グレイプニル#10

 追い詰められた主人公グループが、クレアの機転もあってなんとか逃げ切る話。個人的にほーっと思ったのは、今回の敵グループからの、自分たちが負った犠牲もお前たちも払えというセリフ。これ、江戸期というよりは、もうちょっと前ぐらいの日本の中世的価値観らしくて、ムラとムラの争いや、イエとイエでの争いの結果、直接の下手人を差し出さなくても良いから、失った犠牲と同じ格の犠牲者の首を差し出せってのは結構事例のあったことらしい。前回示された、酋長としての気概もそうだが、これは大体において日本の中世性を体現した組織のあり方なんで、このタイミングでこれを示してきたのはなるほどそういうことかといった感じ。まだ次回もクライマックスの頃合いなのではあるが、今回ほうほうの体で逃げ切ったという状態なので、フツーに考えると次回はクライマックス的展開を積み上げるというよりは、事態の収拾という意味合いが強いはず。
 ただ、やっぱりお行儀が良いと思われるのは、こう相手が犠牲を払えと言ってくるのが等価交換のような気がして、その実あのムカデに似た敵は別に主人公側に仲間に入れという使者の役割を果たそうとして無念の死を遂げたのではなく、相手を圧倒するという功を焦って返り討ちにあっただけの話なんで、別に公平な交渉でもなんでもないんだよな。相手は勢力が圧倒的なのをカサにきてるだけの話であって、もし主人公側に相手と同等の実力があってのことなら、その非を咎めだてすることから始めてよいはず。まぁ文学性を高めるんだったら、そういう理不尽ではあっても圧倒的な力の差に屈しなければならない不条理シナリオにしたってよいのだが、エンタメ作品だし、ただ、そうだといってもバランス的にはよく考えられてるとは思う。望遠鏡くんも、結局契約不履行で退場という流れになったが、そういう仕掛けがなくてもおそらく相手陣営から相手にされなかったはずで、これも割と単純な勧善懲悪シナリオ。ただ、今の時代、暴れん坊将軍も越後のちりめん問屋の隠居も必殺仕事人もいない世界線に入ってしまったので、庶民が鬱屈した気持ちを晴らす勧善懲悪を担う作品が市場から払底してるんだよね。なので、その役割をどこかで担う必要があると考えたのかもしれないが、そういう解釈でもしないと、こういう性と暴力テーマの作品が割とお行儀良いのになかなか説明がつきにくいというか。弱い者同士がいがみ合う構造ってのはそれはそれでなかなかいいとこ行ってるとは思うんだが。

はてな#12

 作画がパワーアップして再登場も、なんと最終回。なんともタイミング悪いというか。最初自分、この作品の原作は漫画だと思っていたんだが実はラノベで、しかも原作者死んでるらしい。迷い猫オーバーランもパパ聞きもアニメは視聴しているが、なるほど原作者同じだと言われるとなんとなく雰囲気が似てるような。
 なんか勝手に第2期があると思っていたので拍子抜けなのだが、物足りなさも感じてるのはやはり原作者の急逝が原因なのかな。ここでぶちっと切れているのも、まぁまだまだ俺たちの戦いはこれからだのようにしか見えないし、本当ならシリーズ化でいろんな怪盗の活躍を見せていくつもりだったんだろう、そのなかで、今までの描写では語られてないテーマとかメッセージが織り込まれていくんだと思うが…。
 個人的にはやはり妹ちゃんの登校拒否のエピソードがピークだった感じ。それ以降の話はちゃんとはてなとかマコトの関係性を深めて改めてテーマ設定がされてからの判断だろうと思うのだが、二人のつながりがこの程度だったら、彼らの合言葉である悲しみを喜びに変えるというのがまだまだ薄っぺらくて、テーマ再設定までの段階にまではなってないと思う。原作を引き継いで続編が刊行中らしいから、そのへんは様子見かな。とはいえ、その続編いつまで続くかどうかわかんないし、そもそもアニメ化されるのかと言われるとちょっと…。実は迷い猫の方はアレはあんな感じで終わるのはヨシなんだけど、パパ聞きはちょっと続編に期待してたので、今となってはそれも企画自体あがらんでしょってなもんで、ならこれも同じようなもんでしょでなんとも。このアニメに関していえば、起承転結の承の部分までで判断しろってのはちょっとしんどい感じ。正直中盤からラストにかけてキャラの行動稚拙だと感じていたのだが、これ、まだまだ主人公たち成長の初期段階のはずで、本来ならこの話の後にもっとしっかり成長させて挫折させて生まれ変わってそれから真の主張がなされると思うんで…といったところ。ただ、情勢が情勢なんで今となってはちょっと古めの萌え系フォーマットが通用するかどうかは疑問ではある。