魔法使いの嫁 第17話

 言霊信仰とか日本人向けのエピソードって感じだな。
 あんまり聞かないのだがもしかしてとWikiで言霊信仰のペーヂを読んでみたが、海外に言霊信仰があるという例は極少数だった。漢字を中国から輸入するまで、日本は記録するということが口伝以外になかったので、話し言葉に重きを置くってのはわかるんだけどね。だからといってブリタニアガリア・ゲルマニアは蛮族扱いであって、その地域の庶民が文字を日常使っていたかどうかは疑問ではある。文字はあったとしても宗教行事に使われるという印象で、各地域はローマ帝国支配下になると途端にローマ文字やギリシャ文字が席巻するので、アレなのだが、まぁ自分も不勉強なので民族固有の伝説が口伝だったのか、固有の文字で記録されてきたのかはわかんない。が、個人的な印象だと日本ほど言葉に力があるというイメーヂはあまりない。大体にして魔法の発現時は曼荼羅というか古代文字を配した文様が現れるってのをたくさん見てるからね。魔法の詠唱は確かに言葉ではあるんだけど。あれは契約の儀式なので、契約対象の力を引き出すためであって言葉そのものに力はないという印象。なので今回の話は違和感のほうが強かった。
 とはいえ、どう考えてもそこは主眼ではなく、代償ってのがメインテーマだろうから、話し言葉で発せられたにせよ、書き言葉で発せられたにせよ、それが個人から発せられ、その願いが叶った以上、そこには契約が成立したと看做されるべきで、その契約を反故にするからには何らかの代償が必要って解釈するのが自然だろう。ならばあの姉がまた戻ってきてお菓子だろうと働くのだろうとチセに代償を払うところまでが一セットなのであり、おそらく再登場するのではないかと思われる。正直返しに来るだけだったら別にそんなエピソードは要らないぐらいには思うのだが、それ自体が別の物語の起点になっていることも考えられるので、そのへんはあまり詮索してもしょうがないところではある。まぁ今回は兄弟間の家族論が薄っぺらいのがしんどいところ。チセとエリアスで散々語られている*1だろうところを本当の家族関係で焼き直しされてもというのがね。契約から始まった友達関係という提示なので、前回のアリスとチセの関係より深いとも思われないし、正直チセの人間関係が多様化した程度の意味ぐらいなんだろうと思ってしまった。

*1:本当の家族であれば自明であるはずのことをエリアスは理屈で必死に理解しようとし、チセは欠落したそれを心の隙間を埋められて無批判に受け入れようとするそのぎこちなさまで描写しているのに…