地に陥って見苦しい姿を物語的に晒すわけにはいかんのでしょと得心もするので、そんなにストレス要因にならなくなったというか。まぁそれでこの物語が面白くなったか?と言われると、そのへんはまぁというしかないんだけどね。単純な俺TUEEEの繰り返しなんだとこの作品を認識するより、よっぽど見る価値は上がったなとは思うワケで。

終末のハーレム#9

 男の存在が本部?にバレ、何らかの対応をされてしまう話。弱キャラが欲に溺れ、中キャラは相変わらず謎を追いかけて、強キャラは今回出番なし。なんつーか、この作品の構造が前回まででなんとなくわかってきたようなので、視聴意欲は高まったし、今回も見るべきところはあったんだけど、正直書くべき感想が見当たらない。よっぽど驚くような展開があってこればかりはメモしとかなくちゃってことがあれば話は別だけど、これ以降、感想は無しの方向で。

着せ恋#9

 女子高生ょぅι゛ょの妹担当回。あー、主人公タラしジャン。妹ちゃんの本当の望みを見抜いてその願いのお手伝いを申し出る、これがコミュ充じゃなくてなんなの?って感じ。本人がオドオドしていて対人経験値が低い段階だから本人が勘違いしてるけど、本来のコミュ充とは彼のような人物を言う…としか。これ、今までのヒロインたちと比較すると一番主人公に転ぶ要素が大きいのだけども、そのへんはバランスなのかあくまで主人公を巡って争うその一番手はやはりメインヒロインで、その次にもしかすると女子高生ょぅι゛ょという順に今のところはなっている。かといってコスプレトリビアが終われば争奪戦に参加するかと言われるとそれもなんか違うんだろうなと思ってしまったり。
 不謹慎な話だが、この妹ちゃん、エロ漫画だと無知なのをいいことに竿役に騙されて変態な体位をあれこれ仕込まれるって感じのキャラだよね。他の二人の性格付けの方向性がはっきりしてるから、エロのジャンルも大抵見たまんまの決まったものか、意表をついてギャップで反対のジャンル程度であんまり広がりがないんだけど、こういうおっとり系だとシナリオ上もいろんな試行錯誤に抵抗しないし、いくらでも下品な展開に合わせやすいというか。
 しかし、コスプレがテーマのアニメだと、もう彼女たちの元ネタがそもそもアニメだし、コスプレ後の仕上がりもアニメ絵だから相性が良いのなんの。あれからちょっとばかしコスプレーヤーの画像を拾ってみてみたんだけど、そもそもアニメキャラの瞳はお目目ぱっちり系だから、実際のコスプレも大きな目にするための努力をこれでもかってぐらいしてて、そのうちの一つに、間の周りの隈取を大きくするもんだから、誰もかれもが水商売の人…みたいな感じになってるので、個人的にはそれが萎え萎えなんだよな…。アニメ絵だとそれが必要ないので、これは実写では表現できない特権なんだろうという感じ。
 あと数話で最終回かハァ~。コスプレ技術も熟成して安定期に入ってるし、このタイミングで出るべくして出てきた作品って感じがするねぇ。作者のその自覚があるのかないのかよくわかんないんだけど、意図してか意図してなくても、この作品が描写してしまってる本質の一つに前も述べた「消費による自己実現」があるし、今回もちゃんとその部分は表現されていて、あーコスプレ業界というのは資本主義の業の深さ*1を最もよく体現してるよなーとは思うんだけども、ではそのコスプレを何が何でも否定しなきゃならないか?っていわれると、それをためらうほどに前向きで甘美な世界に描いてくれちゃってるわけで、これなかなかよーできとるわって感じ。

明日ちゃん#9

 体育祭の買い出しに四人で複合商業施設に遊びwwwに行く話。何を買ったのかといえばミサンガ用のひもぐらいしか印象に残らない感じなんだけど、今回のメインストーリーは文学少女が今までの思い出がいっぱい詰まったしおりをなくしてしまい、それを取り返すあたりのところ。これが二段構成になっていて、最初無くしたしおりを四人で方々探し回るが見つからず、施設を出たところで目立つよう風船に括り付けてくれてる親切な人のお陰で一旦は確保するというのが前段階、ところが風が吹いてうっかり手放しもう取り戻せないかと思いきや、木に引っかかったので四人が協力して再度確保するというもの。
 なんつーか、やめとけばいいのにどうしてもこの展開が気に入らなくて悶々としてた。最初に結論を言うと、あの思い出の詰まったしおりというのは、おそらくかけがえのない時間がいっぱい詰まってるという提示から、この物語で描かれてる諸々のこと、すなわち今となってはもう戻ってこないあの素晴らしい思い出、というよりこの物語すべてだと思うので、そういうものを自分の不注意で手放してしまったら、現状の日本の多くの学校がモンペなどで崩壊してしまっているように、もう取り戻せないんですよ…という筋立てのほうが個人的にはしっくりくる。誰か、歯向かっても太刀打ちできないほどの暴力性を持った何かに奪われるってわけでもなく、あくまで取り返しのつかないことをしたのは自分なんだから、逆に取り返せてしまうのなら、それはいつでも獲得可能な安っぽいモノみたいに感じる。
 風船でしおりが括り付けられていたのも、あれは同じような年齢のものが気遣ってという風には考えにくく、アレだけ配慮ができるのはおそらく大人が…ということだろうし、それは彼女たち少女を温かく見守っている大人がいるという暗喩だろうし、そういうやさしさに包まれていながら油断する…ということなので、視聴者としてはなんともやりきれない感じになる。普通アレだけ小さなしおりが落ちていたとして、それをかなりの思い入れを持った持ち主がいて絶対狂おしいほど困っているだろうからぜひ持ち主のもとに帰ってほしいとまでは思わないもので、あれ、自分がこういう仕打ちにあったらなんとしてでも風船に括り付けて目立つ場所においてくれた張本人を探し出してお礼を言いたいぐらいの気持ちになると思うんだけど、少女たちはそれをほぼスルーしちゃってる。まぁ今回の話の構成でそこまでやるべきか?と言われると、しおりに仮託された記号を考えると、返礼物語にするのは焦点がボケるからこれでいいと思うんだが、二度目はないよなフツーと考えてしまう。
 ただ、そうやって考えてみると、四人が協力して取り戻せたという提示も、これはこれで強烈なメッセージ性があり、たとえ滅茶苦茶にされたものであっても、決して取り返せないと思うようなことであってさえも、みんなが協力すれば元に戻せないものは無い、だから人と人とのつながりを大切にしてお互いが支え合う社会にして行きましょうという風にとらえることもできる。この作品は前にも言った通り、いろんな世代にフックするよう作られているとは思うんで、こういう前時代的な美しさをもった中学時代を多少なりとも送っていて、それがいじめのカジュアル化した、学校に数々の負担が押し付けられた結果パンクしてしまい、もうこんな利害関係を抜きにした友情なんて期待すべくもない状態になっているのをまざまざと見せつけられている大人にとっては「ファンタジーだな」と思うしかないんだけど、それでとどまってしまっては単なるセンチメンタリズムでしかなく、そのどうしようもない状況を改善する動きにはならないんで、たとえお伽噺であっても現役中学生にこれを手本として見せつけておいてみんなの気の持ちようで世の中は如何ようにでも向上させることができるんですよと明るい未来を指し示すものとして視聴してもらう…というほうが前向きっちゃぁ前向きなんで、自分が気に入らないからと、この筋立てが全然ダメとまで言うつもりもない。
 うーん、なんというか、たとえ正しくともポリコレの押し付けは御免被るというか、個人的にはこの作品を啓蒙作品というか教育番組として視聴してるわけではなく、どちらかというと文学よりの作品としてみてるので、そのへん方向性としてはそういう感じなのに、肝心なところで惜しいよな…みたいな。むしろ失ったものが本当にかけがえのないモノであればあるほど、視聴者がこの作品に共感していればそういう展開から受ける悲しみは深く刻み込まれるので、失わせておいた方がよっぽど自分はこういう目に遭わないぞという決意を深くさせると思うのだがどうか。

*1:札びらでアイデンティティを獲得する