バカとテストと召喚獣にっ! 第13話

 最后、追っかけのきっかけが苦しかったな。
 でもまぁ明久と雄二を中心に物事が動いているって提示なんだろうけど。うーん、とりあえずシリーズは終了なのかな?。最終回で姫路にもチューシーンを用意し、明久が二人に迫られるシーンを作ってメインヒロインを対等にしたし、この日常はいつまでも続くって〆にしたから、続編が必ず作られるって終わり方では無かったような気がする。なんか苦しいが、いちおうこの作品のテーマの一つである、点数がすべてじゃないってのも提示したし、基本ミッションは終わったといえる。
もし続編が作られるのなら自分が現在読了した第6.5巻の時点では、まだ明久と瑞希の会話でちょっとしか触れられていなかった小学生時分のエピソードが無いのだが、それを入れてくるだろうと思う。それにしても以降あまりキャラの関係性に変化が見込めないから第3期を作るにしてもなんか難しいような気がしないでもない。
 さて、原作第6巻を既読の上で視聴しちゃったワケだが、今までの改変も含めて無難なまとめ方ではあったと思う。実は雄二と明久は学園長からご褒美に腕輪をもらっていて、それが雄二は召喚フィールドを自在に作れる腕輪、明久は召喚獣を2体にできる腕輪なのだ。アニメ版では召喚フィールドを作る腕輪を明久だけがもらっていて、しかも壊してもう無いという風に改変されている。あと、雄二翔子ペアと明久姫路ペアがはぐれるのは、お化け屋敷が迷路のように構成されており、3年生が壁を自由に組み替えてはぐれさせるというのが原作の設定。アニメ版では無理矢理ペアの組み替えをさせられて、雄二明久が翔子瑞希ペアのあとをつけるということになっていたが、原作ではチェックポイントで雄二明久が瑞希の叫びを聞いてスイッチが入るということになっていた。戦いのシーンも原作では腕輪二本が健在で、それを駆使して点数に劣る明久(雄二は明久一人に戦いを任せるという態度を取る)が機動性を使って先輩を撃破するというものになっており、まさに勝負が点数だけで決定されるという構図にはして*1なかった。まぁだからといって原作が良いか?と言われゝば、複雑だな。アニメ版で腕輪を退場させたのは複雑性を忌避したという点で正解だと思うし、実は原作で明久が自分の召喚獣2体を操って*2先輩の2体と戦うシーンは読みとばし気味だった。尺の関係もあって、アニメではまとめることを優先させていたので、こんなもんだろうなとは思った。
 さて、そろそろ総評に入るわけなんだが、なんか難しいな。まぁ確かにメッセージ性はあるといえばあるのだが、ボやかしているのかどうかわかんないんだが、あることは自覚させてもちょっと意識させるというほどのもんでもないかなと思わなくも無い。自分が思い立ったのは、持たざるものが他人のために全力を尽くしていくって構図は、これチャップリンの映画と似てるんじゃね?と思ったことだ。まぁそんなにチャップリンの映画を見てるわけでもないんだけど、大体浮浪者のチャップリンが困っている女の人のために一生懸命頑張って、いろいろドジを踏んで観客を笑わかすんだけど、なんとか助けることができて、彼は最后立ち去っていくってパターンね。
 チャップリンの造形って、大体浮浪者のクセに背広だけじゃなくって帽子やステッキまで持っていて、あぁ紳士を気取っているのねと思うんだけど、映画の中での行動を見ると、たぶん別に勘違いしているというよりは人に浮浪者と見られたくないがためのエチケットという要素が強いと思わざるを得ない。まぁもちろんプライドが無いとも言わんわな。バカテスの明久、もしくは特に雄二あたりの虚勢はそれに該当すると思うんだよ。チャップリンの滑稽な動作は、もちろん当時の資本主義勃興中の合衆国の悲惨な環境下での貧困労働者のメタファーになっていて、観客はチャップリンの失敗を笑いながらも、多分「あぁ、コイツは俺たちそのものだ」と思わせるに十分で、だからこそ彼の行動が最后に実を結ぶ*3ということが労働者階級の圧倒的な支持を得て「映画を見ると確かに笑えるんだけど、共感して泣けもする」喜劇王となったと思うんだが、もちろん本作の主人公もそういうバカな一般人のメタファーに合致していると見てよいだろう。まぁ雄二明久は魅力的な女の子に想われるという報いを得てはいるのだが。
 しかし、彼らが報われることについては、例えば落ちぶれてはいても貴種が支持基盤の協力を得てなにか達成していろいろ獲得するのに比べたらあまり嫉妬感はないな。なんか今の日本って一流大学を出てたって、全体のために何かがんばるって人はとても少なくて、結局やることってのは政官財界に入って自分だけが美味しい汁をすゝるのが多いワケだ。昨日触れた「正義の喪失」にしたって、天皇を中心とする国体の再生とか言ってたけど、じゃぁその天皇もしくは選良とやらがその頭脳だの権力だのを上手く使ってくれるってことはもうありえないのだ。社会運動家という肩書きで東工大を出た総理大臣ってのは結局のところ世襲政治屋でしかなくて、国民をだまくらかして総理大臣の椅子にしがみついていたし、大企業の政治結社に所属して総理大臣になったのもいるが、結局のところ総理大臣になることだけが目的で大企業には減税、庶民には増税なんて言ってるわけだろ。庶民が学歴や家柄を信じて政治を任せてみたけど、結局やってることは共同体を破壊し私腹を肥やすことばかり。でもヤツらは小さい時から教育にカネをかける環境におり、テストの点数ばかりはよい。でもそれで本当に仕事が出来るかっていうと、反社会的行動にばかりその知識を使うワケだ。やっぱ点数ばかりが人間の価値ではないと思うわな。で、もう我々としては「持てるもの」に期待するという選択肢は捨てるべきだと思うんだよ。そうじゃなくて、明久や雄二のように我々の大切な何かを守りぬくために努力する、そういう人間を我々の中で育成して、そいつらを中心にみんながまとまるべきだというのが、最終回の追っかけのシーンの意味するところなんじゃないかと思うのである。
 途中から原作との比較をしてしまったのだが、アニメを視聴するだけとはまた違った視点も得られてそれはそれで面白かったように思う。もちろんアニメの勢いも捨てがたく、途中までアニメの出来なかなかいゝじゃないかと思っていたのだが、いや、なかなか原作も良い味を出している。ホント惜しいのは、例えば雄二と翔子の過去話なんてのは、雄二が翔子を助けるために飛び出したときの台詞があって、

 「オレ……勉強が得意だから、ずっと、自分が大人にも負けない凄いヤツだって、そう思ってた……」
 「……ゆう−じ……」
 「でも、全然そんなことなかった……。いくら数式が解けても、外人の言葉がわかっても、こんな酷いことをする奴らに殴られるのが怖いんだ……!」

 この台詞のあと、翔子は飛び出し、雄二は上級生と取っ組み合いに入るのだが、この台詞がアニメでは省略されているんだけど、これがあるとないとでは全然深みが違う。とゆーか、これこそが大人子供関係なく伝えるべきメッセージなんじゃないのか?。なんでこれを省略したのか、もしかするとDVDでは収録されるってことなのかもしれないが、なんかもったいないんだよな。例えば、いくら殴られていても、より勉強して見返してやるってストーリーにしちゃってもいゝわけだろ。でもそうじゃない。原作者はこゝで雄二に勉強を極めるという選択肢を捨てさせて、彼が強くなるために何を選択したのか?ってのを考えさせているわけだろ。最終回の常夏コンビとの試召戦にしたって、原作ではあくまで相手の点が上なのに、明久に真剣勝負をさせて乗り越えるって流れにしているのに、アニメ版では数学に切り替えた時にはおそらく明久雄二の点が常夏コンビを上回っているようになっているハズ。まぁもちろん試召戦ってのがどうしても点を基盤としている以上仕方の無い部分ではあり、戦争というのはいかに相手より有利な状況に持ち込むか?ってのが本筋ではある。が、原作は明久が2倍以上の点数を持つ先輩を打ち負かすという形になっており、まさに勝負は点だけじゃないという構図になっているのに、アニメでは上回った点数で先輩をねじ伏せるという構図になっている。もちろんアニメでは数学のフィールド内での明久雄二の点が伏せられており、もしかすると下回っているのかもしれない。そして、雄二明久ペアの点が下回っていたら、彼らが勝つための納得のいく戦闘シーンにしなきゃならないわけで、そういう余裕は無い。だから、別にアニメ版の出来が悪いというつもりも無いんだけど、やはりなんかもったいないんだよな。
 というわけで、やはり原作はアニメ版を視聴したあとに読めばよかったなと個人的に後悔してしまった。どうせアニメなんてのは原作の販促であるという要素が強く、あとで原作を読んで「あぁ、なるほどアニメ版では省略してたけど原作ではこうなっていたのか」とより深みを知るという方向で楽しめるワケだ。原作を先に読んじゃうと、こういった根幹の部分で薄められてしまっているとがっかりすることになる。いやはやなんとも難しいねぇ。
 というわけで、おもろ+ということで。まぁ戯れって要素は大きいんだけど、一通り視聴してみると、それなりに筋の通っているところは全般的に感じられるし、上記のようにチャップリンを想起させられちゃぁねぇ、あんまり低い評価はつけられないよ。風呂場覗きにかなり時間を割くところなど減点要素はあるんだけど、なんのかんの言って実際にこの第2期を見初めて原作も買わされちゃったしな。OPも歌詞は意味不明ながらお気に入りだったし、迷うこともない。

*1:勝負は世界史でなされ、常村144夏川135に対し、明久123という絶妙なバランス

*2:一人がマルチタスクをするのは厳しいと原作でも述べられていたが、そういや明久はゲーム好きという設定になっており、なるほどそれがちょっとした説得性を持っているのかと感心したが。

*3:しかも報われること無く黙って立ち去っていく。それが有名な後ろ姿というトレードマークになってたり。